QQCCMMVVGGTT
2900 2次大戦時、以下の方法はできなかったのでしょうか?
特に局戦なら有効に思えるのです。

・星型でのターボ過給器は、構造が複雑になると思うので
 V型DOHCターボの高回転で馬力を稼ぐ。
・高回転に偏ったピーキーな傾向になるが、そこは変速機・可変ピッチプロペ
 ラを最適化して、高回転から生み出した、高トクル・高馬力を生かす
・高温に耐えるタービン素材がないのであれば、既存のものを○○時間限定
 と割り切る。
・ボールベアリングの技術は難しいと思うので、流体軸受を採用。(主にタービン)
 (当時、流体軸受の理論があったかは知りませんけど・・・)
・ノッキングや過給の際の効率化の対策を当時どの程度までわかっていたの
 かわかりませんが、スキッシュエリア・可変バルブタイミング・ウェイスト
 ゲートなどを設ける。(当時ではこれは無理ですか?)

というのは、今車なら3000cc程度で1000馬力over(カリカリチューンでしょうが)
出来ているので、なぜ当時ある程度までできなかったの?って感じです。
航空機には車にはない高低の考えがあることはわかっています。
けど局戦ならば・・・と思った次第です。


evo

  1.  DOHCにするとヘッドが大きくなりますな、まあSOHCの4バルブなんてのが珍しくないので大差無いでしょう。
     でもってV型にターボ(排気タービン過給器)となると、米国のアリソンでやってます。結局排気管の取り回しがV型と星型で違うだけですんで、星型だからターボ化が難しいという事はありません。B-17、B-24、B-29、P-47等は星型空冷エンジンに排気タービン過給器です。
     でもって、過給器の性能を生かして馬力を出すには、ぶっちゃけた話ハイオク燃料が必要です。日本やドイツはそれが得られなくて区労してます。
     また流体軸受けとは、オイルで浮かしてるだけで、つまりは普通の潤滑と実は大して変りませんし、排気タービン過給器の軸受けがどんな温度になり、その為に潤滑油にどういう性能が求められるのかも考慮して下さい。ちなみに日本ではハイオク燃料に苦しんだように、高品質の潤滑油の確保にも苦労しています。
     ってなわけで、当時の先端技術者がどの程度の事を知っていて、どの程度の事が当時できたのかですが、知識でいうなら、現代の自動車に使われてる程度の事柄の大半は既にこの時期に知られていました。
     まずは、当時の飛行機がどういうエンジンを使っていたのか、それから調べてみたら如何でしょうか。
    SUDO

  2. >V型DOHC
     ソ連のミクーリン系液冷エンジン(MiG-1, MiG-3, Il-2 に採用)がV型DOHCです。

    >局戦専用の高回転エンジン
     かのロールス・ロイスが迎撃戦闘機用にターボ付きV型12気筒スリーブ・バルブ2サイクル、26リッターで 4000hp オーバーを狙った「クレシー(Crecy)」というエンジンを試作しています。副燃焼室への燃料噴射で稀薄燃焼(リーン・バーン)まで行う先進的なエンジンでしたが、先進的に過ぎてR&Rの技術をもってしてもモノにすることはできず、8年の歳月をかけ試作6台で終わりました。
     また、少排気量シリンダを沢山束ねて高回転を狙う設計も一時期流行し、ネイピアのダガーやセイバー(H型24気筒)、プラット&ホィットニーの R-2160(星型42気筒、試作のみ)などがありました。セイバーは実戦にまで投入されましたが、事故故障続出で極めて悪評だったと伝えられます。
     マーリンより1割以上小さな排気量で同等以上の出力を狙ったコンチネンタル IV-1430 倒立V型12気筒「ハイパー」も高過給高回転を狙ったエンジンでしたが、予定していた 1600hp に遥か及ばない 1000hp 前後でアップアップしてしまい、しかもトラブル続出で試作 23 台に終わりました(このエンジンの成功を前提に設計された機体数機種を道連れに)。

    >スキッシュエリア・可変バルブタイミング・ウェイストゲートなどを設ける。
     エンジンの専門用語はよくわかりませんが、アメリカ製の戦闘機エンジンの多くにはブースト・レギュレーターが付いていました。飛行中に高度が変化してもブースト圧を一定に保つシステムです。ドイツのフルカン継手式スーパーチャージャーも気圧計に連動していたと聞きます。

