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1885 ワシントン軍縮条約で定義付けされた重巡、軽巡についての質問です。無条約時代になってもその両艦種の呼び名は残されているようなんですが、これは「便宜上付けた呼び名が定着した」と考えても良いのでしょうか?

また、無条約時代になっても各国は戦艦を除けば、8in主砲+1万トンを少々上回る艦艇(条約型巡洋艦の緒性能を満足にさせた物。バルチモア級とか)は竣工するものの、それ以上〜戦艦未満の大型艦(アラスカ級とか)は「中途半端な戦力」として冷遇されたり、計画が頓挫(超甲巡とか)しています。
そう考えれば、この軍縮条約の制限は期限切れとなっても大きく尾を引き、WW2終了まで補助艦艇の在り方に大きな影響を及ぼしたと言えるのではないでしょうか?
(なんか表現の仕方が下手で申し訳ありません。つまり「戦艦、空母は無条約後は各国ともそれぞれ個性的な艦が登場したのに対し、巡洋艦は条約型が案外、型にハマってしまったのでは?」という事なんです。)
モデル@

  1. 艦船の歴史を簡単に眺めてみればお判りになると思いますが。

    軍縮条約以前では
    戦艦>12〜16インチ級主砲を多数搭載
    巡戦>上と同じ
    軽巡>4〜6インチ砲搭載
    と、このような感じで大型戦闘艦艇は分布しています。
     戦艦と巡戦を事実上同種のものと見なすならば、元々巡洋艦という艦種では、普通の非武装・軽武装の中小型船舶をどうにかできちゃうだけの武装を持ち、それを可能な限り「いつでもどこでも」発揮できるという事を重要視した艦種です。だから速度・数・航続力を重要視した軍艦だったのです。
     こうした戦闘力をそれほど重要視しない艦であるのは、戦闘力が必要な時は戦艦や巡洋戦艦を呼べば良いからなのです。例えは悪いですが、巡洋艦は警邏の警官で、戦艦等はSWATやSATのような武装警官だと言えるでしょう。大抵の事は普通の警官で間に合いますし、警官の手におえない時に武装警官を呼べば、コストも削減できるし、大概間に合うわけです。
     さて、こうしたバランスは、巡洋戦艦という、急行能力の高い重武装巡洋艦が事実上戦艦化することで「そこそこ重武装で高速」な戦艦と巡洋艦の間を埋める存在が消えてしまったことで少しだけ問題になりますが、戦艦本体の高速化で、補いも可能でした。

     戦艦と巡洋艦の間を埋めるような軍艦は、例えば日露戦争時の装甲巡洋艦なんかが相当しますが、結局それを大々的に運用した日本では、事実上戦艦として後継艦を建造しました。つまり、かなり以前から、汎用巡洋艦戦力と戦艦のギャップを埋めるような艦は「中途半端」だったのです。
     大概の事態では6〜8インチ砲程度の武装で賄えます。よってそれ以上の武器を積んだ大型艦を作るより、普通の巡洋艦を多数作る方が便利な訳です。火力が必要な時は戦艦を呼べばよいのです。

     条約末期から条約明けの各国の巡洋艦を見てみれば、それらはどれもその国の置かれた条件によって非常に個性的です。
     戦艦や空母以上に個性的だといえるでしょうし、また条約以前の巡洋艦は(それでも性能的にはそれなりに間に合ってる)条約の制限スペックにも届いていなかった事に注意して下さい。
     軍縮時代は戦艦が作れないから巡洋艦を条約ギリギリで建造してますが、各国にとって本当に必要だったスペックは意外と条約制限ぐらいで十分でもあったのです。
    SUDO

  2. 人力装填の限界が6インチなんです。
    それより大口径化しようとすると8インチあたりが威力と発射速度などの面からバランスが取れているため、8インチ砲搭載巡洋艦が一般的になるわけです。
    ソ連は中間的な7インチ砲巡洋艦を建造していますが、中途半端な性能のため最終的に6インチに移行しています。
    モーグリ

  3. 日本海軍が建造した新世代の軽巡洋艦は排水量8000t弱の阿賀野級です。
    巡洋艦競争をエスカレートさせた張本人はしれっと常識的な普通の巡洋艦を
    建造している所が面白いですよね(笑)

