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零戦のない世界 にも。 20/5/10(日) 18:55

Re:零戦のない世界 金星ファン 20/5/16(土) 19:31

Re:零戦のない世界
 金星ファン  - 20/5/16(土) 19:31 -
  
仰るような二ライン目の艦戦は零戦に金星装備で容易に得られるので、別々の機体を開発する意義はないと思います。
金星装備機と瑞星/栄装備機で寸度が大きく変わるというような堀越技師の言説こそまず疑うべきもの。
十二試艦戦の設計は瑞星で始めるしかなくても、その後の換装された栄は金星四六型と同時期の登場ですから、時期的にも常に栄と金星の二本立ては零戦で可能でした。

栄と金星の重量差はほとんどありません。
栄一二型と金星四六型は30kgしか違わない。栄二一型と金星五一型ならば70kg、
栄三一型はなんと金星六二型と同じ。
出力で同級の金星五〇型より当然重く、さらに水も必要なので燃費の利点も打ち消し、トータルで重量が嵩む。しかも金星五〇型より遥かに劣後する出力しか、実際には出なかった。
栄三一型を搭載した事実を差し置いて、特に金星五〇型の燃費や重量を問題視することの無理がわかるでしょう。
海軍の本音はそこではないのです。

燃費はどうか?
燃費の悪化を考えても例えば一号零戦に金星四六型装備でも燃料タンクを増量しなくても十二試艦戦の計画要求書の水準は満たせます。
栄三一型と金星五〇型では、水を搭載する必要の有無から、同じ全備重量ならば航続距離が大きく変わりようもない。
史実では零戦は燃料と水合わせて機内720L(零戦六四型の燃料650Lと水70L)まで増やせたわけですが、金星五〇型ならば全部燃料でいい。
発動機と姿格好の似た彗星三三型とと同じく巡航200ノット、燃費135L毎時ならばほぼ零戦二二型に劣らない距離になります。
十四試局戦を一休みして二号零戦を本格的に設計してれば、この程度はできたでしょう。
ただ、行動半径を500浬欲しければ、金星零戦向けには、増槽は450Lくらいのものを新規開発する必要があります。

直径が増えることはどうか?
外翼部に7.7ミリを移設する必要はありますが、零戦六四型での実例を見るまでもなく換装自体は全然難しくない。その程度の差です。

逆にその程度の手間をかけることすら嫌われるほど、海軍は艦上戦闘機という機種を軽視していたのでした。
基地航空隊に比べて軽んじられていた。
また、基地航空隊の主力もどんなに早くても昭和18年末までは零戦しか有り得ない、という当たり前の判断力を奪うほど、艦上機というのは陸上機より劣るという観念は強かった。
これは第二次上海事変の戦訓として残された<敵の陸戦が我が陸攻を撃墜してるのに我が艦戦が敵の爆撃機に苦戦したから艦戦は遅い、陸上戦闘機が必要>という古い話が、お偉い軍令部の出したペーパーであったせいか零戦の登場後も終戦まで(そして海軍贔屓のミリオタにも)生き残ったものでしょう。
役所の中央でしか通用しない過去の文書の文言が現実より重視される日本にありがちな現象です。
ともあれ海軍戦闘機隊の苦戦の原因は全てそこにあります。
金星装備をしないということは、栄の生産数の分しか戦闘機の数が揃わないということですから、数で容易に圧倒されてしまったのでした。

実際に金星装備の艦戦が現れず、栄との二本立てにならなかった理由は大きく二つ

まずは陸攻主義。陸攻主体で航空撃滅戦や艦隊決戦ができるという幻想でした。
十二試艦戦の瑞星からの換装は、金星の配当を九六陸攻二二型や九六陸攻二三型に振り向ける観点から議論もされなかったのでしょう。
二つめは十四試局戦への期待。十四試局戦の開発が始まると、三菱の設計能力や生産力を艦戦に回すのが嫌われた。

所謂金星が爆撃機向けというのも、発動機の機械的特性が爆撃機向けというより海軍が陸攻を可愛がって金星を回したがったというのが実態でしょう。
後の世に語られる屁理屈的な技術的要因でなく、全てお役所的なミームなのです。

支那事変以来の戦訓を無視した陸攻優先の生産計画と、艦上戦闘機という陸上戦闘機に対して弱そうな名前から観念的にもはや初飛行の時点から望みの薄い十四試局戦を追い求めた海軍のメンタル的な問題が全てでした。
合理的な事実からの演繹よりも部内の過去の文書の文言が一人歩きするのは役所ではよくあることです。海軍の航空行政は実際に亡国を招いた極端な例として歴史に残りました。
彼らは終戦間際になってようやく戦闘機第一主義に移行するべきだったと悔やんだ。
ともあれ、未だに陸攻主義から抜け出せない後世のマニアが彼らを批判できた筋合いでもありません。
いかにも、金星六二型以前の金星では換装の意味がないなどという、栄と金星の二者択一を前提としたマニアの捻くれた見解は、海軍の亡霊、陸攻主義が乗り移ってなければ出てきません。栄に加えて金星で零戦の数を用意しても良いのではないかという航空戦の実相に基づいた議論が、半世紀以上経った後知恵なのにできてないのですから。
引用なし
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