    >車なら3000cc程度で1000馬力over
     それを前提に日産 VG-30 6 気筒を双発で搭載したエアレーサー「ポンド・レーサー」がありました。局戦以上に飛行条件が限定されるレーサーということに最適化し、機体素材も含めてハイテクを惜しみなく投入したのですがトラブル続出、1986〜1991 年の間にまともにレース完走(と言うのはおかしいけど)することも少なく、1000hp オーバーを期待したエンジンは実測 800hp 前後でアップアップだったそうです。最終的に 91 年のレース中の片発停止を起こし墜落してパイロットとともに失われてしまいました…。自動車エンジン技術を航空用に転用するのは想像以上に難しいようです。

     私も自動車用レーシングエンジンの高性能には敬服していますが、それを高信頼性の要求される飛行機用(たとえ局戦でもエンジンが止まれば高い確率で死にます、本土防空を主務とした雷電でさえ「殺人機」と呼ばれているのです)、しかも想像以上に荒っぽい使用に耐えることを要求される戦闘機用に応用するのは難しいのではないかと思います。
    ささき

  3. ごめんなさい、R-2160 トーネードはライト社でした。P&Wはこちらも御騒がせエンジン、アメリカ版のセイバーとも言えるH型 24 気筒スリーブバルブの X-1800(2000hp を予定)を試作して派手に失敗しています。
    ささき

  4. 車の話なので便乗しますが、最近でてきたVolkswagenのW型エンジンというものの解説を読むとv型を2つ並列にならべてファイナルデフェンシャルで1つにまとめたような感じです。
    これって同じドイツの爆撃機HE177,Ju288でつかわれた双子engine感じなんですけど,戦後60年たってやっと
    実用化したと理解してよろしいのでしょうか?
    wittmann

  5.  >というのは、今車なら3000cc程度で1000馬力over(カリカリチューンでしょうが)

     これって 回転数はどのくらいなのでしょうか
     シリンダー速度の制限があるため 回転数を上げてリッターあたりの馬力を増やす為には 行程(ストローク)を短くしなければなりません とすると必然的にシリンダ径(ボア)も小さくしなければならず そうすると排気量が小さくなって....
     第2次大戦当時の航空エンジンでは 3000rpmでリッター100馬力くらい出すやつもあります
     レーシングカーとかのエンジンを見ると 回転数が1万8000rpmなどと書かれていますが もし 航空エンジンもこの回転数を出したとしたら 単純計算で リッターあたり600馬力を出すことになりますね
     更に 大戦末期から出始めた ターボコンパウンドにすれば 出力が20〜30%アップかな

     あと 3リッターで1000馬力強というのは どのくらい出し続けることができるのでしょうか
     前述の3000rpmでリッター100馬力のエンジンは 15分連続で(この状態を)出し続けられます
    セミララ

  6. 3リッターで1000馬力強というのはF−1のエンジンを想定されてのことだと思いますが、あれは「300km走りきったら壊れる」ようにチューンされたエンジンです。
    それと、これを成し遂げるには、当時にはない「電子制御」と「エアバルブ」というものが不可欠ですね。
    それから、高回転を維持して飛んだら燃費がとても心配です。燃費を良くするために巡航時は低回転で飛んだとしたら、敵に遭遇したときに加速が全然効かず、あっという間に墜とされるって気がします。
    あと、当時の技術で可変バルブタイミングの制御ってどうやってやりますか?
    まあでも、こういうことを考えるのは楽しいですね(^o^)。
    胃袋3分の1

  7. >6
     高回転でも低ブーストなら馬力≒熱量≒消費量は小さくなりませんか?
     それはペラのピッチで調整できる事でしょう。
     でもって、飛行機のエンジンはそれほど回転数を変えませんから、可変バルブタイミングのような機構は要らないかと思います。


    SUDO

  8. 質問者です。いろいろなお意見ありがとうございます。

    >1 SUDOさん
    ハイオク燃料が大事なことはわかっていましたが、技術である程度までカバーできそうな気がしました。
    それがスキッシュエリアを設けたり、ノックセンサーをつけて点火時期を遅らせたりしてノッキング直前の最も効率のよい状態を使うという事です。
    また可変バルタイをつけて巡航、フルブーストを使い分ける。
    (プロペラ回転数はあまり変動しないでしょうけど、エンジン回転数はかなり変わるので可変バルタイは効果があると思います)
    これらを生かすためにもSOHCではなくDOHCだと思うのです。
    V型といったのもDOHCを無理なく使うためです。

    潤滑油の問題は気がつきませんでした。

    >2 ささきさん
    なるほどです。いろいろ問題がありそうですね。
    実際に試作されていたり、日産のエンジンでレーサーに使用されていたのですか。
    自分程度が思うことは、当時でも(レーサーは最近ですが)感じていたのですね。
    R&Rのエンジンは、まさに今のエンジンに当てはまる技術ですし、今回自分が投稿した内容に当てはまるものです。できなかったのはやはり当時の技術水準でしょうか?(電子や素材の技術?)

