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3412 “奇形機”を定義づけることは可能でしょうか。
また“傑作奇形機”などというものがあったら、それはどんな機体なのか教えてください。
みなさまよろしくお願いいたします。
セミ号

  1. >“奇形機”を定義づけることは可能でしょうか。
     岩波国語辞典によれば「奇形」とは「生物体において、多くは先天的に、一般とは異なる形態を示すもの。」とされています。生物ではない飛行機について「奇形」という言葉を適用することはできそうにないですね ;-)

     というツッコミは置いといて(「異形」とか「ヘン」とか言い方は幾らでもあるでしょう)「一般とは異なる形態を示す」という一文にこだわったとしても、はたして機械において「一般」という言葉が適用できるものでしょうか?
     1917 年に登場した全金属単葉機ユンカース D.1 は当時もっとも「ヘンな飛行機」の一種でしたが、今から見るとちっともヘンではなく、逆に 1979 年に登場した PZL.M-15 ジェット複葉機を「ヘン」だと思います。

     何が普通で何がヘンかなんて、結局は個人の価値観に過ぎないのではないでしょうか。
    ささき

  2. 「ヘンに見える」といっても、設計者はちゃんと考えて作っているわけですから、それなりに説明は可能なわけです。たとえば、以下のようなパターンが考えられます。

    1)ある機能に特化する
     ・登載量・容積の増加…ブレゲー・サハラ、ダグラスC-124、エアバスA300-600ST等
     ・STOLのための脚・エンジン・翼の大型化…アントノフAn-32、PZLヴィルガ、Fi156等
     ・ステルス性のための反射局限化…ロッキードF-117等
     ・燃料代・環境負荷低減…PZL.M-15、Tu-155等
     ・視界向上…オプティカ、シーバード等
     ・高々度巡航性能…ロッキードU-2、プロテウス等
     ・大上昇力…SR53、カーチスライトCW-12、グラマンF5F等
     ・武装一点豪華主義…Ju87G、ARES(マッドファイター)等

    2)革新的だが未熟な技術の採用
     ・ジェット吸排気の効率確保…DHヴァンパイア、Ta-183等
     ・アルミ合金板の強度確保…ユンカース等波板使用機

    3)在来機への新技術・新用途の適用
     ・エンジン換装…DHC-3ターボオター、Yak-15、コンロイ・ターボスリー等
     ・機内容積増加による旅客機転用…ボーイング・ストラトクルーザー等
     ・複座練習機化…TA-4S、Yak-38U等

    4)技術革新あるいは新技術の実験
     ・大仰角特性・超音速巡航性能の改善…サーブJ35、ノースロップP.530等
     ・CCV化等制御技術の向上…T-2CCV、X-36等
     ・高速向け空力形態…コンヴェアXF-92、Me163等

    5)改良の限界
     シーファイアMk.47、ミコヤンMiG-19PFM、FiSK199、Me209V4等

    1)は当初の目標設定が正しく、他の性能がひどく犠牲になってさえいなければ傑作機になるわけで、真似や後継機が存在して一群をなすこともあります。
    2)は一時的なもので終わってしまうのですが、「いちはやく新技術を取り入れて実績を上げた」となれば傑作機でしょう。
    3)は「悪あがき」とか「バカ改造」といわれがちですが、開発経費の安さや運用の共通性といった面で歓迎されるものが多いのも事実です。
    4)は2)に似ますが、後に主流となる技術がこの群から出るという点で分けました。
    5)は後継機の開発が遅れたとか、当初想定してなかった用法や装備品が出てきたとかいうときに出現しますが、出来不出来に関わらずベース機さえ名機なら後世のマニアに笑って許してもらえたりしますね。
    Schump

  3. >ささき様>Schump様
    早速の回答、ありがとうございました。
    奇形機といったらブローム・ウント・フォス(でいいのかな?)の非対称形のものあたりでとりあえずの合意があるのかと思っておりました。しかしお二方のお話を伺ってそんなヌルい話ではないことが良くわかりました。
    セミ号

  4. チャチャですが、

    6)かわいいやつ
    Vought XF5U "Flying Pancake"

    を付け加えてあげたい。本当は4の分類でしょうが。
    ごん

  5. 特殊形状機で必ず話題に上がる「ブローム・ウント・フォスBv141」ですが、
    これも理論的にはある意味普通のプロペラ単発機より正常な形状の機体と言えるのです。
    すなわち片方向に回転する大馬力・大トクルのエンジンに対し、そのトルクと釣り合いが取れるように、多くの力がかかる方により多くのウェイトをかけているだけで、下手な大トルク単発機よりかえって安定していたとも言える代物です。
    まっとうな単発機でも微妙に左右非対称なものもありますし、机上の空論で無い限り簡単に「変」とは言えないのです。

    変と言ってしまえば、ジャイロ効果で妙な動きをするロータリーエンジン搭載機のほうがよほど変かもしれません。
    だーくまたー

  6. >ごん様>だーくまたー様
    ありがとうございます。
    どうやら奇形機という概念は私の妄想だったようです。
    どこでそんな概念を刷り込まれたんだろう??

    セミ号

  7.  「その時代の航空機設計の標準的な文法から大幅に乖離した航空機」を「奇形機」というのが普通の定義でしょうが、どうもそれだけでは「奇形機」と呼ばれないような気がします。
     たとえば、双発・一人乗り・ターボスーパーチャージャー装備の双胴戦闘機P-38や、ミドシップエンジン・前輪式降着装置の戦闘機P-38など、上記の定義に従えば、充分奇形機と呼ばれる資格はあると思うのですが、どちらも1万機前後つくられているので、めったに奇形機呼ばわりされません。つまり「奇形機」と呼ばれるためには、形態の独自性に加えて希少性もまた必要なようです。
     そうすると、性能も高く活躍もしたという本来の「傑作機」と、奇妙な設計で大した数作られなかった「奇形機」という概念は矛盾します。あるのは「傑作奇形機」ではなく「悲運の名奇形機」でしょう。
    カンタニャック

  8. >カンタニャック様
    ありがとうございます。そんなにいろんな機が奇形機と呼ばれる可能性があるとは思ってもみませんでした(2機目はP-39ですか)。やはり奇形機か否かの判定はささき様がおっしゃるように個人の価値観に帰結するものなのですね。まず「あなたにとっての奇形機は?」という問いかけにすべきだったのかも。不明を反省いたします。
    ところで「悲運の名奇形機」の“名”は“歴史に名を残した”ということであって、良く飛ぶという意味ではありませんよね?念為。
    セミ号


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