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2416 過去ログにあったら御免なさい。第二次大戦中の帝国海軍では水上艦艇から発射する魚雷の照準を定める場合、どのようなパラメ−タ-を設定していたのですか?。それと目標艦の速度はどうやって導きだしたのですか?(目標の予測位置)。艦砲であれば何度も修正をかけるうちに当たるとは思いますが、魚雷となると当たる確率は極端に低いのではないかと思った次第です。確率ってどのくらいだったのでしょう。
johnny

  1. パラメータとしては、
    自艦の速度、方位
    目標の速度、方位
    彼我の距離
    魚雷の速度
    を三角関数で計算すれば命中地点は出ます。
    もちろん各パラメータが固定ならば簡単に出せるのですが、当然、魚雷が来るのが発見できれば、相手はよけるでしょう。そこで扇状に撃って、どれかが当ればOKという打ち方をします。
    一応、旧海軍では、駆逐艦一隻が片舷発射(8〜9本)で一本当ればOKとしていたようですが、命中の確立は、条件によってかなり異なってくることでしょう。気象条件や海流により、魚雷自体が直進しないことも多く、また、魚雷の舵に欠陥があった(?)ため、自分の発射した魚雷に被雷した例もあったはず。(つまり戻ってきたのか、自分が魚雷の進路に割り込んだのか、、、)実戦での平均値など、出しようがありません(一発で当てた例もあれば、よってたかって数十本撃ってもほとんど当らなかった例もあります)
    Lachesis

  2.  目標速度は基本的に目測です。自艦速度等が発射直後の針路のばらつきに影響するので、別途修正として加味したりすることもありましたが、魚雷の進歩でこれは事実上無視されます。
     基本的には目標速度と針路(方位角ですね)が諸元計算に用いるパラメータで、重要なのは目標の針路でした。
     これは、戦術レベルでは敵艦の速度は凡そ予想出来る事から、大きな問題点では無く、どちらかと言うと方位のほうが誤差が大きかったようです。
     この観測精度の問題は、誤測による誤差が数字としてどうなるかという計算が為されています。極端な事をいうと、敵艦は長いので、計測誤差による到達点のばらつきが、敵艦の長さより小さければ、そう問題にはならないという事です。まあ日露戦争直後の話ですから、射程1000m以内とかでの世界です。
     明治末期から大正初期にかけて、観測誤差による問題をどのように吸収するかの論文が幾つも発表されましたが、最終的に扇型に数本を発射すれば、どれかひっかかるという計算と理論に落ち着きます。
     この計算理論から最終的に命中曲線図というグラフが作成されました(大まかに数種類の敵の向きに基く数本のグラフ線が記されています)
     例えば、方位60度ぐらいの敵艦には、60度のグラフ線の敵速度を当てはめれば、与えるべき見越し角度が凡そ判るというものです(多少の誤差は目標サイズから許容される)
     また魚雷の命中率ですが、演習では80%以上から0%まで、当然ですが様々です。
     実戦でも40%以上といわれるものから、全部回避されたものまで、また様々です。
     回避運動をしなかったら、魚雷が故障しない限り、一斉発射した魚雷のうち一本は当たるものと思って良いです。
    SUDO

  3. >1
     斜針装置、ジャイロ、縦舵装置等で、自艦針路速度等が齎す影響(初期雷道)は吸収されますので、自艦速度・針路はパラメータとしては組み込まれません。
     また三角関数による幾何である事から、測距も要りません。
     必要なのは目標の方位角と速度だけです。
     砲撃が、目標の方位と速度と距離が必要なのに対して、一つ減るのです。
     また砲撃の場合で、自移動量加味は測距の変種でもあるんですが、上述したように測距の要らない雷撃では、この問題は無いのです。
     また自己の移動ベクトルが弾道に与える影響等も砲撃は考慮しますが、雷撃の場合は水中に入ってしまうので、この問題も実体として無視されます(水の抵抗があるので、初期ベクトルはどうせ影響しない)
     現代では潮流等を加味していると思われますが、大戦時ではそこまで考慮されていなかったようです。
    SUDO