    >4 wittmannさん
    W型はよくわかりませんが
    >v型を2つ並列にならべてファイナルデフェンシャルで1つにまとめたような感じです
    ではなく、シリンダーを微妙にずらし距離を狭めた直列V型と呼ばれるものをV型にしたものではないですか?
    並列ではなくあくまでV型の派生と思います。

    >5 セミララさん
    スカイラインGT-Rの最高速仕様の車は、軒並み1000PSoverしています。(湾岸にはたくさんいます)それほど高回転なエンジンではないので1万回転以上はいかないと思います。ピーキーな代物で、信頼性は度外視したものです。

    >リッターあたりの馬力を増やす為には 行程(ストローク)を短くしなければな
    >りません とすると必然的にシリンダ径(ボア)も小さくしなければならず

    ストロークを減らしたら、ボアを大きくできるのではないですか?
    ただし、ノッキングが出やすいエンジンにはなりますけど。

    >6 胃袋3分の1さん

    >あと、当時の技術で可変バルブタイミングの制御ってどうやってやりますか?

    カムまわりはホンダVTECのような仕組みにする。(ロッカーアーム式。油圧制御)
    切り替えポイントは厳密には回転だけでは判断できませんが、回転計と高度計をアナログで感知し切り替える。
    無理でしょうか?


    長文大変失礼しました。(推敲してないので、変な文章があったら申し訳ないです)
    evo

  9. >8
     えっとですね、機械的にアンチノック性能を高める事は何処でも必死で工夫しています。その上で、あの程度のブースト圧が当時の技術的限界で、以上は燃料等で工夫するしかなかったのです。

     また真面目な話、飛行機のエンジンは回転数を大して変動させません。
     ブースト圧とプロペラピッチ(言うならば車で言うギア比に相当します)で推力を変更しているのであって、回転数はそれほど重要な要素ではないのです(少なくとも車の比ではない)

     私も車でヤンチャしたりモータースポーツを齧ったりしたので多少の事は判りますが、気分1000馬力のGTRの実測は、まあ、色々あるでしょうが、共通しているのは非常なハイブーストであるという事です。
     ご存知でしょうが、回転数Xトルクが馬力ですので、3000回転で既に高回転と言われる航空機用発動機とは回転数で2.5倍から3倍の乖離があります。
    (何故3000回転で高回転なのかはストローク量からピストン速度を計算して見て下さい)
     言い換えると、もし現在のハイパワーチューニングカーが3000回転しか回せないとしたら、2600ccのGTRは死ぬ気のカリカリで300馬力少々、つまりリッター100馬力ちょっとになります。
     トルクは燃焼させた燃料の量に概ね比例します(実際には回収率や摩擦冷却損失がありますので正確では有りませんが)つまり、100オクタン燃料を使って(言うまでも無いですが、今のレギュラーガソリンより当時の日本の燃料はオクタン価が低く、それを水メタノールで誤魔化して100相当にしてました)良く出来た設計のエンジンと良いオイルできっちり回し、信頼性や耐久性を無視した場合、概ねリッターあたり100馬力@3000回転が期待できると言うわけです。
     航空機用発動機は全開時間が15分程度、出来るなら30分必要ですが、知ってると思いますが、そこらの改造車で30分全力で走る事は先ず無理です。それこそル・マン24時間をこなせる程度の信頼性がそのエンジンには要求されるし、それは最低レベルの性能です。
     市販自動車で見れば判るように、通り一遍の整備で無茶な使い方をしても耐えられるようなエンジンは、3000回転換算ではリッター50馬力程度です。現在よりも素材を初めとした様々な物が低品質の時代では、このリッター50馬力@3000回転でも、それなりの整備や運用知識が必要になるのはご理解いただけるかと思います。
     ちなみに、誉エンジンは約36リッターで2000馬力3000回転ですので、リッター当たりで55馬力でした。

    SUDO

  10. 上に追加
     ああ、つまり、プロペラとエンジンの回転比率は基本的に固定されてますので、ペラ回転数が変らない場合、エンジンの回転数も変らないんです。
     回転数が変らないのに推力が変るのは、ペラのピッチと、エンジンのブースト圧が変るからなんです。(ピッチを立ててブーストを上げれば推力は上がり、そして回転数は変化しません)

    SUDO

  11.  >(プロペラ回転数はあまり変動しないでしょうけど、エンジン回転数はかなり変わるので可変バルタイは効果があると思います)

     航空エンジンは アイドリング1000rpm、全力で3000rpmとかいう風に あまり回転の幅がないように思えます
     そして 普通は 自動車と違い エンジンとプロペラの間には変速というものがありません

     >ピーキーな代物で、信頼性は度外視したものです。

     飛行機は エンジンが止まると墜落します

     >ストロークを減らしたら、ボアを大きくできるのではないですか?

