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1106 現代の技術で双胴機を作るとなると、
どんな用途になりますか?
また、利点・問題は?
勝井

  1. 現用・開発中の双胴機の例。
    (タンデム双発双ブーム)
    ・シュワイザーSA2-38A(RU-38A)…特殊捜索機
    ・セスナ337…軽飛行機
    プロペラトルクの影響軽減と片発飛行時の安定性を狙ったもの。特に前者は巡航時には片方のエンジンをカットして長時間の監視行動(対麻薬密輸・密入国など)を可能にしている。

    (単発双ブーム)
    ・ミヤシシチョフM-17〜M-55…高高度観測・偵察機
    単にジェットパイプを短くしてエンジンの効率を良くしたかったらしい。
    ・モルニア1…軽飛行機
    ・ヤコヴレフYak-58…軽飛行機
    プッシャー式の効率の良さを利用して高速を狙う(延長軸トラブルも回避)。前方視界も良好。重心位置の関係でキャビンが前進するので昇降や貨物の積み下ろしにも便利(特にモルニア1)

    (双発双ブーム)
    ・スホーイS-80…輸送機
    ・IAIアラバ…輸送機
    ・スケールド・コンポジットATTT
    胴体後方からのアクセスがよく、尾部大型カーゴドアの設置に有利(尾翼の取付けを気にせずに天井いっぱいの高さの貨物を出し入れできる。)。
    Schump

  2. ボエジャー:無給油・無着陸世界一周飛行
    http://www.nasm.edu/nasm/aero/aircraft/rutanvoy.htm
    どうしてこの形が良かったのか、どうぞ教えて下さい。
    少年タイフーン

  3. >2 ボイジャーの無着陸無給油世界一周を実現に導いたのは、機体設計から言えば

    *高揚抗比、(30-33対1)を実現する為の高アスペクト比
    *構造重量938lb(425kg)の7.5倍に及ぶ燃料搭載量(3175kg)

    といった特徴です。

    カナ―ドと主翼を結び、尾翼となるブーム部分は強度材料であり、
    且つ燃料タンクでもあります。

    翼にかかるモーメントを軽減させつつ、高いアスペクト比を得、なおかつ
    燃料搭載量を増やそうという絶妙なデザインですね。
    みなと

  4. へぇ…意外にあるもんなんですね、双胴機。
    皆様、ありがとうございます。
    勝井

  5. ご回答有り難うございました。ついでに、つまらない、私の感想をいくつか:

    1)ボィジャーのタンデム双発は、>1の1と同様に、巡航時の片発飛行を考えたものと思います。
    2)カナードは水平尾翼と異なり、上向きの揚力を発生しますので、あんなに長いカナードだと、けっこう揚抗比をかせいでいるのでしょうか?
    3)本番では、ウイングレットがとれたままで飛んでいってしまいましたが、あれだけ高アスペクト比の翼だと、ウイングレットの効果はほとんどないのでしょうか?
    4)それにしても、どうして最大離陸重量でちゃんと離陸できるか、完全にテストしておかなかったのか、とても不思議でなりません。
    少年タイフーン

  6. 少年タイフーンさん、こんにちは。

    >1)

    ボイジャーは、見方によってはケリー・ジョンソンのロッキードP38を前後
    倒置した様なデザインにも見えますが、離陸・上昇時には2発、巡航時には
    後方のエンジンのみの推進式としたことから、仰る通りタンデム双発を採った
    のでしょう。 加えて、ボイジャーの設計者は”ディファイアント”という
    タンデム双発機を開発した経験があり、再初期のスケッチこそ
    フライイング・ウイングを検討していたものの、すんなりと現在我々の知るところ
    のボイジャーのデザインに辿り着いたようです。

    >2)

    具体的なデーターが手許にない為間接的な回答となりますが、ボイジャーの
    カナード翼に使用された翼形のL/D比は132対1、標準的な翼形の実に1.2倍です。

    >3)

    ウイングレットの効果については1960年代にC.D.Cone Jr.が
    NASAのTechnical Report R-139として研究を発表してから永らく、その有効性に
    ついて議論のある話題ですが、端的にいえばウイングレットの長さ(高さ)分
    スパンを伸ばした場合より効率は落ちるものの、機体幅を抑えたまま揚抗比を
    1-3%向上させる程度の効果、というのが多くの見方です。
    また、ウイングレットを採用した場合、翼端部に発生する曲げモーメントに対抗
    する為の構造重量の増加も勘案しなければなりません。

    グライダーの様に長大なスパンに燃料を満載するボイジャーが地上にある時、
    翼はその自重で弓形にしなる為、燃料のベントチューブは上側に立ち上げる
    必要があります。ウイングレットはこのベントチューブを立ち上げる役割も
    果たしています。(それでも、離陸時にはグランドクルーが翼端のベントから
    漏れる燃料を滑走直前まで押さえていたそうです。やはりグライダーの離陸の
    ように)

    したがって、クルーにとってはウイングレットを失うことによる揚抗比の悪化
    より、燃料の漏洩の方を心配したことでしょう。懸念された燃料の漏洩は
    起こらず、飛行は続行されました。

    >4)

    飛行機の図鑑などを見ていると、あたかも最大離陸重量なるものが天賦の数値
    であるかの如く錯覚してしまいますが、量産機の場合の最大離陸重量は開発後、
    テスト飛行を経て安全率を見込んで決定される数値です。
    ボイジャーは記録を達成する為に製作された”実験機”です。
    設計者が推奨した離陸重量は9,400lbながら、本番に先立つ67回/357時間に及ぶ
    テスト結果からパイロットは10,000lb以上でも離陸上昇可能と判断、
    最終的に本番での離陸重量9,700lbが採択されました。

    本番で翼端をこすり、片側翼端を欠いた出来事の原因は、単純に離陸重量の増加
    だけにあったのではなく、テスト結果を踏まえた以下の小改修が負に作用した
    結果と見られています。

    1.外翼が内翼に先んじて揚力を発生し、機体がホッピングするのを避けるため、
     前脚をケーブルで圧縮し、迎角(以下AOAに統一)を下げた
    2. 重量でたわむ翼端と、地面の接触を防ぐ為、主脚の(エアスプリングの)
     空気圧を高めに設定した
    3. ツインブームの前方の燃料タンクへの搭載量を増やした為、重量で翼が
     前下がりにたわんだ

    これら些細な変更の相乗効果で、離陸時に翼が揚力を発生し持ちあがるまでの
    短時間、翼端部が負のAOAを持ち、滑走路に引きつけられたのが片側ウイングレット
    部破損につながりました。おそらく、これらの内1つ、例えば前脚のイニシャル長
    を若干長めに取っていたら、この問題は回避出来たことでしょう。

    さて、これら些細な問題は有ったにせよ、国家ではなく民間の愛好者有志によってボイジャーの記録は打ちたてられました。実にすばらしい点ですね。

    みなと

  7. サンタモニカのMuseum of Flyingの天井からぶら下げてあるボイジャーは本物ですか?(つまりレプリカではない)
    たしか主翼をぶった切って展示してあります。
    SHI


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