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786 旧帝国陸海軍航空隊において、エンジンの名称がそれぞれ違っているそうなんですが、それでは、零戦の「栄」や雷電の「火星」、鍾馗の「ハ-109」、5式戦の「ハ-115」等は、お互い、どう呼び合っていたのでしょう。
「誉」=「ハ-45」は正解ですか?
MS-09R

  1. 大戦中頃(1943年暮れ頃だっけ)に陸海軍でエンジンを共用することになり、それまで陸軍が使っていたハ番号とは異なる統一ハ番号が新たに打たれているのでややこしいです。日本製エンジンの名称とスペックについては胃袋三分の一氏の力作「航空機搭載エンジン一覧」を参照してください。
    http://www.platon.co.jp/~vought/kakuki/sanko/en_japan.htm
    ささき

  2.  もうちょっと書いちゃお。統合後のエンジン番号の二桁には、実は次のような意味がありました。

    Ha-1x : 空冷直列
    Ha-2x : 空冷単列星型
    Ha-3x : 空冷複列星型14気筒
    Ha-4x : 空冷複列星型18気筒
    Ha-5x : 空冷多列星型18気筒以上
    Ha-6x : 液冷12気筒
    Ha-7x : 液冷12気筒以上
    Ha-8x : ディーゼル
    Ha-9x : 特殊

    ボア/ストローク区別
    x1 140/130
    x2 150/170
    x3 140/150
    x4 140/160
    x5 130/150
    x0 130/160

     上記資料によると隼III型や零戦54型に使われたエンジンは陸軍名ハ-115-II、海軍名栄32型、統一名称ハ 35-32 となっています。じゃぁ前線の整備兵が「ハ 35-32」という名称で呼んだかどうかは疑問です。公式文書などには統合名称が記載されても、前線では統合前どおり陸軍「ハ115」海軍「栄32型」という、「公式には廃棄された」名称を使い続けたのではないかと思います(何の裏付けもありませんが、戦記や回想録などでハ 35 という名前をついぞ見たことがないという状況証拠からの推測です)。他のエンジンについても状況は似たり寄ったりだったのではないでしょうか。
     ところが問題の「誉」ハ45は統合前の名前も「ハ45」で、統合後も「空冷複列18気筒・ボア/ストローク 130/150」を意味する「ハ45」と同じ番号がついています。従って統合前後に関わらず「ハ45-11」は「誉11型」であり、「ハ45-21」は「誉21型」であると言えると思いますが、胃袋さんの資料ではハ45-21と誉21型が別枠扱いになっており、陸軍用・海軍用で擬装品など細部仕様が異なった可能性もあります。
    ささき

  3. 零戦52型の交換用、53型以降への標準搭載に使用した栄30系各型とと隼三型のハー115系は別のエンジンで互換性もありません。また、零戦54型と同系列のエンジンを搭載しようと計画されたのは隼四型です。
    BUN

  4. BUN師匠>
     何を持って「同じ」とか「互換性がある」とかを判断するのは難しい問題です。
     補器類は陸海軍でそれぞれ別のものを指定していましたから、基本的には同じエンジンでも厳密に言えば全てのエンジンが「互換性がない」ということになってしまいます。
     「違う」と判断した根拠をお聞かせください。

    ささきさん>
     お勉強になりました。良ければ何という資料に書いてあったか教えてください。
    胃袋3分の1

  5. 詳しい回答ありがとうございました。
    >胃袋さんの所へは、いずれ遊びにいかでてもらいます。

    それにしても、航空機エンジンとは奥の深いモノですね。
    調べれば調べるほど、こんがらがってきます(爆)

    その中でも、一番のお気に入りは「東海」の「日立製-天風」エンジンですね。
    ほとんど資料がないので、困ってましたが(笑)
    MS-09R

  6. 「零戦の栄30系エンジンを降ろして、隼のハー115ーIIの代わりに搭載しようとしても、恐らくカウリングからはみ出る位に形が違う」ということです。互換性が無いというのは細部の口金の規格が異なる、といったことではなく、前線レベルで、読んで字の如く相互に積み換えが不能であろう、ということです。「栄30とハー115IIは元は同じエンジンなんだ」とマニアが言うのは正しいでしょうが、上の場合のように補機類が大きく異なるエンジンを同じエンジンを型番まで追いかけて同じエンジンとするのは明らかな間違いでしょう。
    BUN