     今 日産のWebサイトから スカイラインのエンジンスペックを見ましたが ストロークが73.3mmと書いてありました
     航空エンジンでは ボアが160mmというようなものもありますが ボアが160mmでストロークが73.3mmだとすると....大丈夫なのだろうか
     もともと ブーストがかなり高くなっており ノッキングしやすい状態です
     航空エンジンでは 第2時大戦末期で ブーストが 車流にいうと +2.Xkg/cuとかいうような状態です 湾岸にたくさんあるというGT-Rはどのくらいでしょうか(車には詳しくないので知らない)

     飛行機のエンジンは まず何よりも 安全確実に必要とされる出力を得られなければなりません
     スカイラインGT-RやF1のように瞬時でいいから....その場その場だけ力を発揮できれば良いから....というものではありません
     となると 必然的に排気量を大きくして エンジンに無理をさせない形にしなければなりません
     排気量を増やす方法の1つ シリンダー数を増やすという方法は 構造が複雑になる為 限度があります
     V型エンジンは12気筒が上限のようで V型16気筒というエンジンは成功しませんでした
     X型やH型、W型などの24気筒エンジンも 初期のものは成功せず 大戦後期になってからのものは ジェットエンジンの出現に伴い 開発が縮小して消滅しました
     星型(シリンダーが放射状に並ぶ)は18気筒が限界でした 28気筒のR-4360というエンジンは 例外的な成功例です
     このように シリンダーを増やすという手段に頼れない以上 シリンダーを大きくする方法に向かわなければなりません
     しかし ピストン速度に限界が存在する以上 ストロークを大きくすればするほど エンジンの回転数を下げざるを得ません
     ストロークが73.3mmで回転数が9000rpmと ストロークが220mmで回転数が3000rpmは 同じピストン速度になるのが お分かりいただけると思います
     ということで 自動車エンジンに比べればエンジン回転数が低いように感じますが これ以上 回転数を上げるのは不可能だということがわかります
     あと ブーストを上げるという方法ですが 前述の(車流に言うと)+2.いくつkg/cuというのが当時の限界でした
     これでも5分とか15分とか連続で出し続けられるので 瞬時だったらもっと行くかもしれませんが....

     あ〜〜 長々と書いていたらSUDOさんと重なっちゃった SUDOさん ごめんなさい
    セミララ

  12. >8. クレシーの経緯については「20世紀エンジン史」で触れられていますが、最も深刻な問題はピストンの熱負荷だったようです。著者の感想では「中空クーリング・チャネルなど最新技術を駆使してようやくクリアできるかどうか」という程厳しいものだったようです。熱負荷以外にも燃料噴射系の破損、異常燃焼、燃焼不良、回転変動、始動不良などトラブル山積だったそうです。
    ささき

  13. >ブースト
     空冷エンジンとしては高ブースト高回転と言われる誉 21 型で離昇 2900rpm/+400mm くらいです。航空用としてはかなりのハイチューンエンジンである液冷パッカード V-1650-7 マーリンで離昇 3000rpm/61in.Hg(789mm) で、緊急出力 67in.Hg(942mm)は 5 分限定、しかも使用後には分解点検が義務づけられています。
     IV-1430 ハイパーはたしか 4000rpm/80in.Hg(1270mm)を狙っていましたが、ベンチテストはともかく実機ではそんなに回せなかったようです(回すと壊れる)。
    ささき

  14. 普通乗用車のサイズと重量を想定すれば、100km/hの巡航に要する馬力は凡そ数十馬力、
    例えば200馬力のエンジンを積む車であるならば、巡航時には高々2〜30%程度の出力しか
    用いていないことになります。 量産車の例でいうならば、10万キロ以上の巡航耐久試験
    は行われても、エンジンの連続全開運転の試験ではせいぜい300時間程度ですよね。

    さて、航空機用ピストンエンジンの運用条件はどうでしょう。
    一例として今、手許にF6F用R2800エンジンのオペレーション・チャートがあったので引用してみます。

    Normal Cruise:最大時定格出力の60%、運用制限無し
     マニフォールド・プレッシャー(以下MPと略記)32inHg、エンジン回転数2200rpm

