QQCCMMVVGGTT
773 WWII航空エンジンの「公称出力」と「ミリタリーパワー」と「戦闘出力」の違いは何でしょうか?あと,日本のエンジンのカタログデータに「緊急出力」が無いのはなぜ?
フッフール

  1. 回答が無い・・・
    性能を論じるうえで、重要な事だとおむむのですが。
    さくらちゃん

  2. これは難しいですよ・・・。
    まず、とりあえずは訂正から(笑)。日本で使っていた用語は「離昇出力」「公称出力」「常用出力」の3つです。「公称出力」ってのは、たとえば過給器が2速なら、「1速で最大馬力がでるのは高度何mで何回転のとき、2速は・・・」という書き方をします。「離昇出力」は主に最もパワーの欲しい離陸時に使うもので、高度0mでの出力だと考えていいと思います。「常用出力」ってのは巡航時に使う出力です。
    で、どう違うかというと・・・う〜ん・・・(>^<)・・・一部推定ですが・・・
    「離昇出力」は通常は使用しない「無理してる」出力のことで、短時間しか使えません。「公称出力」ってのはいわばカタログ値みたいなもんで「離昇出力」よりはましですが、これは戦闘時以外には使っちゃいけない出力でしょう。「常用出力」ってのは巡航時の出力ですから、これはずっと使え、取説にはだいたい4段階の「常用出力」が書いてあります。
    んで「緊急出力」ってのは「無茶してる」出力ですから、だいたい5分ぐらいしか許されていません。アメリカでは日本みたいに定常的に水(+エタノール)噴射をしていたわけでなく、「緊急出力」時にのみしていたのがほとんどですから、エンジンの耐久性とともに、水タンクの容量的にも5分程度が限界だったようです。
    まあ、「離昇」と「公称」にはいまいち確信ががないですけど、だいたいこんなところだと思います。
    胃袋3分の1

  3. さくらさん初めまして。胃袋さん有り難うございます。
    また飛燕ネタ(笑)なのですが,飛燕一型のスロットルレバーは,全閉から前へ58度押すと公称出力,そこから3度の遊びを経て28度押せば離昇出力になるそうです。一式戦二型や五式戦ではインパネの左下の方に,緊急出力レバーが付いていますが(疾風や鍾馗や紫電はどうだったのでしょう?),87オクタンガソリンでまともに作動したかどうかは疑問です。「ああ飛燕戦闘隊」という戦記に,主人公(著者,68戦隊所属)の小山氏が一型甲の「超過ブースト」を使ってP38を追うシーンがありました。これってもしかして離昇出力の事かも?


    フッフール

  4. 後期の火星や金星は,「エンジンが回っている時は常にメタノールを噴射する」仕組みになっていたのですか?
    フッフール

  5. ↑水噴射の効果は許容ブーストを上げることにあり、(普通は)燃焼熱量を増やすものではありません。
    「みつびし航空エンジン史」(アテネ出版)によると、やはり高ブースト時での
    噴射であるようです。
    胃袋さんの記述は、「米軍と日本では水噴射を使う頻度が違った」と言う意味では無いかと思います。
    たかつかさ

  6. 現在米軍作成による疾風の操縦マニュアルを翻訳していますが、ブースト圧力 125mm あたりから自動的にメタノール噴射が行われていたようです。緊急出力は 2900rpm/+400mm(1分)、ミリタリーパワーは 2900rpm/+250mm(30分)、通常運転は 2600rpm/+100mm、巡航 1800〜2000rpm/-100〜-200mm となっています。ブースト圧には制限装置が付いていたようで、緊急出力を使うときにはブースト・オーバーライド・ギヤ(戦記などに出てくる「オーバーブースト」)を押し込んで制限装置を解除していたようです。
    ささき

  7. なお注意事項として「+125mm 以上のブースト運転で噴射が行われなければ筒温が過昇する。メタノールが切れた状態で運転を続けると焼き付きを起こすので注意を払うこと」とあります。
    ささき

  8. 皆さん有り難うございます。
    たかつかささん>ということは,もしメタノールが切れたとしても,高オクタン燃料さえ有れば,メタノール噴射時と同等の高ブースト圧運転が出来るのでしょうか?

    ささきさん>疾風にも緊急出力があったんですね!良かったぁ(笑)
    アメリカでは資料がたくさん有りそうなのでいいなぁ,と思います(^^)。

    最近思うのですが,日本機の飛行性能の米軍測定値は,軽荷重の状態では無く,ちゃんと全備重量に近い状態で測ったのではないか,と思っています。
    疾風の689キロ/時は重量3600キログラムの状態で出た速度らしいです。
    その他にも,紫電11型670キロ,雷電671キロ,飛燕2型685キロ,5式戦680キロ,となっていますが,これらは全て緊急出力を使用した時の速度ではないでしょうか(戦中の日本では低オクタン燃料のためWEPが使えなかった又は使ってもまともに作動しなかった)。
    フッフール

