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2196 零戦三二型の翼端に発生し、速度向上を妨げたカルマン渦、とは一体どういうものなんでしょう。またこれは三二型だけの現象でしょうか、それとも他の角型翼機にも共通して発生したものでしょうか?
烈風天駆

  1. 主翼上下の圧力差により、圧力の高い下面の空気が翼端から上面に回り込もうとして発生し、渦となります。これは翼端がある限りどのような飛行機にも発生します。また、これは主翼後縁にも発生します。なお、これが「誘導抵抗」という抗力を発生します。
    胃袋3分の1

  2. 翼端抵抗と呼ばれることもありますね。一般に主翼アスペクト比が高い(=横に細長い)ほど翼端抵抗は低く、矩形翼よりテーパー翼、テーパー翼より楕円翼のほうが低くなります。
    ささき

  3.  零戦32型の事は知りませんが、
    カルマン渦は流れの中に円柱などの障害物を置いた場合、下流側に交互に出来る2列の渦列の事です。
    木星の地球サイズの物から、小サイズ電線のうなりの原因になるのまで、多くの流れの現象の中で見られます。
    グリーネマイヤ智久

  4. ここに図入りの説明がありますね。

    http://www.hi-net.ne.jp/~mickey/uzu2.html
    グリーネマイヤ智久

  5. どのような書物をご覧になっての質問か判りかねますが、>1.で胃袋さんが解説された翼端に発生する渦は ”翼端渦”(Wing Tip Vortices)、又は ”誘導渦”(Trailing Vortices)と呼ぶのが一般的で、>3.>4.でグリーネマイヤ智久さんから解説の有った、流体内に置かれた比較的急峻な形状の背後の渦を説明したカルマン渦(カルマン渦列、Karman Vortex Street)とは区別すべき現象と思います。 典型的なカルマン渦列は低レイノルズ数(Re>400程度)で良く観察され、また、胴体や、突起物による抵抗の解析でもお目にかかることがありますが....ひょっとしたら英語では翼後縁の速度の異なる流れの境界の渦(Vortex Sheet)がカルマン渦(Vortex Street)と紛らわしいので、誤用してしまったのかもしれません。

    http://wings.buffalo.edu/courses/fa00/mae/335/files/main.htm
    に、カルマン渦と翼端渦の双方の美しい写真がありました。御参考まで



                                                                                                                                                                                                                                                                                                              

    みなと

  6. あ、低レイノルズ数(Re<400程度)です。ごめんなさい。

    みなと

  7. 三二型って、翼端の形状にそれほど大きな問題があったんでしょうか?翼端を切る前の三二型試作機の速度も実はあまり向上していないし、5ノット程度速くなると予測された翼端切断は確かに予定通りの速度向上を見せているので少々疑問が残ります。翼端を丸めた五二型も集合排気管なら同程度の速度だったのでは?
    しかしこれは別の問題ですね。
    BUN

  8. いえいえ、ここで徹底的にやっちゃってくださいな。
    烈風天駆

  9. 御興味があるなら続きを。
    三二型の飛行試験は昭和17年3月頃までに二一型と同様の主翼の初期の試作機で速度試験も含めてほぼ済まされています。この結果、高々度では最大速力が相当(20ノット程度)向上するものの、中高度以下ではあまり向上が見られないことが確認されています。そして翼端切り落としは三二型生産機のもう一つの特徴である百発弾倉の為に設けられた主翼下の膨らみによる抵抗を相殺する程度(3〜5ノットずつの相殺)と見込まれています。大雑把な話としては三二型は翼端を切り落とす前から高々度以外での速力向上があまり見られなかったのです。
    BUN

  10.  私は、32型で大幅に航続力が落ちたことの方が不思議です。

    絵塗師

  11. >10
     執筆陣の方々を差し置いて私が言うのもなんですが、その事については「太平洋戦史33 零式艦上戦闘機2」に詳しく書かれています。
     意外な事実がわかりますよ。
    2号(YOU)