    Normal Rated Power:最大時定格出力の85%、運用制限無し
     MP 49.5inHg、エンジン回転数2550rpm

    Military Power:最大時定格出力の93%、30分制限
     MP 53inHg、エンジン回転数2700rpm 

    Combat Emergency Power:最大時定格出力の104%、5分制限
     MP 58inHg、エンジン回転数2700rpm

    Normal Rated Power(常用最大出力)の項目、「運用制限無し」とありますね。
    すなわち、85%出力での連続運転を許容しているのです。
    又、通常巡航でさえ60%出力の連続運転であり、このような条件は量産車はもちろん、
    レース用自動車エンジンが晒される条件に比してもかなり厳しいことが伺えます。

    (現用小型機用のピストンエンジンでは、定格出力100%での連続運転が許容
    されている場合が少なくありません。)

    又、駆動系にタイヤ・ディファレンシャル・変速機・クラッチ等、可動点を多く有する自動車エンジンに比して、
    航空機用ピストンエンジンのクランクシャフトは、プロペラの駆動反力を直接に近い形で受ける為、
    捻れ振動(Torsional Vibration)の影響を顕著に受ける、という問題もあります。

    こんなわけで、航空機用ピストンエンジンの運転条件というのは思いの他過酷なモノなのです。


    とはいえ、レースカー用エンジンを母体とした航空機用エンジンが無いわけではありません。
    1970年代に自動車レース(Can-Am Cup)用1200hpターボ加給エンジンを母体として開発を始められた
    V-8エンジン、カナダのOrendaがその例です。排気量8.1L、4400rpmで最大出力(自然給気600hp/ターボ加給750hp)
    を搾り出す、航空機用としてはかなり高回転型のエンジンですが、やはり耐久性の問題から開発はかなり難航し、
    1998年にようやく航空用エンジンとしての認証を取得しました。
    みなと

  15.  こちらで知っている高ブーストといえば....

     イギリスのRolls Royce Merlinの試作型 RM 17.5 SMが 15分制限の出力で 2620hp@+31psi(回転数不明)を達成しています(1944年12月)
     これは日本機流にすると+1604mm アメリカ機流にすると93.0in イギリス機流にすると31psi ドイツ機流にすると3.11ata 車流にすると+2.18kg/cu=+0.214MPa

     アメリカのAlison V-1710-127は War Emergency(5分制限)で3090hp@3200rpm@100inです
     これは日本機流にすると+1780mm アメリカ機流にすると100in イギリス機流にすると34.4psi ドイツ機流にすると3.34ata 車流にすると+2.42kg/cu=+0.237MPa

     う〜〜ん すごい
    セミララ

  16. またまた貴重なご意見ありがとうございました。質問者です。

    私は誤解をしていた部分がありました。

    発動機-変速機-プロペラ

    となっているものと思っていました。
    皆様のご意見を読むと、ほぼ直結と言うことなので私の高回転エンジン案は意味ないですね。変速機があってこその考えでした。

    しかし、なぜ直結なんでしょう。変速機を使う事は出来ないのでしょうか?
    ・クラッチ機構が必要になる。
    ・大馬力に対応するクラッチがない。
    などでしょうか?
    2〜3段の変速機(減速機?)の実現は出来なかったのでしょうか?


    >湾岸にたくさんあるというGT-Rはどのくらいでしょうか
    それほど詳しくないので予想ですが、1.5〜1.7kg/cu程度と思います。
    0-400専門にチューンしたものは2kを超えるのもありそうですけど、これは数十秒持てばよい。といった性格のものと思います。それにしても2.xとはすごいハイブースト。

    航空機エンジンは信頼性・耐久性などを考えると車のエンジンとは別物だということが良くわかりました。
    evo

  17. >16
     車の変速は、タイヤの回転数と駆動力をコンバートするために存在します。
     同様に飛行機では、これをプロペラピッチの変換で行います。ピッチを立てれば負荷が増えて、変りに回転当たりの推進力が増えます。(馬力のあるエンジンなら負荷が増えても回転数は維持できます)
     これらを調速装置で調整してます。操縦席でスロットルを開くとブーストと回転数が上がり、それを察知した調速装置が回転数が一定範囲になるようにピッチを立てるのです。言うならば無段(多段)変速のオートマチックになってる訳です。
    SUDO

  18.  >発動機-変速機-プロペラ

     ある程度以上の馬力のエンジンになると プロペラの回転数が クランクシャフトの回転数の0.3〜0.7倍くらいになるように減速するため 通常 発動機-減速機-プロペラ という具合になります
     小さいエンジンでは 直結もあります(増速はあるのか? 聞いたことないけど)

     >2〜3段の変速機(減速機?)の実現は出来なかったのでしょうか?

