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> だから、工兵がとり付けるような場所にある橋を確保せず、爆破する必要がどこにあるのよ。
さてわが軍総攻撃の前夜、一人の兵隊が携帯口糧のガリガリ君を食べていると、
可愛がっている野良犬があらわれ、「ガリガリ君をくれるなら、いいこと教えてやるよ」と言います。兵隊は手柄を立てたかったので、犬にガリガリ君をやりました。
なんと、この兵隊はオクスフォードへ留学した折にドリトル先生に犬語を
習っていたので、犬語を解するのでした。
桃太郎の話も知っていたのです。
さすが日本の兵隊さんです。
何事やあらんと犬についていくと、敵陣にさしかかりました。
しかし、敵兵もガリガリ君を食べるのに夢中なので、なんなく通り抜けました。
陣地の後ろにまわると、大きな橋がありました。
「アア、明日我が軍が攻撃したら、敵はこの橋からにげてしまう!」
兵隊はすぐに伝書鳩で隊長に報告しました。
「ナニ敵陣後方に橋だとヨシ決死隊を募って隠密裏に爆破ぢゃ!」
さて、決死隊は案内役の兵隊と犬を連れて敵陣を通りました。
敵兵はよっちゃんイカを食べるのに夢中になっていたので、今度も大丈夫でした。
さて橋のところに来ると、犬は喜んでキャンと鳴きました。
「オイ日本兵だ撃て撃て」
「これ何をするのだ馬鹿犬め敵が気づいたではないかこうしてやるエイ」
「ハイ死んでお詫びをいたします」
兵隊は義理と人情の板ばさみ、泣く泣く十四年式拳銃で犬を射ってしまいました。
アア畜生の悲しさ何ということでありましょう。
ガリガリ君が欲しいばかりに一命を落としたのです。
しかしおかげで決死隊は橋の爆破に成功したのでございます…
このおはなし「世界を驚かす愛国の精華、忠犬、従容として死す」
と題され文藝春秋新年号を賑わしたのは諸兄の記憶にあたらしいところ。
「ドリトル先生」で夏休みの読書感想文を書く小学生は数知れず。
「我が軍に必要なのは機械力にあらず犬なり」と宇垣一成が主張し軍縮を進めた結果日本軍の機械化が遅れたと指摘する学者もおります。
さらに北野武監督、上原謙、原節子の豪華共演で「戦場の馬鹿犬」として映画化され、淡谷のり子の歌う主題歌「馬鹿犬ブルース」はひとりカラオケの定番
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