  9. 8.日本が水メタ噴射を重要視したのはハイオク燃料が入手できなくなった為の代替策ですから、そういう事でいいと思います。

    それから6.のささきさんの書き込みにも関連するのですが、「丸」95/7号に「エース坂井の紫電改搭乗員用マニュアル」という記事(学研の歴史群像「紫電改にも再録、初出は明記されていないが)に坂井三郎氏直筆の「局地戦闘機(紫電11型空中使用標準参考)」という表が掲載されていて、それによると、
    巡航 ブースト-150mm 回転1900〜2000 メタ噴射圧0 ポンプ圧0.8 
    最高 ブースト+250mm 回転2900    メタ噴射圧0.6 ポンプ圧1.5
    といった数字が並んでいます。
    それにしても11型は「紫電改」とは言わないよなあ。

    舞弥

  10. 先週、米軍の搭乗員マニュアルの1944版を手に入れたら、「米軍航空燃料は後方や国内では91オクタン以下(62、87,91)だが、エンジンは100オクタン用に設計されているので気を付けろ」と繰り返し書いてありました。低オクタン燃料はブースト等を制限して使用するようで、低オクタン使用時用の赤いタグが各レバーに用意されていた様です。戦争後期のマニュアルでもこのような事が書かれている以上、「米軍機はみんな100/130オクタン」という訳では必ずしもない、ということだと思います。
    BUN

  11. 例えば、それが自動車用等に用意された別用途のガソリン。という可能性は
    ないのでしょうか?

    あるいは、輸送機用とか・・
    takukou

  12. 蛇足になると思われますが、
    航空機用エンジンが地上海上のエンジンと大きく違う事は作動環境の温度・圧力が
    劇的に変化する事です。
    ですから同じ離陸でも空母から離陸するときと、アンデス山脈から離陸するときで
    は、必要なエンジンの馬力が変わります。(うん、用語が違うような..)
    最大出力と言っても海上と高空では雲泥の差ですから色々な出力を示す数字に共通の物差しをつけてあります。
    離昇出力 海面高度での通常動作での最大出力。
    公称出力 仕様書で決められた高度での最大出力。
    常用出力 仕様書で決められた巡航高度と速度での連続運転可能出力です。

    質問に有ったミリタリーとか戦闘出力と言うのはエンジンの形式にもよりますが、
    通常は公称出力と同じ事が多いのではないでしょうか?
    これに対し緊急出力と言うのは制限付では有るものの可能限出しうるパワーを指し
    ます。この出力も他の出力と同じく飛行エンベロープで大きく変わるので増加率
    として示す事も多いようです。

    Sq

  13. ごめんなさい、よく調べたらちゃんと書いてありました。「誉一一型」及び「火星二一型」の取扱説明書からですが、
    常用最大運転  =長時間連続
    公称運転    =30分以内
    離昇吸入圧力運転=1分以内
    です。それから、
    高速運転    =急降下時30秒以内
    ってのもありました。
    次に水噴射の量ですが、誉一一型で、
    常用最大 =0
    公称第一速=150L/時
    公称第二速=150L/時
    離昇   =200L/時
    です。
    それから米軍使用の燃料についてですが、BUNさんのおっしゃるとおり、何も100/130グレードのものをどこでも使っていたわけではありません。ただ、別に「特別な燃料」ではないですよということです。

    最後にフッフールさんへ
    >アメリカでは資料がたくさん有りそうなのでいいなぁ,と思います(^^)。
    いま、ささきさんが訳している疾風の米軍レポートは、たぶん、ささきさん迎撃オフのときに私がささきさんにあげたやつだと思います(^^;;;;;
    もちろん取得場所は日本国内(国会図書館)ってわけです。

    胃袋3分の1

  14. いっこ忘れました(^^;;;;;
    日本製発動機の使用燃料についてですが、離昇、公称、常用で違うオクタン価のものを使用しているケースが時々あり、これは取扱説明書に明記してあります。
    例えば、「護一一/二一型」は離昇=95オクタン、公称以下=92オクタンで、「火星一三/一四型」は公称以上=91オクタン、常用以下=87オクタンです。
    ただ、現地部隊で必ずしもこれを守っていたということではないと思われます。
    胃袋3分の1

  15. 胃袋さん>国会図書館にそんな資料が眠っているとは!嬉しいっす(^^)!
    なるほど,米軍も戦後日本の航空エンジンをテストする時は,ちゃんと離昇,公称用に92,緊急用に95...などと燃料を使い分けていますよね。
    皆さん色々有り難うございました。ではでは...

    フッフール

  16. 蛇足だと思いますが、低空で二段二速過給器の二段目を作動させるのがアメリカ・イギリス機(少なくともマリーン61型はそうだったはず)の”緊急出力”だったと思います。当然、ブースト圧力が上がり、異常燃焼し易くなります。そこでアメリカ機では水を噴射したりしたみたいですね。
    水・メタノール噴射を米軍捕虜に自慢しようとした日本の将校が「ああ、あんまり良く無かったから止めた。中間冷却機の方がいい。」といわれて唖然とする話を聞いたことが有ります。当時の日本は効率のいい中間冷却機自体が余りなく、それを効率良く装備できなかった様です。
    ドイツでは日本同様そういう機構のエンジンがあまり無く、日本同様に水・メタノール噴射をした上で”緊急出力”に相当するものとして一酸化二窒素(所謂笑気ガス)の噴射をしてたみたいです。
    ほんとに蛇足になってしまいました。では。
    やんた


Back