     航空エンジンの中で ごく一部は 2段階に減速比を変えられるようになっています
     例えば Pratt & WhitneyのR-4360-12(Wasp Major VSSB11-G2D)は 減速比が0.5と0.39の2段階に変えられます
     減速比が0.5というのは プロペラがクランクシャフトの半分(0.5倍)の回転数で回るということです
     因みに このエンジンの最大回転数は2700rpmです

     話は変わりますが 飛行機での出力の調整は 10番、17番でSUDOさんが書かれているとおりです
     自動車では アクセルペダルをぐいぐい踏んで空吹かしをした場合 ブーストメーターの針が動かずに タコメーターの針だけ動くそうですが 飛行機の場合は スロットルレバーを動かすと タコメーターの針が動かずに ブーストメーターとプロペラピッチメーター、トルクメーターの針が動きます(コンスタントスピードプロペラ装備の飛行機の場合)

     (次にネットにアクセスできるのは火曜日になります それまで残っているといいなぁ)
    セミララ

  19. 質問者です。(しつこくてすみません)

    >>17 SUDOさん
    航空機は可変ピッチが変速機の代わりになる。ということはわかりました。
    しかし、私が16で言いたかったのは、プロペラとほぼ直結という概念を払拭できないのかな?ということです。
    「直結だから回転をあげる必要がない。」ではなく、変速機(減速機)をかますことによって小排気量・高回転からの力を変速機があれば有効に使えませんか?
    1、大排気量・低回転-ほぼ直結-可変ピッチプロペラ
    2、小排気量・高回転-減速機-可変ピッチプロペラ

    2は1に比べボア・ストロークともにはるかに小さくて済みますよね
    2を採用できない理由があるのでしょうか?(信頼性はあえて抜きにしてください。最初の投稿に局戦を出したのも信頼性の問題があるからなんです)

    これまでの皆様の意見で、航空と自動車のエンジンの違いは、ほぼ理解できたのですが、あえて最初の思いに戻って投稿します。(SUDOさんの投稿で、当時でも今の技術とほぼ変わらない理論が確立していたことも理解しています)
    evo

  20.  遅ればせながら素人が。

    >減速機
     減速機を付けるとその分重くなります。部品を作りラインで付ける手間も時間も工賃もかかります。
    どちらを選ぶかは設計者次第ですがとりあえずこの事は頭に入れておいて頂けると嬉しいです。

    >エンジン
     小排気量高回転で大出力を得ようとするとピストンスピードが上がるのは上で説明された通りです。
    もうひとつネックになると思われるのが潤滑です。
     エンジンは金属で出来ていますから動かして熱を持つと膨張します。ピストンとシリンダーの
    材質が同じであれば熱膨張率も同じですが、実際には形状や温度に相違が生じるため熱膨張量の
    絶対値は等しくなりません(大抵ピストンのほうが膨張量が大きい)。
     無視した結果どうなるか。齧ってブローです。

     その辺りも見越して設計すればいいのですが、当時の技術ではそこまで出来なかったのでしょう。
    機械加工学の教科書を何冊か当たればここ100年の加工精度の進歩のグラフが載っていると思います。
    手元にないので具体的な数値は書けませんが…。


     あと、当時の車のスペックなども調べてみると良いかと思います。
    当時の航空機用エンジンと自動車用エンジンは、個人的には現代の市販車とGTカー程度には
    違うと思ってますが、理解の一助にはなると思われます。

     参考
     LANCIA アウレリアB10(1951発売)
     エンジン      B24 V型6気筒SOHC
     ボア×ストローク  φ78×85.5mm
     総排気量      2451cc
     燃料供給      キャブ
     圧縮比       8:1
     パワー       110bhp/5000rpm
     トルク       17.2kg−m/3500rpm
    ”&”

  21.  外出先から 他人のパソコンとネット接続を借りてお邪魔します

     >しかし、私が16で言いたかったのは、プロペラとほぼ直結という概念を払拭できないのかな?ということです。
     >「直結だから回転をあげる必要がない。」ではなく、変速機(減速機)をかますことによって小排気量・高回転からの力を変速機があれば有効に使えませんか?

