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2543 サンダーボルトやB-17、29なんですが、基本的に空冷エンジン装備機は高高度での過熱が問題になると思うんですけど(実際、フォッケウルフも疾風も高高度では水冷エンジン機であるムスタングとは部が悪かったらしい)、排気タービンに空冷エンジンの過熱を防ぐ妙手があるのでしょうか?(B-29はカウリングが小さすぎて冷却に苦労したとか歴史群像に書いてありましたけど)。
hiro

  1. #フォッケや疾風
     液冷空冷の差以前の問題です。BMW801やハ45は過給器が一段しかなく、二段過給器を備えたマーリンに比べて高空の希薄な空気における出力低下が大きいのです。逆に液冷でありさえすれば高空性能が良いわけでもないわけで、過給器に恵まれなかった(排気タービン併用をあてにしていたので、本体過給器の性能向上に消極的だった)アリソンV-1710が好例でしょう。
     また、液冷にしても、高空用に表面積を大きめにしたラジエターをつけておかないと、空冷と同様の冷却不足の問題が発生します。

    #排気タービン
     希薄大気における出力低下をさらに遅らせることができるのが排気タービンです。しかも過給器駆動のためにプロペラ用の出力を回してやらずにすむので、効率良く過給できることになります。
     これで「高く上る→空気抵抗少なくなる一方で推力下がらない→スピード出る→時間あたりに取り込める冷却空気の体積増える→過熱しない程度に冷やせる」となるわけです。限界はありますが。

    #B‐29の冷却不足
     カウリングが小さいだけでは冷却不足にはなりません。むしろ、取り入れた空気をエンジンだけに効率よく当てるためには、タイトなカウリングのほうがいいくらいです。
     小さい、というのはカウリングの入口面積のことでしょう。大口開けてると空気抵抗が増えるので、なるべく小さくしたいのが人情なのですが。
     また、R-3350エンジンはもともと密度が高くて(二重星型18気筒だから仕方ない)冷却空気の通り道が確保しにくいうえ、軽量化のために多用したマグネシウム合金製の部品が発火しやすいという問題も抱えていました。
    Schump

  2. フォッケウルフはそれ以前に冷却自体に問題があったようですね。
    初期のフォッケは着陸後エンジンに消化剤をかけて冷やす作業はどこの基地でもやってたようですし、
    フォッケウルフ博士は「なんて加熱しやすいエンジンだ!」と言えばBMW社は「設計が適切な冷却をしていない!」と反論してやりあっていたようです。

    B−29は高高度ではやはり加熱したらしく、高度1万mでは1〜2時間程の飛行で危険域に加熱したようです。(ちょっとうろ覚えですが・・・)
    ふなすけ

  3. 質問者ですが、今一つわからないのが、コルセアやヘルキャットは2段2速の加給機つけていましたが、高高度性能でムスタングやタンクなんかには劣っていたといわれています。疾風に2段2速つけても多分おんなじことだと思うんです。空冷エンジンの構造自体が冷却能力で水冷エンジンに劣るとの記述は過去レスでも結構あったと思います。以上から空冷エンジンで高高度性能に優れた水冷エンジンを上回っていたのは排気タービン装備のものだろうとの結論につながるのですが、じゃあ冷却の問題はどうやって解決したの?っていうのが疑問なんです。
    hiro

  4. >3
     それは問題の切り分けが間違っています。
     高高度で馬力が出るのは、高高度で沢山の吸気を可能とする過給器があるからです。

     排気タービンは高高度でも充分な吸入空気を保証してくれるだけの代物です。
     ですからB-29のように冷却に問題を抱える事もあるし、それはエンジンや期待の設計の問題だといえるでしょう。
     また意外と忘れられがちですが、大戦末期のBf109Gも高高度性能の不足に苦しんでいます。大型の高高度用過給器を備えたASユニットや、高高度用ブースターであるGM1を備えたいうならば高高度対応モデルが別に用意されたことからも、液冷=高高度が優秀ではない事が判るかと思います。

     勿論、高高度に上がれば冷却に苦しむ事も充分に予想できますが、それは液冷でもご指摘のように同じ事です。もっとも液冷の場合は短時間ならばラジエータ内の冷却液に熱を蓄える事も可能ですから戦闘機のように短時間の全開になら比較的楽な設計も成立する余地があるかもしれません・・・・。
     まあ、液冷+排気タービンのP-38が中期以降のモデルまで散々冷却問題で苦しんでいた事を考えれば、結局同じ事なのではないかと思います。
     機械式過給器を備えたエンジンとしては最高傑作のマーリンの、それも一部のモデルを液冷エンジンの典型的な事例と考えるのは、甚だ不適当極まりないと考えます。

     液冷でも空冷でも、程度の差こそあれ、高高度の冷却は苦しいものですし、機械式でも排気タービン式でも、高高度の過給性能は出そうと思えば出せるものなのです。

    SUDO

  5. 質問者です。SUDOさんの回答をみてワクワクしてるんですが、それならば、2段2速加給機付きの優秀な空冷エンジン装備機がムスタングやTa152を例えば高度7500mで打ち負かすといったことも可能と考えていいんでしょうか(ある架空戦記でベアキャットも所詮高高度ではタンクにかなわない設定になっていてとっても残念に思ったんですが・・・・)。

    hiro

  6.  そりゃ、そういったエンジンを作る事は不可能ではないですけど、排気タービンでも良いと思うし、大戦末期ならジェットで良いんでは?

    SUDO

  7. 有段変速過給器の場合、全開高度がギヤ比によって一律に決まってしまう問題もあります。ダイムラーベンツはフルカン継手による無段変速過給器を実用化し、ロールスロイスは使用目的に合わせてギヤ比を調整した多品種のサブタイプを生産してこの問題に対処していました。アメリカの回答は排気タービン(ウェースト・ゲート開度の調整だけで過給を調整できる)だったようですが、戦闘機で実用化できたのは P-38 と P-47 だけでした。
    ささき

  8. 質問者です。大変勉強になりました。ささきさんにまでお答え頂いて感激です。
    hiro

  9. でも、実際日本では、排気タービンの先にある目標として二段三速過給器を捉えていたようなんですよ。



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