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1405 ロンドン条約において、一万トン以下の空母と航空巡洋艦(航空機発着設備を設けた巡洋艦)の境目はどこにあるのでしょうか?
井中かえる

  1. 航空巡洋艦といえばアメリカが検討した、艦体の前半に6インチ三連装砲塔を三基、後半に飛行甲板を設けたものがよく知られています(場合A)。このような艦は巡洋艦の枠内に入れていいとして、場合B・更に砲塔の上にまで飛行甲板をのばして全通させる(蒼龍原案のようなもの)、場合C・首尾線配置の砲塔をやめて砲を舷側配置にする(グラーフ・ツェッペリンか鳳翔のようなもの)、場合D・更に5インチを超える砲を装備しない(普通の空母)、といくつかの段階が考えられますが、どこまで巡洋艦枠で建造可能でしょうか? 龍驤を巡洋艦枠に入れることができていたなら、蒼龍・飛龍を一万四千トンで計画(建造してみると二万トン前後?)することが可能になりその後の展開が多少は面白いことになったのでは、と思ったので。自分で考えてみると、巡洋艦の定義は砲が5インチを超えるか「または」基準排水量が駆逐艦との区分(数字失念)を超えるかなので砲の有無は基本的に関係なし。問題は「特に且専ら航空機を搭載する目的を持って設計された」軍艦(ワシントン条約における空母の定義)とは何か、というのが要だと思います。
    井中かえる

  2.  A以外は全てロンドン条約の空母規定に抵触するので、実現の見込みはありません。

     巡洋艦枠の総排水量25%を超えない範囲で着陸用の甲板を備えた艦を建造できる、とは条約で
    規定されていますが、航空機を搭載・発着艦させる事に特化して設計された航空機を発着艦させる事が
    可能な軍艦は空母として取り扱う、と同条約の空母規定で書かれていたはずです。
    大塚好古

  3. >2
     第一部第三条のことですね。長くなりますが肝心の部分なので全文引用します(「昭和ニュース事典」より、この本で私は条約の正文を見つけました)。

     ワシントン条約の目的のため、同条約第二章第四節中に与へられたる航空母艦の定義はこゝに以下の定義と変更す「航空母艦」なる用語は、その排水トンの如何に拘らず特にかつ専ら航空機を積載する目的をもつて設計し、かつ航空機がその艦上より出発し並にその艦上に到着し得べき構造を有するすべての戦闘用水上艦を包含す、主力艦、巡洋艦又は駆逐艦に着艦用又は出発用の滑走台又は甲板を装置するともこの種の軍艦が専ら航空母艦として設計せられ又は改装せられたるものに非る限り、かく装置せられたる軍艦が航空母艦の艦種中に加算され又は分類さるゝ原因とならざるべし、現存主力艦は着艦用滑走台又は甲板を装置することを得ず

     上の文章では、「特にかつ専ら航空機を積載する目的をもつて設計し」の部分と「航空機がその艦上より出発し並にその艦上に到着し得べき構造を有する」の部分は対等に「すべての戦闘用水上艦」に係っていますね。こういう艦船が航空母艦なのですが、発着設備なら巡洋艦にも設けることができます。では発着設備を有する艦船のうち何が航空母艦なのかといえば、「専ら航空機を積載する」ものがそうなのだと言えると思います。積載する、この語からただちに巡洋艦に全通飛行甲板(場合B)不可ということは導き出せないのではないでしょうか。ただし正文は英文(ないし仏文)となっているのでもしかしたらそれらならハッキリするのかも。
     最初からこれを引用しておけばよかったのですが、すみません。
    井中かえる

  4.  駄文ですが付け加えます。「昭和造船史」を眺めていたら航空巡洋艦に関し次の文章を見つけました。「これは実質上の小型の航空母艦であり、巡洋艦を減じて空母を増加できることを意味する」。一巻の453頁です。短文でありどこまでを想定しているのかも分かりませんが、ここまで言う人もいるのです。
     
    井中かえる

  5.  逆に全通甲板を装備していて「航空機の発着艦と航空機の搭載を主として建造された」艦ではない、
    と言えるとは思いませんが。

     あと第一部三章二項の戦艦・巡洋艦・駆逐艦に発着艦用設備もしくは甲板装備をしている場合
    空母と規定するか、という事に関する規定、及び第三部十六章二項の巡洋艦枠の艦に着艦用設備
    もしくは甲板装備を可能とする規定がありますが(条文上では着艦用(Land-on)であって、決して
    発着艦用(Land-on<Landing-on> or Flying-off<Launched>)と書かれていないことに注意。
    因みに同条約では発艦・着艦・発着艦という言葉は第一部三章の各項を見れば分るように
    条文上で明確に書かれている)、これを見る限りでは全通甲板装備の航空巡洋艦が建造できるとは
    思いません。

    まあ十六章五項、「Not more than twenty-five percent of the allowed total tonnage in the cruiser
    category may be fitted with a landing-on platform or deck for aircraft」のDeckを拡大解釈すれば
    いいのかもしれませんが、認められるとは思い難いですね。
    大塚好古

  6. ↑第三部十六章二項→第三部十六章五項ね。失礼しました。
    大塚好古

  7.  「発艦・着艦・発着艦という言葉は第一部三章の各項を見れば分るように
    条文上で明確に書かれている」というのは私の参照文書でもまあ読み取れなくはないですが、なにぶんまだ英語での正文を見たことのない身、正文の載っているサイトないし文献を教えてくださるとありがたいです。
     しかし、発艦専用装置ならカタパルトとか滑走台がありますが、着艦できるような長さの甲板なら発艦もできるのが普通ではないでしょうか。発着艦が同時にできないよう長さを限定するというのでしょうか?
     また、「全通甲板を装備していて『航空機の発着艦と航空機の搭載を主として建造された』艦ではない」と言えそうな艦として、MACシップよろしくエレベーターのない一枚板の甲板を普通の条約型の上にアーケードのように乗せたものを思いつきました。ここまで来ると巡洋艦枠に航空母艦を押し込めないか、という私の最初の意図からはずれていますが。火葬艦になってしまいますね。
     便乗ですが、この規定を提案したのはやはりアメリカなのでしょうか? 少なくとも日本ではない、と思うのですが。
     


    井中かえる

  8.  ワシントン条約とロンドン条約の英文は下記サイトで読めます。

    http://www.warships1.com/W-INRO/INRO_Washington_Naval_Limitation_Treaty_1922.htm
    http://www.warships1.com/W-INRO/INRO_London_Treaty_1930.htm

    なお、ロンドン条約の空母規定に追加項目を何処の国が言い出しかについては
    勉強不足のため分りません。
    大塚好古

  9.  回答ありがとうございます。英文と訳とでは微妙な差があってなかなか面白いです。
    井中かえる


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