  4. >3 質問です。
     発射する側は、目標の角速度はわかるけれど、角速度から実速度を算出するには、距離データが必要じゃないでしょうか。目標の方位角と角速度だけでは魚雷の発射角を決められないのでは?
    カンタニャック

  5. >4
    順序が逆でして、敵艦の蹴立てる艦首波または艦尾波から速度を推定し、それを角速度変化の度合(計算位置と観測位置の差、及び方位変化率)で修正する、というものになります。
    軍艦の迷彩に艦尾や艦首に波切りの様子を描くものがあるのはこれが理由です。

    まなかじ

  6. SUDO様
    確かに発射地点は自分の現在位置ですから、それが推測されている以上は必要のないパラメータですね^^;
    距離に関しても、変位を計るだけで相対予想角は十分出せますから、確かに必要要素からはぬけるのでしょう。
    ご教授ありがとうございます。
    Lachesis

  7. >5 
    速度の件、了解いたしました。ありがとうございます。
    カンタニャック

  8.  パラメータというか、大事な設定を忘れてました。
     発射する魚雷には、速度と深度をセットします。速度は勿論発射諸元と密接に関わり、深度は目標の艦種等で選択されます(深いほうが破壊効果が高く、また安定疾走し易いが、深すぎると当たらない)
    SUDO

  9.  ついでに、ゴミなネタ

     観測精度の誤差ですが、恵比寿で演習結果をコピれば良いんですが面倒なので、手元の水雷史の潜水艦の演習結果(甲種戦闘発射)から抜粋します。
     7年間の平均誤差は、方位角15度前後、距離1000m以内、的速1〜2ノットとなっています(潜水艦は連続観測ではなく、潜望鏡による断続的な観測なのでたしょう厳しい)
     この時の演習時、距離は2200〜3200m、方位角は65〜85度、潜望鏡による観測(露頂)回数は6〜10回、一回あたり40〜15秒の観測でした。
     この内数年間の命中率が出ていますので、細かい数字がわかってる範囲で均してみますと(甲種昼間)13,15,16年度で333本発射で84本命中、命中率25.2%でした(上記観測誤差でこのような結果になる)また故障率(これは操作ミスも含む)は5〜25%。砲と異なり、この故障率が高い事が目立ちます(砲の場合、出弾率は演習で8割以上が普通で、実戦でも6割は期待できると考えられてました)
     演習で5〜25%(酷いのはミスして全部100%もある)という故障率の高さは実戦での手記等でミスや故障が目立つ事と繋がっていると思われます。
     故障は規定の取り扱い手順を守らなかった場合もカウントされます(当たってもミスにされる)ので厳しいとも言えますが、魚雷のみならず発射管の操作ミスもあります(これは例えば実戦では、米魚雷艇が発射管に魚雷を詰らせて爆発事故を起こしたとかが有名です)
     また酸素魚雷の過早爆発、米独魚雷の不発のような構造に起因する問題。もしくは製造問題、さらには試験不足から来る問題とかも少なくありませんでした。
     魚雷が向きを変えて戻ってきてしまう問題は、ジャイロ制御の特性上少なくないようです。
     さらには、高速艦から発射され、複雑なシークエンスで疾走モードに入る魚雷では、雷動安定までの時間が大きくなり、その間の進路ふらつき(最終的には進路に乗る)によるばらつきが、特に遠距離発射では大きな影響を齎していたと考えられます。
    SUDO

  10. 質問者です。短時間に解答をたくさん有難うございました。思った以上に命中率は高そうですね。みなさんの解答が専門的で高度な中、まことに初歩的な追加質問で恐縮ですが、一時に扇型に発射する場合、発射管の連装数にもよると思うのですが、すこしづつ回転させて時差を持たせて発射するのでしょうか?。実戦的な運用法が分かれば教えてください。多連装発射管はあくまでも魚雷は並行に並んでいると推察しています。
    johnny

  11. 魚雷発射管は固定です。
    発射直後の魚雷が自ら舵を切り、扇形に展開します。
    つまり魚雷の針路は魚雷が自ら決定します。
    発射間隔は日本の場合2秒と記憶。
    勝井

