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2804 えっと、初投稿となります。初心者なので腹立たしい質問かもしれませんが答えてもらえれば嬉しいです。
主翼アスペクト比に関する資料を読んでいたところ、高速機であるならば小さい方が良いという記述がありました。しかし、Ta152なんか高速機であるにもかかわらず主翼はかなり細長いように見受けられますが、どう言うことなんでしょうか?

  1.  一般的にはアスペクト比が低い方が空気抵抗の面で高速化に有利なのですが、Ta152の場合、空気が薄い(=空気抵抗が少ない)高高度を主に飛ぶので(そもそもTa152は高高度迎撃機)、あの翼でも十分な速度が出せるのです。
     また、高高度では少ない空気から揚力を得る必要があるので、アスペクト比が高い主翼でないと十分な量の空気が拾えず、そもそも飛行維持が出来ません。
    zono

  2. あの長大な翼幅は、Ta152の中でも高々度戦闘機であるH型に特有のものです。
    Ta152全般でいえば、Fw190Dまでと翼幅上ではあまり変わらない11メートル翼が基本です。


  3. >2
     いかん、頭の中に最初からTa152Hの映像しか浮かんでいなかった…。
     たしかにC型の主翼は違いますね。
     片さん、フォロー感謝です。
    zono

  4.  同一面積・同一翼型の翼ではアスペクト比が大きい方が、同じ揚力を発生するときに受ける空気抵抗は小さく(=揚抗比が大きく)なります。これは翼端から生じる渦状の気流の影響を受けにくいためです(アスペクト比の大小に関わらず、同一面積・同一仰角ならば正面から拾う空気の量は同じ)。
     よって一部エアレーサーやビジネス機・旅客機では速度性能の向上や燃費の改善のためにアスペクト比の大きな主翼を採用しています。
     戦闘機の場合、激しい機動をしなくてはいけないので、アスペクト比の大きい、すなわち細長い翼はロールの妨げになったり強度的に不利だったりするため、特に空力的負荷の大きい高速戦闘機ではアスペクト比を下げる傾向があります。
     ただし、高高度性能を狙う場合、空気が薄い、すなわち空気抵抗の少ない世界で機体重量分(機動時はさらにその数倍)の揚力を確保しなければならないので、アスペクト比を大きくすると有利になります(アスペクト比が小さいと、空気抵抗を増やすためにより高速で飛ばなければならなくなるが、そうするにはエンジン出力が足りない)。
     このような手法はTa152やスピットファイアのHFタイプ、キ94IIといったレシプロ機ばかりではなく、ジェット戦闘機の時代になってもMiG-25やF-14(可変アスペクト比!)で行われています。
    Schump

  5. Ta152は、翼幅や自重などの機体規模からいえば終戦時に開発中だった烈風の高々度型にほぼ等しいのですが、翼面積が4分の3しかありません。むしろずっと小型の紫電改に等しい翼面積なのです。この差は最大速度に大きく響いています。



  6. >5
    乱暴に言うと、Ta152H(4.で”H”書き忘れた^^;)は、

     vs烈風高高度型:小翼面積による絶対的な空気抵抗の差で速い
     vs紫電改:高アスペクト比とエンジンの過給性能で空気抵抗の少ない世界に
          行けるので速い

    といったところでしょうか。
    Schump

  7. な、なるほど。高アスペクト比は高高度戦闘機特有のことなんですね。
    では、低空に合わせた戦闘機ならば揚力が得られる範囲で小さい方が有利ということでよろしい訳ですね?


  8. 戦闘機はレーサーではないので必ずしもそうとは限りません。
    飛燕の設計者である土井武夫氏の考え方などはある程度の大アスペクト比もまた良しといったものです。
    BUN

  9. 飛行機の抵抗は以下の式から概算されます。

    CD = CD0 + CDi
    CD=全抵抗係数 CD0=有害抵抗係数 CDi=誘導抵抗係数

    CDi = (CL^2 / πeAR)
    CL=揚力 e=飛行機効率 AR=アスペクト比

     同じ馬力で飛行機を速くするには投影面積と流線形を徹底して有害抵抗を減らす、アスペクト比を上げて誘導抵抗を減らす、軽量化して少ない揚力でも飛べるようにする(結果として誘導抵抗が減る)、などがあります。
     真っ直ぐ飛ぶだけならそれでも良いのですが、戦闘機は運動性が高くなければなりません。急旋回時にはGに対応した大揚力を発生する必要があり、アスペクト比の低い翼は急旋回に伴うエネルギーロスが大きくなります。
     それならばとアスペクト比の高い細長い翼にすると、細長い翼は高速時に捻じれ変形を起こしやすく、エルロンリバースやフラッターなどの現象により最高速度が制限されます。
     ならば頑丈で細長い翼なら良いのかというと、重くなってしまっては駄目です。また細長い翼は高速時に補助翼が重くなりやすくく、一般にロール方向の運動性も悪い傾向にあります。

     戦闘機の翼はこのように矛盾する複数の要素を考え、その機体が使われる環境と目的に合わせ妥協点を見出して設計されます。単純に高々度用なら大きければ良く、低高度用なら小さければ良いというものではありません。
    ささき


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