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747 戦時中、駄作機が比較的多かったことで有名なカーチス社ですが、なぜあそこまで凋落してしまったのでしょうか?技術者があっちこっちに引き抜かれてしまったりでもしたのでしょうか?それともなにかアヤしげな理論に取り付かれたのでしょうか?
P-kun

  1. 手を広げすぎた、と言う事でしょう。特に、社の命運を、
    「怪しい企画仕様」に頼ってしまい。保険を用意してなかった
    というのは問題有りと思います。

    ・P-60
    二次大戦中にわざわざ「高高度戦闘機」と銘打ってフレームを新造したものに
    成功作は無いんですが、本機もこの部類に入ります。

    ・SB2C
    SBDの次期艦爆として試作命令が下された機体です。この要求の中の
    一項目がすごかった。「空母のエレベーター面積の中に『2』機収まる事」
    確かに、それが可能だと、格納庫を広く使え、空母搭載航空戦力を増やす
    事につながりますが。その代償が短胴の安定性不良となって現れた訳です。

    ライバルは弱小の生産力に不足気味なブリュースター。こっちの方が
    安定していた機体では有ったようですが、エレベーターに2機収まらない上、
    F2Aの生産を滞らせた前科のせいか、あっけなくヘルダイバーに軍配が上がります。
    その後のカーチスの悪戦苦闘の末、前線運用がぎりぎり可能なまでに
    手直しを終えた時には、太平洋の戦局はほとんど見えていましたし、もともと
    軽量級のSBDも改良型によってSB2Cとほとんど変わらぬ爆弾搭載量を持って
    いました。それでも配備されたSB2Cは、搭乗員たちに”Son of a Bitch 2nd Class”
    と忌み嫌われたそうです。後半就役の機体でありながら、朝鮮戦争にも
    出ていませんよね。

    ・レシプロジェット混成艦上戦闘機(型式忘れた)
    高速を狙えるが非力で燃料消費量が多いジェットエンジンと、パワーは有って
    燃費はいいが低速向きのレシプロエンジンとの組合せで、無理矢理ジェット艦戦
    を作ろうとした試みだが、これはライアンファイアボールに敗れています。

    SADA

  2.  これから暴論展開します。大した裏付けはありませんのでツッコミよろしく(ぉぃ
     カーチスの経営方針は「現物流用主義」「最小改造主義」「安請け合い」の3本柱では無いかと思っています。
     1924年のP-1から続く首だけすげ替えシリーズで慣れてしまい、凡作P36の焼き直しで延々と引っ張ってしまった結果、新作を作る能力を失ってしまったのではないか。
     平時なら要求性能も低く、焼き直しは開発費や生産ラインの面で利点があると思うのです。
     ですが、戦争に突入し要求性能が上がり、また、凡作P36の焼き直しP40の改修要求頻発、P40の後継機を多数作るも最小改造主義でお茶を濁して全敗。
     これらの開発に要したマンパワーは相当なものでしょう。
     焼き直しで人的資源を消耗した結果、新作P55、P62、SBC、SO3C等の惨敗へとつながったのではないか。そう思えるのです。

     以上。お勉強時間2日の暴論展開終了。(どっちのP40ネタ起案者、設問者某ことTOWでした)
    tow

  3. 私も基本的に tow さんに合意。カーチスの飛行機のデザインから感じるのは何とも得体の知れない堅苦しさです。ノースアメリカンのようにのびのびした線でもなく、グラマンのように堅実な線でもない…。もう一つ感じるのは、飛行機のデザインに対するとても真摯とは言えない姿勢…端的に言えば「やる気のなさ」。特に YP-37, SB2C, SO3C の醜悪なデザインには「この機械に乗り命を賭けて戦う人間がいることを考えて作ったのか?!」と言いたくなります。
    散々エンジンをいじくり倒した P-60 も平面形はみんな同じ(ロシア機みたいに妙に尖ったテーパー翼)。試作高々度戦闘機 XP-62 の平面形はこれを単純に拡大しただけで、R-3350 と二重反転ペラのパワーに期待しただけの飛行機。さらに計画だけの双発重戦闘機 XP-71 は R-4360(3000hp) 二基+推進式二重反転ペラのパワーに期待しただけの機体。日本機のように非力なパワーをひたすら空力で補うデザインもある意味情けないですが、パワーだけに期待して空力をおざなりにして良い飛行機ができたら設計者なんて楽な稼業です。
    飛行機のデザインは理詰めでなければいけません。空力的に決して洗練されていない F4F や F6F には「パイロットの事を何よりも大事に考えている」という思想が読み取れ、自己続出機の F4U や B26 にも「安全性を犠牲にしてでも空力洗練して性能を上げよう」という思想が感じられます。
    しかしカーチスの機体にはどちらも感じられません。ただ何となく作った、それだけの飛行機にしか見えないのです。私が思うにあまりに「名門」すぎたカーチスには複葉機時代の「設計の神様」みたいな連中が頑張っていて、若い技術者が新しい理論を取り入れて新鮮な設計を行える雰囲気が無くなっていたのではないでしょうか。
    ささき

  4. 「カーチス悪あがきシリーズ」はあまり知られていないので一部だけ紹介。以前「部分写真クイズ」に出した回答です。
    http://www.platon.co.jp/~vought/data/us/htm/YP-37.htm
    http://www.platon.co.jp/~vought/data/us/htm/XP-46.htm
    ささき

  5.  あまりあと知恵でカーチスを叩いてばかりなのも卑怯なので補足…XP-46 のスタイリングは垢抜けないけど、がんばろうとしている気はわかります。XP-53 の主翼は飛燕に似た高アスペクト非のテーパー翼で、絞り込んだ胴体を合わせて良さそうな気はします(尾翼の形状は P-40 譲りのダサダサだけど)。ソ連機の Yak-9 や La-5 が高性能機だったんだから、スタイリングの似た XP-60 系だって頑張れば何とかなったかも知れません。
     つまり前作の失敗の原因をロクに解析もせず(安請け合い)に層流翼だとかマーリンだとか二重反転ペラだとかその場限りの泥縄ばかり継ぎ足していった結果(最小改造主義)が YP-60E の「高性能機の筈なんだけどどっかネジが抜けた」スタイリングになってしまった、のではないかと。また、コロコロと要求仕様を変え続けて泥縄で苦しむカーチスに追い討ちをかけた米軍にも責任があるようです。どこかの国にもありましたね…「戦闘機の老舗」ゆえにエンジン選定やら翼面荷重にまで口出しされて貴重な開発力と時間を空費してしまった会社が…。
     「マンネリ」「垢抜けない」といえば P-35 のセバスキー(のちリパブリック)もダルマみたいなスタイリングの似たような戦闘機ばかり作っています。少なくとも XP-47A の初期案は XP-46 にも劣りそうなダサい液冷戦闘機…それが何故急に P-47D という名作に化けたのでしょうね?「名門」ではないリパブリックには軍からの横槍が少なく、思い切った設計ができたのかも知れません。

    ささき(堕作機大好き)


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