     エンジンの多気筒化が困難であり ブーストももはや限界にきている以上 小排気量,高回転型エンジンは 容積,重量あたりの馬力では有利なのですが 絶対的な馬力が足りないのです
     そのため 必要とされる大馬力を満たすために大排気量エンジンになるのです
     大排気量エンジンはつまり ストロークも大きいという事ですから 回転数を落とさなくてはなりません
     4サイクルの爆発(燃焼)行程において その燃焼速度が決まっている以上 つまりピストンの速度に制限がある以上 ストロークを倍にしたら回転数を半分にしなければならないことはお分かりいただけると思います
     飛行機のエンジンは 自動車エンジンしか知らない目から見れば非常に低回転だと思いますが ピストン速度という面から見れば別に自動車エンジンに比べ遅いということはないと思います
     evoさんの「航空エンジンは自動車エンジンに比べ 回転数が低くて排気量当たりの馬力が小さい なんて非効率なんだろうか」という疑問は バイクのエンジンしか知らない目から見た「自動車エンジンはバイクのエンジンに比べ 回転数が低くて排気量当たりの馬力が小さい  なんて非効率なんだろうか」というものと同じように思います
     evoさんは バイクのエンジンの事は知っているけど 自動車エンジンのことを知らない者から「自動者エンジンは バイクのエンジンに対して回転数が低くて 排気量当たりの馬力が小さいけど 何で回転数をバイク並(1万数千〜2万数千rpm)に上げないの? 上げればもっと馬力が出るのに」と聞かれたらどうするのですか?

     19番 evo さんの疑問に答えられているか怪しい....

    セミララ

  22. >19
     なんか勝手に誤解が進んでるようですが。

     10で記したんですがね。
      ↓
    > ああ、つまり、プロペラとエンジンの回転比率は基本的に固定されてますので、ペラ回転数が変らない場合、エンジンの回転数も変らないんです。

     お分かりでしょうか?
     『回転比が固定』であって、直結ではありません。勿論直結のエンジンもありますが、大概のエンジンは適当に減速しています。
     よって、回転数を高めた発動機も当然ですが成立します。単に他の皆さんが述べられてるように、ピストン速度の都合上3000回転程度でもう非常に厳しいだけでして、4000回るエンジンがあるなら4000回すでしょうし、減速歯車のギア比の設定次第で適正なプロペラ回転数(ペラ回転数は先端が音速を超えないようにする必要があります)を作る事は可能ですし、そうしています。
     車で言うならファイナルのギヤみたいなもので、普通の車ではファイナルギヤを変速させないように、飛行機の場合も減速ギヤで変速することは普通はありません。
     そして自動車がタイヤサイズや運用条件によって、つまりモデルによって最終減速比を変える事があるように、航空機もプロペラサイズや機体特性によって減速比を選ぶ事があります。

     例えば零戦の栄エンジンは0.68〜0.58程度の減速比です。これにペラの直径とエンジンの回転数を考えれば、ペラがどの程度の速度になるかが想像つきますね。
     栄21型は離昇2750回転ですから、減速比0.58でペラ軸は約1600回転します。栄21型を搭載する零戦32型のペラ直径は3.05mですから、毎分1600回転すると、ペラ先端の速度は秒速約255m、時速にして約920km/hとなります。
     栄12型は離昇2550回転、減速比0.68、ペラ直径はこのエンジンを使う零戦21型で2.90m、軸回転は約1750回転、ペラ先端は秒速265m、時速956kmぐらいとなります。飛行機は前方に向かって高速で飛ぶので、ペラ先端の速度は期待の移動量も加味しないといけませんし、音速は条件によって変化します。よって、まあ、このあたりの速度で止めておかないと色々危険です。
     さて、では、ペラ直径3m程度であれば、軸回転が1700前後であることが上限である事はお判りになったでしょうか。よって、もし1000馬力5000回転のエンジンがあるならば、そのエンジンとプロペラの組み合わせに適正な減速比は約0.34ぐらいとなり、それに合わせた減速ギヤを組み込めば、それで済む話ですし、実際にそうしています。

     回転数を上げる必要が無いのではなくて、ピストン速度の上限から、上げられないのです。回転数が高いエンジンの場合は大きい減速比を採用しています。
    SUDO

  23.  で、もしかして気がついてないかもしれないので、簡単に言っておきます。
     ピストン速度の上限いっぱいでエンジンを作った場合、ストローク量と回転数は反比例します。またボアサイズにも事実上の上限があります。
     これらから判る事は、限度いっぱいのボアサイズで50mmと200mmのストロークのシリンダーは排気量では4倍になりますが、ピストン速度だけで言うなら50mmの方は200mmの4倍回せます。つまり、単位時間当たりの吸気量は同じになります。
     つまりボアサイズでシリンダーあたりの単位時間当たり吸気量は概ね定まってきます。そして「時間あたりの吸気量」≒燃焼するガソリンの量≒「馬力」になるので、ボアサイズからシリンダーが搾り出せる馬力の上限が定まります。
     実際には、単位時間あたりのシリンダー容積でしかないので、ブースト圧も加味しないと吸気量≒馬力にはなりませんが、ボアサイズから潜在的なシリンダーあたりの発生熱量が決まってくる傾向があるのがご理解いただけるかと思います。