  12. A6M2からの翼端切断に関しては「速度増加1.5ノット」という計算見通しもあったようですから、実機で5ノットを超えて速くなったのなら御の字なのですが。


  13. これがどういうことなのかこれからもう少し考えてみなければなりませんが、ふと気づいたこと。
    翼端切断前のA6M3は、どうやら、二速公称高度である6000メートルでの実測速度は事前に計算された値よりも劣っているが、むしろ4000メートルとかそれ以下では計算よりも速度が出すぎているらしい。この傾向は高度が低くなるほど顕著です。
    これは、何か発動機のセッティングが完成していなかったとかそういうことなのでしょうか。



  14. 2197にも書きましたが、三二型は量産機になると性能推算された所定の速度を発揮しているようです。堀越・奥宮「零戦」で速度が出ないと書かれているのはA6M3試作機のことです。しかし、もっと後には実測値が計算値に合って来ているという記述もあります。A6M3とは本来300kt付近を目標として考えられた機体であり、初期的な問題を取り除いた後には、充分本来の予想された速度性能に至っていたと考えるべきなのではないでしょうか。


  15. 煽った私が仕切るのもなんですが、話題の中心が速度関係に移ってきたようなので、上のスレに合流させていただきます。A−140様、勝手にごめんなさい。
    レスして下さった皆様に感謝です。
    烈風天駆

  16. さらに脱線になりますが、三二型の翼端は「捻り下げ」を無視して切断されてしまった事に、もう一つの大きな問題点があったのではないかと思います。
    零戦の「捻り下げ」は、翼端失速を起こすテーパ−翼の特性を補正する為に計算されていたものですから、これを無造作に切ってしまうと、本庄技師が懸念した通り、スペックに現れにくい部分に悪影響が出てしまうのは避けられなかったでしょう。「零式艦上戦闘機2」に、三二型は宙返り頂点での捻りが困難との報告が紹介されていましたが、これは「捻り込み」のような失速すれすれを攻める飛びを試みた時に、この切断の悪影響がモロに出てしまったものと思われます。つまり翼幅短縮による旋回性能の低下だけではなく、無理めの機動をした時に限界が来るのが早い、具体的には翼端失速から突然スピンに入るか、或いは止むを得ず操縦桿を緩めるかという事になります。

    堀越・奥宮「零戦」には、十七年秋の空技廠における会議で、空戦性能の劣化に反対の声が上がったとありますが、短縮した翼幅に合わせて主翼を再設計した五二型に比べると、三二型は最初に切断ありきといった雑な感が否めず、取扱説明書にも明記されている通り、切断は空戦性能よりも工作簡略化の方が急務だったのではないかという印象を持っています。

    以前に復元中の二二型を間近で見る機会があったのですが、翼端の折り畳み部分は、確かにこれさえ無ければ相当作り易くなるだろうと思わせる複雑なものでした。「零式艦上戦闘機2」には、翼端折り畳みの廃止によって1ヶ月の生産機数が一割アップしたとありましたが、成る程と頷かされるものがありました。
    MITTU

  17. 片さんと私は3850号機以降に翼端折畳み廃止は無い、との説を採っておりますので、果たして生産数の増加が「翼端折畳み廃止」を反映したものかは何とも言えません。
    BUN

  18. 翼端折畳廃止論者のひとりの方がは6月28日「A6多量生産会議」から7月15日の三菱側計画資料完成までの一連の経緯を根拠とされていますが、その過程から生まれたのが「一二型」なのだと仮にするにしても、その結果7月の月産数が向上したとみるのは因果関係の問題としていかがなものか。7月半ばにはすでに五二型が製造途中であり、こうした「生産簡易化」の反映があったとしても、それは五二型に対して行われたと見る方がいくらか自然なのではないでしょうか。



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