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1126 1.液冷エンジンはなぜ空冷エンジンより高空性能が良いのですか?
また、現代の自動車エンジンは「水冷」と表記しますが、WW2航空機エンジン
はなぜ「液冷」と表記するのでしょうか?
2.高高度性能だけで言えば、P−47のターボ付き空冷エンジンとP−51の
液冷エンジンとではどちらが優位なのでしょうか?
また、高高度から低空までの幅広いレンジでの運用を考えれば、P−47のターボ
付き空冷エンジンが有利なのでしょうか?
3.何故、液冷エンジンは空冷エンジンと比べ、小排気量・低馬力なのに、爆弾搭載量
が大きいのでしょうか?
スーパー98直協

  1. 1)高空に上がると空気が薄くなり(気圧が下がり)ます。つまりエンジンの冷媒が薄まってしまうので、空冷エンジンは冷却に支障を生じます。それに対して液冷は、ラジエターをあらかじめ大きく作るとか冷却液の流量を増やすとかして対応できるの分有利になります。なお、航空機の場合、高空の低温で冷却水が凍らないように、エチレングリコール等の不凍液を(自動車よりもかなり大量に)混ぜることが多いため、慣習的に「液冷」と呼びます。

    2)手許に高度別出力の資料がないので正確には分かりませんが、おそらくブースト圧(これが数値で分からんから推算もできない)はR-2800+排気タービン過給機の方が高いでしょう。

    3)根拠が不明です。もしかすると「ランカスターは1400〜1700馬力×4でグランドスラムを詰めるのに、B-29は2200×4で最大9t」あたりを想定されているのかもしれませんが、B-29はグランドスラム2発同時搭載して飛行した記録もあるので参考事例になりません。また、爆弾搭載量はエンジン出力だけでなく、翼面積、機体強度、機体内部容積、他の性能との選択等によって決まってきますので、エンジンだけのせいにはできません。
    Schump

  2. SCHUMP様、ご回答有り難うございます。
    上空は空気が薄くなる、というのは分かりますが、その分気温は機銃が凍り付くほど
    低くなりますね。それでも冷却効果が低いというのでしょうか?
    また冷却効果が低いと、なぜエンジン出力が出なくなるのでしょうか?
    (これは
    空気が薄ければ、燃焼室へ送り込める混合気量が減る、ということなら分かります。
    ターボチャージャーがそれを解決しますね。
    でも、高高度域における冷却効果という観点で、同じ空冷エンジンたる
    P−47やB−29はどのような理屈でこの問題を解決しているのでしょうか?

    3.例えば、PWのR−2800エンジンは45リッターの2200〜2500
    馬力。P−51のマーリン・エンジンは30リッター足らずで1500馬力。
    しかし、P−51は爆弾搭載量がF6FやF4Uと同等です。
    解説本の数字からは私には、液冷エンジンの方が、同じ爆装をするに比較的
    小排気量で済んでいるように思えるのですが。

    スーパー98直協

  3. P-51は実質的には1700馬力に相当します。
    クラソプ

  4. >2
    横からレス。
    >上空は空気が薄くなる、というのは分かりますが、その分気温は機銃が
    >凍り付くほど低くなりますね。それでも冷却効果が低いというのでしょうか?
    これは短絡です。
    機銃は普段は発熱していないことを思い出してください。
    発熱していない物体は、長時間放置すれば外気温と同じまで冷えます。
    これは地上でも変わりません。
    ただし、いったん熱せられた物体が冷えるペースは高空ほどゆるやかなものに
    なります。
    極端な例は宇宙空間で、人工衛星は熱輻射のみで冷却を行わねばなりません。

    >冷却が不足だと出力が減る理由
    熱機関だからです。

    >P−47、B−29
    特に後者では顕著ですが、同レベル出力の低中高度用の機体に比べて
    カウリングの開口面積、オイルクーラーが大きいことに注意してください。

    たかつかさ

  5. >2
    >また冷却効果が低いと、なぜエンジン出力が出なくなるのでしょうか?