    ルージュ

  4. 条約明け後に新規に「重巡」を造った国って、アメリカ「だけ」のような気がしますが。
    (日本の伊吹級を入れても二カ国だけ)
    重巡というのは条約制限で戦艦を造れなかった時期限定の最大最強水上戦闘艦というものであって、戦艦が造れるようになれば必ずしも要らない艦種だと。
    重巡でも中途半端なのです。
    米海軍が重巡を継続建造したのは各国既存重巡、とくに小煩い日本海軍重巡部隊への対抗策であり、軽巡をして圧倒する火力を両大洋で発揮するにあたっての、戦艦の駒不足への対抗策でもあったでしょう。
    (この辺の事情は敵国博士の出馬を待ちたいところですが)


    まなかじ

  5. >4.
    フランスもサン・ルイ級3隻を計画してますね。
    勝井

  6. >2
     ご指摘のように6インチ砲が普通の人力装填の上限ですから、応急武装した仮想巡洋艦や、各種の二等以下の主要巡洋艦、そして駆逐艦等の軽艦艇を確実に圧倒できる「最低レベル」が8インチ砲搭載巡洋艦だった訳です>古鷹等。
     強さと重量のバランスで言うなら、基本的に大口径になるほうが有利です。例えば米国のボルチモア級の8インチ砲塔とアラスカ級の12インチ砲塔の重量比は凡そ3倍で砲弾重量も3倍、射撃速度は概ね大差無しで射程と貫徹力は12インチが優位。ビスマルクの15インチとヒッパーの8インチでは砲塔重量4倍、単位時間当たりの投射量は4.5倍、射程と貫徹力は当然15インチ優位。どちらの事例でも大口径砲の砲塔は装甲が数段厚いという事も含めれば、砲単体の攻撃威力で言うなら8インチ砲は決して誉められたものではありません(まあ機力装填が足枷になってますな)バランスは決してよい訳ではないのです。
     単に洋上で最も遭遇する確率が高い6インチ以下の砲を圧倒できる最小構成が、この8インチ程度であったというだけの事です。最小構成であるという事は、それを搭載した艦艇を多数建造する事が出来ます。12インチ砲艦でも8インチ砲艦でも6インチ砲艦を圧倒できるなら、艦数が最大多数になる8インチ艦が望ましかった。そういう事ではないでしょうか。

    SUDO

  7.  各国の「条約型」戦艦を俯瞰すればバラエティに富んでいると感じるのは私だけでしょうか?

     二次大戦は、言ってみれば条約型の艦船によって戦われた戦争ですから「ポスト条約型」の艦船が登場するのは大戦半ばを待たねばならないのですが。大きな戦争を遂行している中途で、従来にない新しい兵器システムを導入するのは躊躇する理由になったとも思えます。
     「重巡」としての進化型とも思えるデイモン型が20センチ砲を搭載したのも、その辺に理由がある感じがします。

     また、戦前、戦中問わずに、駆逐艦から戦艦までバラエティに富んだゴージャスな艦船群を建造出来るのは一人米国位であって。我が国や英国などはそこまで建造出来る余力が無かったともいえますね。
    tackow

  8. 純軍学的見地からして、ワシントン条約もロンドン条約も基本的には、単なる無駄にしか過ぎません。
    しかし、無駄は無駄でも条約は条約。
    その拘束力の下で、建艦開発が行われていました。
    一国が建艦開発を行えば、それに対応した建艦計画を又、別の一国が成立させるわけです。
    文字通り、「矛盾」の連鎖による悪循環です。
    この悪循環が断ち切られ、実践に即した建艦計画が立てられるようになり、誕生したのがアラスカ級や超甲巡です。
    防護巡洋艦と装甲巡洋艦(後の巡洋戦艦)。
    その関係を第二次大戦風にアレンジした物が、巡洋艦と超甲巡の関係だと言えるでしょう。
    冷戦などと言う政治学的にも経済学的にも歪んだ体制が、誕生しなければ、航空主戦主義と言う机上の空論が台頭しなければ、おそらく超甲巡、即ち巡洋戦艦の復活が当然の帰結として、実現した物と思います。
    松田幸作


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