  7. ↑補機類が異なるエンジンを・・・です。空冷星型エンジンの場合、補機の形状の変化は重要なことではないかと思います。
    BUN

  8. MS-09Rさん>
     日立・天風発動機の資料は、恵比寿の防衛庁図書館に「取扱参考書」「取扱須知」などがあります。もし、行ける距離にお住まいでしたら行ってみられるといいと思います。

    BUNさん>
     おっしゃりたいことは解りましたが賛成はできませんね。それに別にささきさんは「ハ115IIの代わりに栄三二型が積める」とは言ってないと思いますが。
     同じ基本設計で、同じエンジンブロック、気筒、ピストン、コンロッドなどの主要パーツに同じものを使用しているエンジンは「同じエンジン」でいいのではないでしょうか。要するに栄一一型と三二型はもちろんのこと、ハ25と栄三二型ですら「同じエンジン」だと私は思います。私の考えではハ115IIと栄三二型は「サブタイプの違う同じエンジン」だと思います。たとえば現代の自動車用エンジンで言えば「2TG」と「2TGE」を違うエンジンだと言っているようなものでしょうから(ちと古いですね、歳がバレる(^^;;;;;)。
    それから、「カウリングからはみ出る位に形が違う」としている根拠は何でしょうか?私は「ハ115II」も「栄三二型」も取扱説明書はおろか、外径が解るようなまともな写真を見たことがありません。もし、そういった資料をお持ちであれば大変貴重なので見せていただけるとありがたいと思います。
    ちなみに、「ハ45−21」と「誉二一型」は主に減速室上部とエンジン後部にある補器類がちがうだけですので、エンジンマウント用の穴の位置が同じであれば、それぞれ相手の機体に「組み付ける」ことはできると思います。


    胃袋3分の1

  9. 私は積み替え可能とも不可能とも言ってません。つまり「わからない」のです(^^;だからボカした書き方して誤解されてみたいでごめんなさい。名称が統一されたからと言って、「ネジの切り方すら違う」という陸軍仕様と海軍仕様がすぐに互換になったとも思えないし、さりとて書類上「ハ 35-32」書かれたエンジンに実質陸軍仕様と海軍仕様の二種類があるというのもおかしな話だし。大戦末期にはエンジンだけでなく機銃・弾薬・爆弾・照準器など多岐にわたる擬装品の共通化が(例によって泥縄的に)行われていましたが、それらの共通化がどのくらいの成果を挙げたのかは詳しく知らないのです。
    胃袋さん、統一ハ番号の解説は図書館で借りた日本機の本(確か著者は Tom Francillon...英語圏ではバイブルとされている)に載っていたものです。今手元にメモが残っていないので、今度図書館に行ったら調べてきます。
    ささき

  10. まず、論点を整理すると、
    別に何ということは無い凡ミスだと思いますが、ささきさんの文章中の零戦54型と隼三型のエンジンについては文章そのものが間違いなのは論を待たないでしょう。ですから、互換性がある、無い以前の問題です。文脈上、そう読めてしまうことから指摘したのです。

    私が注目した点は隼のエンジンと零戦のエンジンでは減速機のギアハウジング(でよかったですか?)の長さ、形状が全く異なるということです。ですから、隼のエンジンマウントに栄31型、あるいは21型を何とか取り付けるとしても、プロペラの回転面が前進してしまい、問題が出るであろう、ということです。ハー115(ハー115とハー115ーllはこの部分同形状のはず)と栄20型以降(栄32型とは統一呼称の推進の中で現れた名称であるはずなので海軍用の栄としての取り説は無いのではありませんか)との大きな差異はここにあると思います。これは写真にも残っていますので確認は容易なのではないでしょうか。こういう関係にある両エンジンを「同じ」とする見方は賛成できません。
    例えば、この問題を製造側から見れば、中島飛行機自体が武蔵製作所を開業し、製造工場の統一を行ない合理化を進めていた背景もあり、大局的には「同じエンジン」と表現することも可能だとは思います。
    しかし、運用側の視点(こちらの方が重要だと思います)から見た場合、現実に製品として供給された品物がこの両者の様なレベルで互換性を持たないのであれば「同系統のエンジン」ではあるが「別のエンジン」と表現するのが正しいのではないでしょうか。

    と、思って書き進めているのですが、隼のハー115と栄20型以降の形状の差異は私が認識している上記の点においては、正しいんですよね?
    BUN

  11. 議論すべき点がずれているのに気づきました。論点を変えましょう。
    正しい議題は、
    「『ハ115II』と『栄三二型』は、減速装置が違うのになぜ同じ『ハ35−32』という統一名称であるのか?」
    ですね。
    まあ、減速装置の違いはこの両タイプからではありませんが話としてはこの議題でいいかと思います。
    考えられるのは、減速装置以外の基本部分が同じスペックだったからということでしょうか(圧縮比、翼車の直径、過給圧、回転数、水メタノール噴射の有無、等)。
    実は手元には栄系エンジンの取説は一つもないので、これ以上のことは判りませんし、推定でものを言えるほどの材料もありません。すんませんが以上です。

    しかし、「同じエンジン」っていう捉え方は主観的なものかもしれませんので、決めてしまう必要も無いと思います。私個人としてはエンジンの取説に書いてある下記の表現に賛同します。
    「一二型は一一型と減速装置を異にするのみにて、他はまったく同一なり」(火星一〇型取扱説明書より)


    胃袋3分の1

  12. ちょっと違います。零戦に搭載された栄31型、同甲、同乙(栄31乙は31、31甲とは確か減速比が異なるはず。これを「同じエンジン」と表現することには同意です)と、零戦には積まれることが無かった、栄32型の型式が振られたという、ハー115−ll(原型のハー115も含む)とはエンジンの真ん中に位置するハウジングの長さが大幅に異なる、ということを言いたかったのです。ですからどう頑張っても隼に栄21型、31型は積めないだろう、であれば運用上「同じエンジン」とは言い難いのではないか、ということなのです。
    BUN

