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58 空中戦において 相手がより低空にいると有利とあるのは何故ですか?

  1. 物理学的にいうと相手より位置エネルギ−が高いから。相手と同じ高度までダイブすれば失われた位置エネルギ−は運動エネルギ−に代わり速度的に有利となる。という所でしょうか。


  2. 上昇するのはタイヘンだけど降下するのは簡単だから、高度がある方が攻撃しやすいってこと。


  3. 単純に言って,5Gで旋回すると水平飛行中の5倍の抗力が発生します。レシプロ戦闘機は推力が小さいため,急旋回すると急激に速度が落ちます。このとき高度を下げると,失った位置エネルギー分だけ速度(運動エネルギー)が回復します。機動を続けると,速度(運動エネルギー)・高度(位置エネルギー)が失われていき,失速速度・高度0になった時点で機動は不可能になります。したがって空中戦(格闘戦)を有利に戦うには旋回半径が小さいだけでは不十分で,機動によるエネルギー減少を少なくする必要があります。(続く↑)


  4. (↑続き)この運動・位置エネルギーの得失という観点で空中戦を考えたのが「エネルギー機動性」という概念です。エネルギーはエンジン推力により与えられ,空気抵抗により失われます。したがって強力なエンジンを持ち,軽量で機動時の抵抗が小さい機体にすることが重要です。この理論に基づいて設計されたのがF-15,16といった新世代のジェット戦闘機で,自重を上回る強力な推力,軽量な機体,大きな主翼などを持ち,5G旋回中でも加速や上昇が可能で,高い空戦能力を持ちます。(↑続く)


  5. (↑続き2)話を戻すと,第2次大戦中(というよりベトナム戦争あたりまで)空中戦をすれば機体のエネルギーは必ず減少するので【相手より高度が高い・位置エネルギーを余分に持つ】という条件は非常に有利だったわけです。しかしF-15辺りになると平気で急旋回を続けられ,むしろパイロットの体力が持たなくなっています(この点で日本人は欧米人より不利らしいです)。ましてF-22やSu-35といった最新型になるとエネルギー機動性が非常に高く,高度のメリットはあまり無いかも知れません。


  6. ちなみにちばてつや氏の「紫電改のタカ」という漫画では,主人公が「空中戦では相手より1mでも高い方が有利だと言うが,俺はそうは思わん」と言ってますが,その根拠は示されずじまいでした。


  7. (訂正)5G旋回中の抵抗増加は,5倍以上でした。抵抗には揚力発生の結果生じる「誘導抵抗」と,普通の「有害抵抗」があります。誘導抵抗の大きさは発生する揚力の2乗に比例するので,5Gで旋回すれば誘導抵抗は25倍。有害抵抗はそこまで増えないので,5G旋回時の全抵抗は水平飛行中の10倍前後だと思います。



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