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1564 「隼」とか「月光」などの旧日本軍の飛行機の名前は国民に親しまれるように公に公開される時に付けられたというのを読んだことがあり戦記でも現場では「屠竜」は「二式複戦」「疾風」は「キノハチヨン」と呼ばれていたようですが前述のものも含めて他のものの正式な軍内部での呼び方はどのようなものだったのでしょうか?
J2

  1. 実にややこしい話なのですが、

    海軍機、たとえば零戦は、
    「12試艦上戦闘機」(試作名称)「A6M1」「A6M2」など(形式)
    「零式艦上戦闘機11型」など(正式名称)

    陸軍機、たとえば「隼」は、
    「キ43」(試作名称)「1式戦闘機1型」など(正式名称)
    「隼」(愛称)

    …といった具合です。
    さらに海軍は18年(何月だったか忘れた)から、固有名詞を正式名称とします。
    ですので、海軍機につけられた固有名詞(「月光」「雷電」「烈風」など)は、
    すべて正式名称(愛称ではない)と判断してかまわないと思われます。

     さらに、発動機に関しても同じ具合で、
    隼1型に搭載されていた「ハ25」には、「99式950馬力発動機」という正式名があります。
    同じように、零戦11/21型の「栄12型」にも、「N○○○」といった4文字の形式があるはずなのですが、
    「世傑」あたりだと書いてないですね(笑)。

     さらに、航空機銃に関しても、同じなんだろうなぁ、
    って考えたら、頭痛くなってきた。

    どんべ

  2.  もう少し書きます。(間違ってたら誰か訂正してね)

     「12試艦上戦闘機」といった試作名称は海軍の計画名ですので、
    複数の機種が存在することがあります。
    「零式観測機」の名称で正式採用された「10試観測機」には、
    採用された三菱機のほかに、愛知の造った機もありました。

     一方、陸軍の「キ番号」は各社に別々に振り分けられます。
    97戦として採用された中島キ27に破れた三菱機は「キ33」でした。
    また、この「キ番号」は、正式採用後は、
    海軍の形式記号と同じように扱われるようです。

     余談ですが、「零式艦上戦闘機11型」は、正式採用当初は「零式1号艦上戦闘機1型」でした。
    逆に、「97式3号艦上攻撃機」は後に「97式艦上攻撃機12型」と改称されます。
    ので、「97式3号艦攻を零戦21型が護衛した」などという記述は、ちぐはぐな呼称をしているとも言えます。
    ただ、この辺まで来ると、個人的には、「どーでもいいや」になってしまうのですが(笑)

    どんべ

  3. 栄一二型はNK1Cですね。栄二一型ならNK一F。


  4. ↑漢数字が交じって変換してしまった。NK1F。


  5. 細かい事で恐縮ですが「零戦二一型が九七式三号艦攻を護衛する」という用例はあります。九七式艦上攻撃機は終戦まで「一号艦攻」「三号艦攻」といった旧呼称が現場では通用していたのです。このように公報などで通達される事の無い愛称や「現場で何と呼ばれていたか」は個別の例を拾うしかありません。「ろくいち」「はちよん」と、秋名峠のカローラの如くキ番号で呼ばれていた陸軍機も「隼」「九七戦」(きゅうななせん)といった愛称や「制式」呼称が現場に親しまれていた例もありますし、この問題は「ひたすら調査に精進する」以外に道はありません。

    また、海軍機で広く使われていたにも関わらず、戦後のファンの間では廃れてしまった呼び名としては実用機試製計画に基づく「実計番号」があり、銀河の「Y二〇」や烈風のM五〇といった番号が当てられています。ですからY二〇は一部の解説本にあるような「空技廠の実験機Y二〇」ではありません。実用機なのです。また、つい最近の雑誌の特集記事にも「烈風の三菱での社内名称M五〇」といった記述がありますが、そのような「社内名称」は聞いた事がありません。

    更に「正式な軍内部での呼び方はどのようなものだったでしょうか?」との質問文にある軍内部での呼び方ですが、これもまた色々とあり、必ずしも制式呼称で呼ばれた訳ではありません。軍中央の文書には「雷電改」(雷電二一型以降)、「零式水戦」(二式水戦のこと)、といった現場とはまた違う仮名称が多く使用されており、事情を知らない我々後世のファンに「調べる楽しみ」を豊富に提供してくれています。
    このような複雑な事情がありますので確かに「どうでもいいや」と思いますが、せめて零戦「ごじゅうにがた」と呼ぶのはやめて「ごうにいがた」と、「きゅうじゅうななしき」ではなく「きゅうななしき」と呼びましょう。更に字に書く時は17試ではなく、「十七試」(試作発注年度を表す為)と書かないと当時の搭乗員や技術者が化けて出るかもしれません。
    BUN

  6. ↑…また、細かいとこに突っ込んで来ますねぇ。
    「12試」は「昭和12年試作」を意味しますから、「いちにし」ではなく「じゅうにし」ですね。
    師匠の言われるように、「十二試」と書くべきかもしれません。(少々違和感がありますが。)
    どんべ