  12. >10
     発射方法は何種類かあります。
     まず多連装発射管では数秒間隔で発射します。一斉に飛び出す訳ではありません。
     次に、扇型の形成ですが、つまりは魚雷は真っ直ぐ走るだけではないという事です。発射前に夫々の魚雷に斜進調停というものを行えます。つまり発射された魚雷は舵を切って、指定された方位に向か事ができます。
     この斜進装置を活用する事で扇型を形成する事が可能で、これを「斜進発射」と言います。
     勿論、直進設定にして、発射管ないし艦の向きを変えながら行う事も出来、こちらは「転舵発射」と言います。
     一般的には斜進発射を行い、旧式艦や損傷等で自動斜進調停が出来なくなったりした場合に、艦の向き・発射管の向きを変える「転舵発射」を行います。
    SUDO

  13. 基本的には魚雷の針路は舵角を斜進装置で決定し(いわゆる「斜進角調定」ですね)、これをジャイロで補正しながら駛走するわけです。
    極端なことを言えば左舷に向けて撃った魚雷でも大回りさせて右舷に走らせるというような芸当もできます。
    水上艦の場合、自艦も疾走しながら発射するわけですから、扇形発射はほぼ完全にこれに依存します。

    とはいえ、潜水艦や魚雷艇など艦首尾方向に複数の固定発射管を持つものでは、直接照準で雷撃照準器上に目標を捉えた状態で、微速前進しつつ艦首を振りながら、直進調定にした魚雷を照準器とストップウォッチによって開角を与えて発射する射法もあります。
    この場合、魚雷は順次発射となりますから扇形の斜線陣となって目標に着達します。

    もちろん、これは通常の手順に従って魚雷の斜進角調定で与えてもいいわけですが。
    まなかじ

  14. ・・・かぶっちゃったよ
    まなかじ

  15. >5
    推定速度V+况から、角速度変化の度合刄ヨで修正して実速度を求める時にやはり距離rを用いるのではないですか。 况=r×刄ヨ=r×刄ニ/t という式では。 刄ニ:計算位置と観測位置の差 t:経過秒時。 (rはどこで落ちるのだろう...)
     単眼でしか観測できない潜水艦の場合、船種から(識別帳 ONI-208Jなどを用いて)全長と煙突/マスト高さを仮定し、距離は 煙突/マスト高さの見かけの高さ角度から、方位角は 全長または前後マストの幅の見かけの視角度から、速度は上にあげた式から、いずれも距離rを基本にして計算し、数回の観測で修正するものと思っています。
     射角θは、敵速V、雷速υのとき、sinθ=V/υ になって距離rに関係しないというのは分かりましたが。
    IWA

  16. >15
     観測距離から速度を算出することは勿論日本でもやってます。

     潜水艦の場合ですと、マスト高さから距離を、前後マスト・煙突等の見え方から方位角を求めます。
     その観測精度は上記の演習結果の如しです。
     水上艦の場合
      方位盤:目盛り付き双眼鏡のオバケ
      発射指揮盤:従羅針儀を持ち、斜進角を出す。
      測的盤:的速的針を算定
      射法盤:諸元計算(つまり上記各装置で求めた数値を諸元に換算する)
     等の機材を用いて、彼我の体勢や諸元を出します。
     全ての艦がこれらの装備を備えた訳でもなく、また型式機能も各種ありますが、こんな感じです。
     まあ水上艦は測距儀持ってますので測距そのものは苦労しないと思います。的針的速度算定を行う測的盤(および同機能を持つもの)は巡洋艦用25基、駆逐艦用33基の生産ですので、駆逐艦の多くは水雷長が自力で計算するか、速力は推定で済ますことになると思われます(旗艦巡洋艦から的速が伝わればそれで間に合いますが)
     潜水艦の場合も対勢儀対勢盤等が試作されましたが、量産には入っていないようです。
     上記の演習結果からもわかるように、潜水艦の測距精度は3km前後で1kmにも達しますが、的速誤差は僅かですから、恐らく測距は殆どアテにしてなかったのでしょう(戦術運動にはそう問題ないのかもしれませんが)これは幾つかの手記で、潜望鏡を上げてみたら目の前に敵が居たとかと関連するかもしれません。
     米潜水艦のように、各種観測結果を一元処理して諸元および体勢図として出せるだけの装備・機能は日本軍にはありませんでした。
    SUDO


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