QQCCMMVVGGTT
3110 過給圧と馬力の関係について教えてください
過給圧が上昇すると馬力も増大するわけですが(デトネーションが発生しないとして)この二つの関係を表す数式ってないですか。
例えば過給圧が二倍になれば馬力は何割増しとか。
大体の目安でもわかればいいのですが。
それとも、エンジンによってバラバラなのですか?

上保

  1.  過給圧は表示方法が幾つもありますので、基準が違うと話が無茶苦茶になるので気をつけてください。
     大戦時の日本機では+何ミリという表記ですが、これは水銀柱のあれでして、一気圧を基準値として(ゼロミリ)+何ミリとしてます。
     つまり+300のブーストとは、一気圧(760mm)に300加えた圧になります(約1.4気圧)
     また、ガソリンエンジンは最適な混合気比率が存在します(空燃比)ので、吸い込んだ空気の量に比例したガソリンが消費されると言うのが基本になります。
     つまり、概ねですが、吸気空気量≒酸素量≒ガソリン量≒トルク(無茶苦茶乱暴ですがな)となります。回転数が同じだったら、トルクx回転数が馬力ですから、吸気量に比例して馬力は出ると思って結構です。
     勿論、高過給圧ですと吸入空気はより高温になりますので、容積あたりの空気密度(酸素の量も)少なくなりますし、緊急ブースト使用時には効率低下を無視してガソリンを無茶苦茶叩き込んだりもしますので、必ずしも吸気空気量に比例する訳でもないですし、緊急出力時には回転数も上げる事がありますし(当然馬力も増える)燃焼エネルギーをトルクへ変換する能力はストローク量で概ね定まりますので、燃料を一杯燃やしても馬力への変換率は下がります。また、機械式過給器は過給圧を作るのに馬力を使いますので、過給圧が上がると過給器が食う馬力も増えます。
     まあ、以上はエンジンの設計やセッティングでも変わりますので、何とも言えませんが、吸気量が倍になったら、まあ1.5〜1.8倍ぐらいの馬力になると言えます。あとは各国のエンジンの過給圧が、通常の大気圧の何倍を表す単位なのか換算すれば良いかと・・・。
    SUDO

  2. 問題は過給圧を向上することに費やされる出力の損失が大きく、さらにこれは外気圧(すなわち高度)によって変動することです。より高空では、同じブースト圧を得るための損失はより大となります。


  3. 回答ありがとうございます。
    追加質問なんですが、ターボの場合高度が上がるにつれ排気圧との圧力差が大きくなるため効率が良くなると聞いたことがあります。

    理屈はわかるのですが、そんなにうまくいくのですか?
    ターボがぶっ壊れるとか・・・・
    上保

  4. >3. ターボには「ガバナー」と呼ばれる回転数安定装置があり、過回転になる前に「ウェスト・ゲート」と呼ばれるバイパス弁を開いて排気を放出する仕掛けになっています。
    ささき

  5. >例えば過給圧が二倍になれば馬力は何割増しとか
     手元にプラット&ホィットニー R-985 ワスプ(空冷星型 9 気筒、圧縮比 6:1、一段一速過給ギヤ比 1:10)の過給圧(Absolute manifold pressure)と出力(Break power)のグラフがありますが、見たところ正比例しています。2200rpm で 20inHg(アメリカ式表記、日本式だと -252mm / あるいは 0.7Kg/cm^2)のとき 240hp、38inHg(+205mm / 1.3Kg/cm^2)のとき 660hp と読めます。このエンジンの場合 1inHg あたり 23.3hp が出る計算になります。

     エンジンが出力を発生しているとき(シリンダ内でガスが燃焼している時)の圧力の平均を「平均有効圧力」、BMEP と呼びます。エンジンの出力は概略で

    hp = (ci x rpm x BMEP) / 792000

    で算出できるそうです。ci はエンジン排気量(立方インチ)、rpm は回転数(回転毎分)で、前述の R-985 ワスプでは BMEP=241.2(ポンド/平方インチ) と算出できます(単位系がアメリカ式になっているのは米国の書籍を参考にしている為です^^;)。

     平均有効圧力は過給圧にほぼ比例しますが、その度合いはエンジンによって異なります。吸排気抵抗が少なく燃焼効率の良いエンジンほど良い値になることは直感的にご理解頂けるでしょう。

    ささき

  6. 具体的かつ詳細な説明ありがとうございます。
    それでは早速ハ43とハ45をチューンナップしてきます。
    上保

  7. >5
     あー、大抵の場合、kg/cm^2で表記する場合でも一気圧以上のオーバー分しか書きませんよ(だから上記表記の0.7kg/cm^2はミリバールで書きます。また1.3kg/cm^2は+0.3kg/cm^2とするべきかと)
     つまり、日本では絶対吸気圧力では表記してないのです。

     でもって、平均有効圧力は吸気圧には比例しません。正確には比例できない性格のものです。
     有効圧力は、上死点の最大圧から、ストロークに従って低下し、下死点がもっとも低くなるのですが、排気タービン過給器が成立する事からもわかるように、まだ燃焼ガスの膨張エネルギーは大量に残っています。
     燃焼エネルギーをピストンのストロークだけでは回収しきれず、吸気圧(つまり燃焼量)が増えるほど、下死点での膨張エネルギー残量は増大し、これは吸気量には比例しません(もっと沢山残ってしまいます)
     そしてこの残ったエネルギーは下死点を越えて上昇する(排気行程)ピストンの邪魔をします(勿論排気バルブや排気管の能力で多少は補えますが)これも平均有効圧力を低下させますし、これも吸気圧が大きいほど増大します。
     つまり平均有効圧力は、決して吸気圧には比例しません。
     上で書いたように、吸気圧が倍になったら、馬力は1.5〜1.8倍になるというのは、そういう事です。
     ささきさんが上げられた事例では、負圧状態と低い正圧との比較ですので、エンジンのストロークに余裕があるので、平均有効圧力は正比例しているように見えるだけです。そのエンジンで、例えば70inHgにしても馬力は決して1630馬力には届きません。ずっと低い数値になるでしょう。

     また過給器駆動損失も比例せずに更に増大します。
     これも過給器の特性上当然の事で、一定範囲を越えると、急速に効率は悪化します。
    SUDO


Back