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2720 重量と飛行性能について質問があります。 例えば重量3トン・高度5000mで
最高速500kmだとします。 この時突然重量が半分の1.5トンになった場合、最高速に変化は無いが、高度が上がると理解してますがこれは正しいのでしょうか? 正解だとすれば、何パーセント上昇そるのですか? 宜しくお願いします。


 
上保

  1.  あくまで「飛行機が水平等速飛行を維持しているというのはどういう事か、ひとつのパラメータを変化させると他がどの様に連鎖して変化するのか」を示す目安として解説します。例として数字を出して計算していますが、あくまで目安であり何ら実証的数値ではないことを肝に銘じて読んでください。

     まず飛行機が水平等速飛行している場合、以下の4つの力が釣り合っています。

       揚力
        ↑
    推力←飛行機→抗力
        ↓
       重力

     ここで、機体を下に引っ張っている重力が突然減少した場合、揚力が重力に勝って機体が上昇することは直感的にわかって頂けると思います。
     では、何パーセント上昇するか?大気密度を均一と仮定すれば(そしてパイロットが補正操作を行わなければ)永遠に上昇し続けます。実際には大気密度は高度と共に下がりますので何処かで揚力と重力が釣り合って上昇は止まりますし、普通はそれ以前にパイロットが操縦桿を押し込んで上昇を止めます。

     物凄くざっくばらんに説明すると、主翼に発生する揚力は機体が進行方向に対し上を向く角度(迎角)にほぼ比例します。揚力係数の変化は翼型によって異なり、たまたま手元にある NACA23012 型のグラフから読むと 0.07 / 度でしたが、簡単にするため 0.1 / 度と仮定しましょう(

     重量 3000Kg に対し例えば迎角 5 度で釣り合っているとすると、揚力の他のパラメータ(揚力 = CL(α)1/2SρV^2、CL=揚力係数、S=主翼面積、ρ=空気密度、V=速度)は 6000 となります。
    CL(5) = 0.5, 3000 = 6000 *. 0.5
    これを 1500 に釣り合わせる為に必要な揚力係数は
    6000 * CL(α) = 1500 α = 0.25
    となります。

     さて、推力は必ずしも水平方向を向きません。機体は水平線に対し機首を上げて「迎角」を取っており、迎角をαとすると推力×cos(α)が水平方向に、推力×sin(α)が垂直方向に働きます。パイロットが「操縦桿を押して」機首を下げるということは、今まで上を向いていた推力を水平方向に向けて使えることを意味し、これによって加速することが期待できます。迎角が 5 度から 2.5 度に減少することによりどの位の推力向上になるかと言うと、

    cos(0.25deg) / cos(0.5deg) = 0.999990 / 0.99996 = 1.000028 0.0028%

    という事で、迎角変化による水平方向の推力向上は殆ど誤差範囲内です(実際には重力との釣り合いにも推力の垂直成分 sin(α) を入れる必要がありますが、面倒なので省略しました)

     ただし、現実の飛行機はもっと複雑です。先ほどは無視した機体および主翼の抵抗係数 CD は迎角によって変化します(必ずしも正比例しない)。特に主翼の抵抗係数の中には「誘導抵抗(CDi)」が含まれ、これは揚力の2乗に比例します。

    CD = CD0 + CDi CD0=有害抵抗係数、CDi=誘導抵抗係数
    CDi = (CL^2 / πeAR) CL=揚力 e=飛行機効率 AR=アスペクト比

     CL が 0.5 から 0.25 に減少した場合、誘導抵抗は 1/4 に減少します。ここで飛行機の全抵抗係数のうち 50% を誘導抵抗が占めると仮定すると、全抵抗係数は 100 / (50+(50/4)) で 62% に減少します。ただし抵抗は速度の2乗に比例しますので、これを考慮して平方根を取ると速度は約 20% 向上すると算出されます。
     ただし、速度が上がると速度の二乗に比例して揚力が増えるのでその分迎角を減らして釣り合わせねばならず、これが更に誘導抵抗の変化を招くので必ずしも計算どおりにはなりません。また、上記の式は多くのパラメータを無視したり当てずっぽうの値を放り込んだりしています。★決して「重量半分なら速度は2割向上」などと短絡的に考えないでください!★

    ささき

  2. ご返答ありがとうがざいます。 幾つか解らない所があったり、想像していた以上に様々な要因が関わっていることを知り、現在参考書を読みながら理解に努めています。 また質問することがありましたら、宜しくお願いします。        有難うございました。

    上保


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