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知人からの質問なのですが、日本陸軍の砲兵部隊の射撃時に、射撃指揮官 が、「ほうせい○○○」(○には数字が入ります)と号令するそうなの ですが、この「ほうせい」とはどういった意味なのでしょうか? また、「じゅんぽう」という号令もあるそうですが、これもどういった 意味なのでしょうか?知人は、自衛隊の総合火力演習でも、155mm榴弾砲を 射撃する際に同様に号令していると言っております。ご存知の方、よろしく お願いします。 ある |
指揮官:「ちゅうじょ(大砲の足)をしろ!!」
各隊砲兵:「ちゅうじょ」を打つ音があちこちで聞こえる。
指揮官:「ヨーシ・・・やめ !!」
指揮官:「本隊は断崖上に隠顕する敵の砲兵を今から撲滅!!」・・・と絶叫。
各隊砲兵:訓示を聞く。
指揮官:「砲撃準備」
各隊砲兵:復唱
指揮官:砲撃諸元を各隊に命令下達、「方向1282」
各隊砲兵:「方向1282」を復唱
指揮官:「瞬発信管、効力○○」
各隊砲兵:「復唱」
指揮官:「ほうせい106」←これの意味がわかりません。教えてください。
各隊砲兵:復唱
指揮官:「1万1千100」、射撃距離のことだと思います
各隊砲兵:復唱
指揮官:「目標、眼前の敵」、これ適当です。
各隊砲兵:復唱
指揮官:「撃ち方始め!!」
各砲が、2〜3回射撃。
指揮官:「第三効射報告!!」
副官:「ほうせい106」←再びこれです。
指揮官:「良し!!」
各隊砲兵:「良し!!」
指揮官:「撃て!!」
各砲が、連続射撃。
指揮官:諸元修正、「よし!!、5秒右へ撃て!!」
副官:「5秒右へ撃て」
各隊砲兵:復唱
各隊砲兵:「準備良し」
指揮官:「じゅんぽう」、←これも意味が判りません。準備射撃の意?
指揮官:「連続各個に撃て!!」
以降、連続射撃状態になる。
というような感じだそうです。ご教示、お願いします。
ある
「ほうせい」は砲正ではないでしょうか。
砲撃目標正角で、観測班がおおざっぱな測地(大まかな距離と方位角だけから)をして作成したグリッドです。
つまり、この場合の射撃は点目標ではなく面積目標に対する制圧射撃ということになります。戦砲は、先着の観測班から砲正のみ記入の射撃図は受け取っているようです。
目標が遮蔽している敵砲兵ですから、目標そのものは観測班も視認できていない状態なのでしょう。従って、実際の射撃目標は図上の第106番めの方形に置き換えられます。
これは、陸軍の射法としてはかなり粗っぽいやりかたです。むしろ、海軍の艦砲の射撃指揮に近いやりかたですね。
砲撃しながら射弾修正するわけで、この場合も第3効力射(海軍風に言えば第3斉射)でようやく目標地域を捉えたわけです。
副官報告の「砲正106」は、この隊の弾着が図上の第106番めの方形の中に集中しましたよ、と観測班が報告してきている、という意味でしょう。
戦砲隊長は独自に更に右5秒の修正を加えていますから、第2効力射まではかなり右に偏していたのでしょう。
また、この場合は試射なしでいきなり効力射準備射撃に入っていますから、遭遇戦や機動戦のような急ぎの想定でしょう。
「駐鋤打て」から入っているのですから、陣地変換〜放列布置と同時に「砲撃準備」ですし、観測班と協同で基準砲を定める時間もないようなので、面積制圧で撃つしかない、という状態でもあります。
じゅんぽうは順砲、「準備できた砲から」です。
この場合は「各砲は準備完了し次第」と意訳しましょうか。
試射及び効力射準備射撃を終わって、本格的に効力射に入るときの決まり文句みたいなもんです。(海軍では単に「急げ」の一言ですが)
まなかじ
まなかじ
詳細な回答をありがとうございます(嬉)。大変勉強になりました。
余談ですが、前述の砲撃例の内容(録音通りではありませんが)は、知人によると「昭和17年4月の終わりごろのフィリピン島攻略戦の最終段階、コレヒドール島砲撃の、バターン半島最前線に位置する砲兵隊の実況録音」だとのことです。なんでも、当時のNHK収録のレコードをお持ちだそうです。今度、コピーをもらう予定です。楽しみです。
ある