     これに加えて、大きいパーツは回転数を上げにくいとか、高回転にすると空気の粘性等から充填効率が稼ぎにくいとか、摩擦損失や冷却損失は高回転のほうが深刻であるとかの問題が入ります(ご存知でしょうが、この二つによる損失が無かったら馬力は倍以上になるかもしれません)
     そういった様々な要素要因から、ある性能を出すエンジンに与えるべきスペックの最適解が求められてきます。
     優れた設計の吸排気レイアウトや燃焼室形状、高回転・高ブーストに耐えるピストンといった手当ても性能は変りますが、基本的にはボアサイズによる潜在的限界性能の上限にどれだけ近づく事が出来るかという工夫であるとも言えるでしょう。
     単純に同じ程度の技術を使った場合、ボアが同じでストロークを減らして高回転化させた場合、回転数が上がってトルクが同じだけ減って、馬力は多分変りません。勿論、設計の工夫で上げる事も出来るでしょうし、反対に下がるかも知れません。ですが、実態としてそれは最終的な馬力にして、1割か2割も変らないでしょう(まあその1割の馬力強化に四苦八苦してるのが実情ですが)そして、1割アップを果たすなら、燃料を工夫してブーストを上げた方がお手軽ですよね?高回転に適した素材やシリンダーを新たに開発してってやったら何年もかかります(勿論それもやっていた訳ですが)既存のシリンダーやブロックをベースに何とかしようとしても、大して変らないし利点はないのです。
     それこそ局地戦闘機なんだから無茶を許容してもというなら、既存のエンジンの運転制限を緩和すればいいのです。やる気になったら例えば雷電の火星エンジンは2000馬力ぐらいまで出ちゃいますよ(壊れますが)数多くの戦闘機用エンジンは、そういういざという時には定格無視の5分制限とかの緊急ブーストでパワーを出せるのです。そして、高回転化改造をするのもこれと結果は同じなのです。だったら量産エンジンにブーストアップ(そこらの車でやってることですね)をするだけで十分なのです。
     高回転を前提としたエンジン設計は比較的小さいシリンダー(つまり多少軽い)で大きな馬力を出せるので、勿論航空機用としては非常魅力的ですが、それを可能とするだけの各種技術的な問題を解決するにはハードルが大きく、開発費もかかり、それを局地戦闘機のようなごく一部の機材にだけ費やすのは勿体無いのです。となるとその技術で達成された新型高回転発動機は主力航空機に搭載されるべきになり、それには高い信頼性も要求される訳です(局地戦闘機には、その高信頼性エンジンに緊急ブーストを与えればよいでしょう)
     第二次大戦では実に多くの発動機が戦場に登場しましたが、実はシリンダーで見た場合、種類はかなり少なくなる事にも注意して下さい。ピストンや燃焼室といったモノを設計開発して実用化するには非常に多くの時間と手間がかかり、中々その限界を打ち破る事も出来ないのです。

     勿論、こうした発想は非常に面白いのですが、出来るなら、当時世界にあった主要航空機の使用やスペックを睨んで見て下さい。電卓片手に考えてみれば、早々上手く行くものではないと判るでしょう。そしてそれが何故そうだったのか、そこまで考えれば、その時それぞれの国や会社に何が足りなかったのかも判るでしょう。
     焦って答えを求める必要はありません。幸い内燃機関に関しては国内にも幾つもの書籍がありますし、技術者の層も厚いのですから調べて考えて勉強する事は容易です。少しずつ覚えて考えて膨らませていってください。

     っていうか、良い案だと思うんですよ。私も栄の3000回転チャレンジをして欲しかったなぁとか思うし(笑)
    SUDO

  24. 質問者です。本当にありがとうございました。

    レシプロエンジンの構造に興味がありまして、車のエンジン解説本を読んでいたとき、ふと航空機エンジンに使えそうだな。と思ったのが今回の質問のきっかけでした。車のエンジンは検索エンジンで割と簡単に出てきますが、航空エンジンについて詳しいHPは少なく概略を説明しているものがほとんどです。(自分が発見できないだけかも(^^; )どうしても知りたかったのでこの掲示板で質問をしました。

    皆様のレスによってたくさんの発見がありました。
    思い切って質問してよかったです。
    かなりスレッドが長くなったので、この後の疑問は自分で勉強します。
    どうもありがとうございました。
    evo


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