    冷却能力が許容発生馬力を制限する様です。
    もっと簡単に考えると、オーバーヒートしたエンジンは
    一気にパワーが落ちます、壊れちゃうし。
    オーバーヒートしないギリギリの所が出力の限界です。

    >P−47やB−29はどのような理屈でこの問題を解決

    冷却に苦戦するのは確かですが、強制空冷ファンまで
    には至らないので、10000mならば、まだ空冷でも
    大丈夫だったのでは。

    高空で冷却が苦しくなるのは水冷、空冷も同じです。
    水冷の場合は、ならラジエター大きくすれば済むじゃん
    空冷の場合は、・・・

    それだけの話しと思います。

    林檎

  6. 冷媒の温度と密度について、かなりいい加減な計算をしてみます。
    その辺に止めてあるクルマを覗いたら、水温計の目盛が摂氏120度まで切ってあったので、これをレシプロエンジンの冷媒の最終的な温度(外気温からここまで上昇させられる)だと仮定してみます。
    さて、海面高度で気温が摂氏20度、気圧が1013hPaであるとき、高度9500m(B-29の平均的な巡航高度)では摂氏−42度、300hPaとなります。すると、
    ・温度差(同モル数の冷却空気によって奪われる熱量に比例)
      100度→162度…1.62倍
    ・気圧(=冷媒の密度:同体積・同温度の冷却空気の冷却能力に比例)
      1013hPa→300hPa…約0.296倍
    よって高度9500mにおける空気のエンジンに対する冷却能力(同一対気速度)は、海面高度のそれに比べて、
      1.62×0.296=約0.48倍
    となり、高空での冷却の苦しさが分かります。
    ちなみに、冷却対象を人間(表面温度=摂氏36度)とすると、高度9500mでは海面高度よりも約1.44倍冷えやすくなり、凍えてしまいます(その前に酸欠で死ぬけど)。

    P-47やB-29の冷却ですが、どうやら
    ・排気タービン過給器付きエンジンは機械式のものに比べて高ブースト時の熱効率が高い(過給のために推力になるべき動力を消費しない)ので、冷却効率の低下の影響が軽い
    ・高高度での出力の落ちが少ない分スピードが出せ、冷却空気流量が増えている
    ・開口部を大きくとって放熱を良くする
    という解決をしているようです(騙されてるような気がする…)

    >コルセアとマスタング(半ゴミ)
    コルセア(ヘルキャットでも同様)には、
    ・艦上機なので着艦の衝撃に耐えるために構造重量が大きい
    ・艦上機なので離艦できなくなるほどの重量物を積んではいけない
    という二大ハンデがあり、陸上機であるマスタングとは同列に比較できません。
    Schump

  7. (さらにゴミ)
    >・艦上機なので着艦の衝撃に耐えるために構造重量が大きい
    >・艦上機なので離艦できなくなるほどの重量物を積んではいけない
    >という二大ハンデがあり、陸上機であるマスタングとは同列に比較できません。

    よって、空冷艦上機対液冷艦上機で比べると・・・

    TBFアベンジャー:最大重量7.876トン - 自重4.788トン = 搭載量 3.088トン
       バラクーダ:最大重量6.400トン - 自重4.240トン = 搭載量 2.160トン

    となって、空冷の方が搭載量が大きくなります。
    ・・・・液冷側のサンプルがひどすぎるような気がしないでもないが・・・
    ま、いいか(ぉぃ)

    SADA

  8. クラソプ様、たかつかさ様、林檎様、Schump様、SADA様、

    親切な回答をいただき、有り難うございました。
    普段当たり前のように話されているけれど、私には分からない問題が解決すると、
    なんだか、肩の荷が下りたような不思議な爽快感ですね。
    スーパー98直協


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