  13. 見物の方々にわかりやすく言いますと「隼用の「栄」エンジンは全長が短くて零戦用とはかなり形が違うようだ」ということです。
    BUN

  14. 中島飛行機の生産に関する研究の本(タイトル、出版社、著者とも忘れました。手許に無いので。)
    で「はじめは同じものを作っていたが、陸軍、海軍から別々の改修要求が有り、しだいに互換性が失われていった。」という記事を見たことが有ります。
    だから彩雲のエンジンは1800馬力、疾風のエンジンは1900馬力で紫電改のエンジンは2000馬力と書かれるんですかね?
    以前からその傾向はあったようで、三菱、中島では陸軍用と海軍用に生産設備をわけていた様です。従ってナンバリングの体系も異なる?ようです。

    A6の発動機に関しては、点火系統が横河電気製だったそうで、隼のモノとはべつだそうです。これは「陸軍実験航空隊」渡辺洋二とかいう本で見ました。

    乱文乱筆失礼します。では。
    やんた

  15. やや、なるほど、やっと理解しました。私も勘違いしていたってことですね。
    BUNさんがささきさんの文章に対して指摘したかったのは、
    「零戦五二型のエンジンはハ35−31だけど、隼三型のエンジンはハ35−32だよ」ってことで、しかも、ささきさんは「零戦五四型」と誤記をしているということですね(五四型のエンジンは金星六二型ですね)。
    エンジンの真ん中に位置するハウジングの長さが大幅に異なる>
     こちらは理解しています。たぶん減速装置が「遊星平歯車式」と、「遊星傘歯車式」または「二重遊星平歯車式」であることによる違いでしょう。減速装置についてはただいま研究中で、近々どこかに登場するでしょう(謎)
    「運用上互換性がない」ってのは同意ですが、ただやっぱり、それを「違うエンジン」と言ってしまうのには抵抗があります。私の中で「同系統の別のエンジン」というのは「金星」と「瑞星」や、「DB601」と「DB605」のことですね。私にとっては九七重狽ネい」ってのは同意ですが、ただやっぱり、それを「違うエンジン」と言ってしまうのには抵抗があります。私の中で「同系統の別のエンジン」というのは「金星」と「瑞星」や、「DB601」と「DB605」のことですね。私にとっては九七重爆二型の「ハ101」も雷電の「火星二三型」も「同じエンジン」です。
    胃袋3分の1

  16. すごいバトルですね。私も胃袋3分の1さんに
    同意です。戦地で故障(?)の97重がスクラ
    ップの1陸のエンジンととりえたのですから
    (NF文庫 陸軍重爆隊)同一と思ってます。
    3番爆弾

  17. そうでしょ。いきなり格闘戦に入ったから、もう操縦棹、汗でベトベトですよ。
    でも、中攻と九七重のエンジン交換はできたかもしれないけれど、隼と零戦は無理だよ、と言いたいだけです。「同じ」「同じ」と言うほど、同じではないですよ、と。
    BUN

  18. お疲れ様です。もとは同じエンジンを仕様をかえて、別々に改良していった挙げ句、統合したりするから悪いんです。もし九試単戦が陸軍に採用されてたりしたら大変だったでしょう。最後は全然違う飛行機になってたかも。蛇足ですね。では。
    やんた

  19. いや別にバトルしてるつもりはありませんよ。私はこういう議論は楽しくてしかたないですから(笑)
    まあ要は、「このエンジンとこのエンジンは、こことあそことここらへんがこんな風に違うんだよ」ってことを調べりゃいいってことですね。・・・誰が?(しばし無言・・・)
    その回答の一部は近々公開される!・・・・かも?(さらに謎)
    個人的には「エンジン系統図」みたいなものを作ってみたいとは前々から思ってはいるんですが・・・
    胃袋3分の1

  20. 関連して質問です。
    三菱の22気筒エンジン「ハ−50」は火星系列のシリンダー諸元
    (150×170)を用いていますが、
    どうして「ハ−52」ではないのでしょうか?
    あるいは実際には130×160だったとか……?

    たかつかさ

  21. ぬお? 私の単純な疑問が、こんなにも大激論に発展してる。やはり、ここは奥が深いところですね(^^; もっとも私の最初の疑問も、「隼」と「零戦」のエンジンは交換できなかったのか? ってトコだったので。(もしできたならラバウルあたりで、やってそうな気がしまして)
    >胃袋さま。残念ながら大阪在中のため、防衛図書館にはおいそれとはいけません。機会があれば行ってみます。ありがとうございます。
    MS-09R

  22. 14.での自分の発言は本当に乱文乱筆でした。
    >A6の発動機に関しては、点火系統が横河電気製だったそうで、隼のモノとはべつだそうです。これは「陸軍実験航空隊」渡辺洋二とかいう本で見ました。
    は「陸軍実験戦闘機隊」渡辺洋二 グリーンアロー出版の誤りです。
    再読しましたが、そのような記述は発見できませんでした。

    乱文乱筆失礼します。では。
    やんた


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