|
如風さん
それでは、いちばん最初から説明します。
warbirdsの常連さんも絶対に知らないと思います。
如風さんも知らないのだから。
ヘルムホルツは、粘性の無い理想流体で翼に揚力が生じることを説明しました。
ヘルムホルツの定理で扱われる渦は生成も消滅もしません。
どこかで、新しくできたり、いつの間にか消えたりしません。
はじめから存在していて、ずーっと存在して、永遠に消えることがない。
渦の強さも変わらない。
飛行機は地上、機上の観測者に対して、初めから飛んでいて、永遠に飛び続ける。
時間も止まったままです。
完全に静的なモデルです。
離着陸も運動性も安定性も論じることができない。
ヘルムホルツは数学的にきれいにまとめられるモデルにしたんです。
だから、実際の翼に適用するには、空気の粘性を考えて、
かなり修正しなければならない。
空気の動粘性係数ν(粘性係数を密度で除したもの)は、
日本機械学会編「流体の熱物性値集」を眺めると、ISO条件で1.4×10**-5mm2/s
程度で、大したことないように見える。
しかし、これは分子粘性と呼ばれるもので、飛行機の飛ぶようなレイノルズ数では、「乱流動粘性係数」というのが加わって、数百倍から千倍以上になる。
翼や気体に働く剪断応力τは、流速Uの場合、
τ=ν∂U/∂x
だから粘性による摩擦抵抗は非常に大きくて、飛行機に働く全抵抗の、
実に60%近くで、理想流体の流れとはずいぶん違う。
「ダランベールのパラドックス」を思い起こされたい。
翼まわりの流れの説明は、異ならねばならぬ。
ヘルムホルツの世界とは、かなり違ってきます。
次に、渦について説明します。
|
|
|