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3197 続けて申し訳ありません。
尾輪式の飛行機は、前輪式の飛行機に比べて離陸性能が悪い、と言うような事を聞きましたが、どのような意味でしょうか。
御願いします。
英里

  1. 尾輪式は前輪式にくらべ、地上での扱い(離着陸滑走を含む)が難しいことは確かです。

    1) (単発機の場合)前が見えにくい
     地上では機首上げ姿勢になるので視界が悪いです。直径の大きな空冷エンジンはもちろん、液冷でも長い機種が目の前に立ちふさがるので直前方は見えません。尾輪式機は視界確保のため、ジグザグに蛇行しながらタキシングするのが習わしになっています。
     前輪式では何も考えずに直進できます。

    2) ブレーキをかけずらい
     プラモにすると尾輪式は安定しているように思えますが、実機は機首先端に全備重量の数十%を占めるエンジンが鎮座しているため、重心位置は主輪のすぐ後方にあります。つまり尾輪式は僅かな重量差で辛うじて尻を付いているヤジロベイであり、高速タキシング中何かに躓いたり、強いブレーキを使うと頭を突っ込んで逆立ち(いわゆる逆トンボ)することを意味しています。
     前輪式では一杯にブレーキをかけても前脚がふんばってくれるので、プロペラが滑走路を齧る心配がありません。

    3) 直進性が悪い
     尾輪式の機体はつまり三輪車を前後ひっくり返して押している状態であり、非常に直進性が悪く、一端曲がり始めるとそちらの方へどんどん曲がってゆく特性があります。離陸開始直後はプロペラトルクの影響で特に強い偏向癖が出るので、反対側のラダーを一杯に使って補正しなければなりません。補正が足りなかったり、逆に補正が過ぎた場合は自動車で言うスピンに近い状態「グラウンド・ループ」に入り、これに 2) の特性が合わさって引っくり返ったりします。前輪式は三輪車と同じですから、極めて安定しています。

    4) 離陸操作が難しい
     尾輪式の機体は尾輪を地面に付けた状態で離陸滑走を開始しますが、このままでは抵抗が大きすぎてなかなか離陸速度に達しないので、どこかで尻を持ち上げてやらなければなりません。皮肉なことに、2) で説明した「ひっくり返りやすい機体」ほどこの操作は容易で、逆に主輪が重心前方にあり過ぎる機体はなかなか尻が上がってくれず、操縦桿を一杯前に押し込んだり、極端な場合は軽いブレーキをかけてわざと「つんのめらせる」必要があることがあります。
     前輪式の機体はそのままの姿勢で滑走を開始し、速度が付いたら操縦桿を引き、機体が浮かぶのを待つだけです。

    5) 着陸操作が難しい
     尾輪式の場合は水平姿勢で主輪を接地させ、機速を落としてから尾輪を付ける着陸方法と(「ホイール・ランディング」)、空中で機首上げ姿勢を作って3輪同時に降ろす着陸方法(「三点着陸」)があります。前者のほうが簡単ですが、進入速度が高いため着陸距離が伸びる(滑走路が長くなければ使えない)欠点があります。後者は特に空母着艦には必須の技術ですが習得が難しく、もし降下率/姿勢過大で尾輪から先に接地すると跳ねて引っくり返ったり、胴体が折れたりの大事故になります。
     前輪式の機体は余程変な姿勢で着陸しない限り、常に主輪から先に接地してくれます。
    ささき

  2. 離陸性能を、「離陸に要する距離」の長短と解釈するならば、一般に尾輪式の(プロペラ小型)飛行機は、特に不整地・草地での運用を考えた場合、前輪式に比べてむしろ優れた特徴を有しています。 それらを思い付くままに列挙すれば、

    1. 離陸滑走時、主輪にかかる重量及び転がり抵抗が小さい
    不整地での転がり抵抗を軽減する為、前輪式は、出来るだけ速くテールを下げ(下向きの揚力)て前輪を持ち上げ滑走しますが、主翼が発生する揚力から尾翼の揚力が減殺される為、特に滑走初期、主輪にかかる重量が大きく、従って転がり抵抗の増大から滑走距離が伸びる傾向があります。 対して尾翼式は、尾輪を持ち上げた際機体に作用する揚力は主翼+尾翼ですから、この点有利になります。

    2. ホイールベースが前輪式に対し長く、主輪のみでの滑走に移行する前の滑走最初期に於ける迎え角の変動が少ない
    不整地・草地では、ホイールが地形に追従することによる迎え角の不規則な変化が、抵抗を増し滑走距離を増大させる一因となります。 前輪式はレイアウト上ホイールベースが短く、僅かな地形の変化を増幅する格好で迎え角を変化させてしまうのです。(これも、前輪式で不整地・草地から離陸滑走する際、前輪をあらかじめ持ち上げることが推奨されている理由の一つです。)

    これらの理由から、今日でも不整地で運用される機体の多くは尾輪式です。
    尚、前輪式に対し尾輪式が離陸滑走を行う上で不利な点として、滑走開始時の推力線の傾斜を挙げることが出来ますが、特に小型機では滑走の比較的初期に尾輪を持ち上げることが出来る為、それほど大きな差異とはならないことでしょう。

    操作の難しさは、ささきさんの仰る通りですね。でも面白いですよ。

    みなと

  3. お手数をおかけしました。ありがとうございます。
    質問者
    英里


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