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2254 よく軍事マニアの間で聞かれる「日本海軍は戦艦大和が米戦艦より射程距離が長いことを利用して、米戦艦の射程距離外から一方的に砲撃を想定していた」という「アウトレンジ砲撃」という通説はどこで誕生したのでしょうか?
モーグリ

  1. というのも、よく調べるとこの説を裏付ける証拠が無いのです。
    『戦史叢書』を調べても「大和のアウトレンジ砲撃」は一切書かれていません。それに戦艦大和の想定防御距離は2万m〜3万mです。
    日本海軍はこの戦闘距離での砲撃戦を想定していたとしか思えないのですが。
    モーグリ

  2. 遠距離砲戦は天候に恵まれ視界が極めて良好な場合にのみ可能な戦法です。
    照準を光学式で行う場合の宿命のようなもので、このような好条件に恵まれない限り機を見て全艦突撃するのが基本的な戦策とされていますが、飛行機による砲戦観測が実用性を持ち始めるとやはり遠距離砲戦は重視され始めます。光学式照準システムも砲戦距離の延伸に対応して戦艦の射撃指揮装置装備位置の標準を海面上38mから45mに増大していますし、大和型の建造時期はほぼこれに重なります。
    また、砲戦に飛行機が介在し始めると敵観測機を排除して味方のみが一方的に砲戦観測を実施できる、という状況が想定されるようになります。零戦の開発目的がこの考え方を反映していますが、これもある意味、アウトレンジ戦法の一種ではないでしょうか。
    BUN

  3.  数で劣る以上、出来るだけ先に命中弾を与え、爾後の戦闘を有利に進めるという考え方はあったのでしょうが。終始敵の射程外から一方的に射撃する、という甘い考えは持ち合わせていなかったようです。

     ちなみに、大和型の砲戦開始距離は最大射程マイナス1000m程度と見積もられていましたが。「決戦距離」は20000m程度を目途としていたようですね。
    tackow

  4. 「敵戦艦の射程外から一方的に撃つことを前提として46cm砲を採用」って書いている本では大体「主要部が二万〜三万mで自艦の主砲に耐えられる」って書いてますよね?
    矛盾するとは気付かんのかいな?

    ロックマン

  5. >4
    3万以上では耐えられない=甲板を抜かれる、という知識は一般にはあまり知られていないと思います。
    一般的な直感的理解では距離が離れるほど威力が減っていくと考えるから、2万〜3万が安全なら3万以上はもっと安全と考えるのであって、3万以上から危険になるとはなかなか考えにくいと思います。
    未明2

  6. 大和の最大射程は42,000m、Coloradの45口径40cm砲ならば最大射程36,660mですので、37,000-42,000の距離を維持すれば理論的には一方的に撃ちまくれることになります。

    ただ弾着までの時間は98.6秒ですから、極端なことを言えば、大和の主砲発射を確認した後に転進しても、散布界の外に出られるのではないでしょうか。要するに、相手にも撃ち合う意志が無い限り、大遠距離砲戦は実際には成り立たないような気がするのですが、どうでしょう。

    私が米戦艦の艦長ならば、こちらの命中弾が得られない距離にある間は変進を繰り返しながら接近し、3万位から直進して射撃緒元を決めると思いますけど。
    富士見町

  7. 大砲の理屈だけで考えてはろくな結論に至りません。
    戦史叢書には採り上げられていないかもしれませんが、現実に、昭和十四年六月、連合艦隊司令長官より海軍大臣及び軍令部総長宛「連合艦隊機密第十三号の二四 主力部隊配属航空母艦に関する意見の件提出」の中で「我が主砲をもって敵主力との射程差を利用し、遠大距離より先制射撃を実施し、敵の射撃開始に先立って大打撃を与えることは戦勝の一大秘訣」とはっきりと述べられています。この時期、戦S等の初期段階で射程差を利用して敵を圧倒するという水上砲戦に於けるアウトレンジ戦法は連合艦隊の戦術の根幹をなしています。
    BUN

  8. 『戦史叢書・海軍軍戦備1』では
    1・敵戦艦射程外から射撃を開始しつつ接近(先制のアウトレンジ)
    2・3万mで敵戦艦が発砲を開始したら急速接近
    3・1万9千m以内に接近し敵を殲滅
    と書かれていました。
    BUNさんのおっしゃった「アウトレンジ砲撃」は1に当たる部分でしょうか?
    モーグリ

  9. 遠距離砲戦の考え方は1のようなものです。
    ただ晴天で海上の視界が極めて良好でなければ困難だったことが昭和10年代には飛行機による観測で実施する機会が増大したと考えられているようです。決戦局面でのアウトレンジ戦法は緒戦から敵殲滅までを一貫して遠距離砲戦で終えるような戦術ではありません。
    BUN

  10. 誤解を招く書き方だったので訂正します。
    私が書いた「世間でよく言われている「大和のアウトレンジ砲撃」」はBUNさんの書いた
    >緒戦から敵殲滅までを一貫して遠距離砲戦で終えるような戦術
    のことです。

    この説は結構流布しており、戦艦大和について書かれた軍事書籍によく登場しますが、その理由は何なのでしょうか?
    モーグリ


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