  7. 歳をとると(今年でもう29歳)細かいことばかりが気になって仕方が無いのですが、十二試艦戦は「昭和十二年試作」なのではありません。正しくは「昭和十二年度試作発注」なのです。例えば十九試艦上戦闘機が二十試になるのは計画が一年遅れたのではなく、試作発注時期が同じ昭和二十年の年度変わりの月をまたいでしまった為に名前が変ったのです。こんな細かいツッコミを入れてると、タダでさえ貴重な日本機ファンがまた減ってしまいますねぇ。でも業のようなものですので、あしからず。
    BUN

  8. 質問。↑の年度とは4月始まりの会計年度ということでよろしいでしょうか?
    ぼくも以前、外地部隊の保有機に「十七試戦闘機」の名を見てドキッ!としたことがありますが、秘密配備されていた烈風などを思い浮かべるまでもなく、もちろんこれは零式練戦のことでした。そういえば零式練戦自体がイレギュラーな命名ですね。


  9. 零式練戦はイレギュラーな命名ではありません。練習戦闘機は制式兵器に採用された年度とは無関係に元となった機体の年式をそのまま受け継ぐように内令で定められているからです。法則もあれば規定も存在します。
    BUN

  10. ↑勉強になります。言うまでもなく九六戦の練習機型は二式であることからすると、それ以降に零練戦の名称を定めた内令が定められたと、いう理解でよろしいのでしょうか。


  11. 陸軍だと制式になった年に新たに付け直されますよね。九七戦の練習機型として皇紀二六〇二年に制式採用された二式練習戦闘機のように。ちなみに、九七戦で訓練を受けていたパイロットが、「次は『二式』に乗れる」と言われて喜んだものの、鍾馗でも屠龍でもなく、九七戦をデチューンした二式練習戦闘機でがっかりしたという話を以前読んだことがあります。
    NX

  12. 二式練習用戦闘機とは海軍の九六艦戦を複座化したもので、陸軍の九七戦ベースの機体(結構改造箇所が多く、別の機体と見てよい程。しかも生産数は疾風、隼並の大量生産機)はキ79 二式高等練習機ですね。
    零式練習用戦闘機が制式兵器として採用されたのは十九年の三月、「航空機名称付与様式」が定められたのは十九年二月二十二日ですから、これによって名称が定められた練習機の第一号が零式練習用戦闘機であった訳です。この後、同様の名称付与様式で仮称九九式練習用爆撃機(九九艦爆複操縦型と明星のこと)が現れますが、制式採用はされていないようです。
    BUN

  13. 大変勉強になりました、それにしても奥が深い。。。
    J2

  14. あたしゃ、どーでもよくなってきた(笑)

    どんべ

  15. 成る程、くどいかしれませんね。じゃあ、反省してもう一発細かい所を(笑)。
    零式二号艦上戦闘機と呼ばれたと言われ、実際に二号零戦と呼ばれた零戦三二型は実は二号艦戦ではありません。制式兵器に採用時に最初から零戦三二型だったのです。逆に、二二型は仮称零式二号艦上戦闘機改という仮名称を持っています。また仮称零式艦上戦闘機二二型改とは零戦五二型のことを指します。実に簡単でわかりやすいですね。
    BUN

  16. 三二型の旧称は「仮称零式二号艦上戦闘機」。
    だから二二型は旧称「仮称零式二号艦上戦闘機改」であると。
    ついでにいうと、一一型は「零式一号艦上戦闘機一型」という名の陸上戦闘機であったと。


  17. もう、くどいついでに言っちゃいますけれど、微妙に違いますねぇ(笑)。
    二二型、三二型しか制式名称は無いんです。だから旧名称も存在しないんですね。
    ついでに、零式艦上戦闘機改とは仮称零式二号艦上戦闘機こと零戦三二型のことなんです。
    いやぁ、実にわかりやすい。
    BUN

  18. 「仮称」付きは制式名称じゃないんじゃないんですか? ↑↑の出典は「海軍飛行機略符号一覧表(昭和20年4月11日)」なんですが。


  19. ↑いや、正しくは、そいつのエアワールドで編集されたもの、でした。
    零戦三二型、二二型が制式になった時期からすると、「二号」があくまで「仮称」だったのは分かります。旧名称が「仮称〜」というのは有り得ないんでしょうか?


  20. 海軍の飛行機には制式兵器に採用されていないものも数多く存在します。しかし、それらの名称も制式兵器名ではないものの、どう呼ぶかが内令等で定められる場合があります。制式名称ではない兵器名というのも幾つも存在するのです。
    しかし零戦三二型の制式兵器採用時の内令兵第六号(十八年1月二十九日)の文面は
    「仮称零式二号艦上戦闘機を兵器採用し零式艦上戦闘機三二型と呼称す。仮称零式二号艦上戦闘機改(翼内増槽付)を兵器に採用し零式艦上戦闘機二二型と呼称す」
    といったものですから、他の内令兵にある名称変更(零式信管等に名称変更例があります)とは文面が異なり、旧名称は存在しないことが判ります。仮称二号という呼称が古い名称付与様式に基づく名称であることは事実ですが、零式二号艦上戦闘機という兵器名自体は旧名称はない、ということとは矛盾しません。
    BUN

  21. よくよく日本語の意味を考えるとそうですね。分かりました。どうもありがとうございました。



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