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1860 セルフシーリングの仕組みについてお教えください。
零式戦に試験的に採用されたものと連合国側のものとは
差があったのでしょうか。穴をジュラルミンで自動的に
塞いだのでしょうか。ゴム等で塞いだのでしょうか。
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  1. 被弾した孔から漏れる燃料を塞ぐのはジュラルミンではなく、燃料によって溶けて膨らんだゴム被覆の一部です。日本の防弾タンクは陸軍が早くから実用化していたタンクの外側を数層のゴムで覆った外装式のものと、海軍が十九年秋以降まず天山に装備しようとしたゴム層がタンク内部にある内袋式があります。内袋式の場合、燃料に触れる層が有名なカネビヤンです。耐油性のあるカネビヤンは内袋式タンクの必需品ですが、それ自体が孔を塞ぐ機能は持ちません。
    機能的には内袋式が外装式よりも効果的だとされていますが、実戦では外装式ゴムの防弾タンクも12.7mm弾に耐えるという報告がなされており、外装式でも装備する意義は十分にあったようです。
    防弾タンクの原理は日本と諸外国との間に差はあまりありませんが、日本の防弾タンクは既存の金属製燃料タンクにゴム被覆を施す、という考え方で進んでいた点が特徴といえば特徴でしょうか。
    BUN

  2. 陸軍の方式については不明ですが、海軍での防弾タンク開発について述べます。

    96陸攻の中国戦線での被害に対して研究されたのが、タンク全体をゴムなどで覆う外装方式の防弾タンクです。なぜ外装式にしたかと言うと、当時の日本には耐油性のある(ガソリンに侵されない)合成ゴムを作る技術がなかった為です。
    8mm程度のゴムでタンクを覆うことにより、7.7mm機銃による連続3発程度の被弾に対しても火災を生じることなく効果があることが確認できていました。
    さらに開発が進み、ゴムを伸張率の高いスポンジゴムとして、その周りに被弾時の破口を小さくするための金網を張るなどをした結果、13mm機銃に対しても防漏効果を持つまでになりました。

    但し、大口径砲に対してはタンクの内側にゴムを張った方式の方が有効であることは外装式開発時から判っていたことなので、耐油性能のあるゴムの開発が急がれました。
    太平洋戦争に入ってから南方で捕獲したB-17を調査した結果、タンクの内張にネオプレンが使われていることが判りましたが日本では製造不可能であり、当時ドイツで使われていたペルブナンの模倣品も実験室レベルで、とても量産できる状態ではなかった為、鐘紡で作られていた合成樹脂カネビヤンが使われました。

    一番内側にカネビヤンを使い、その上に天然ゴムとスポンジゴムを張り、外周を帆布にゴムをひいたもので覆いました。零戦での実験に使われたのがこの方式で、捕獲した米国製12.7mmの連続6発被弾にも火災を生じない性能を持っていました。
    ちなみにB-17の防弾タンクはネオプレンを内張にし、その周りを牛革で覆ってありました。零戦の20mm炸裂弾に対しても有効だったようです。

    日米ともに防弾(防漏)に対する考え方に大きな違いは無く、日本にはそれを実現するだけの化学製品製造能力がなかったのです。

    空技廠


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