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1868 前に書き込んだ事とかなり重複するのですが、私の読んだ本の殆どは日本の高射砲の射撃式装置は使い物にならなかったようなのですが。特に日中戦争の時には飛来した中国軍爆撃機を一機も撃墜できなかったと書かれています。そのために発射速度の高い89式5インチ砲を装備したと。ひどいものに至っては25ミリ機銃と射撃式装置の連動をわざと切らせてその道の達人と呼ばれる人間に偏差修正を任せて各自発砲していたようなのですが。射撃式装置を通して得られるデータと本来の値があまりにも違うことで少なくとも近接防護兵器としての25ミリはあまり役に立っていなかったようなのです。使い物になったのは秋月型からの射撃式装置からだったと記憶しております。実際にはどうなのでしょうか?
迷探偵

  1.  整理してみましょう。
     まず中国戦線で効率的な対空射撃が行えなかったというのは一面で事実です。であるから三式弾のような特殊な砲弾の開発等に進んだのです。
     実際に射撃装置や射撃精度に顕著な問題点を抱えていたとは考えにくいのですが、何か根拠があるのでしょうか?
     89式高角砲は射撃速度だけが高いのではありませんし、昭和4年式ですから日中戦とは無関係です。
     秋月型で装備したのは94式高射装置で、これと同等品は主要大型艦艇の高角砲射撃装置として搭載されていました。
     また機能面では、それより前の91式高射装置でも同等レベルで、どちらも光学式高射装置としては水準レベルのものです。
     言うまでも無い事ですが、これらの指揮装置をもたなかった艦艇では非常に厳しい事になっています。つまり殆どの駆逐艦とそれ以下の艦艇です。
     まずは、この点をはっきりと区分けして考えるべきでしょう。

     駆逐艦に備えられたのは、普通の射撃装置ですから、これは対空射撃にも応用できなくも無いという程度であり、貧弱な代物であるのは事実で、高角射撃に対応したのは夕雲型駆逐艦からでした。
     言うまでも無い事ですが、他国の駆逐艦はもっと酷い状況で、ただ米国の新型駆逐艦だけが高角射撃装置と高角砲を備えていたのです。

     機銃の射撃装置の精度が甘いという話は聞いた事が無いのですが、射撃装置をもたない機銃のほうがはるかに多かったのです(生産配備が間に合わない)
     例えば大半の艦艇では、指揮官が「あれを撃て」と命じて機銃は各自でソレを狙いました。射撃装置が無いからです。
     機銃射撃装置では、敵針、敵速を別途入力する必要があり、それが入力者の技量に依存するという点が大きなマイナスではありましたが、各機銃に優秀な人員を配置するよりは効率的ですので、これらは運用面の問題といえるでしょう。その道の達人が居るなら、その人を敷き装置に置けば良かった訳です。

    SUDO

  2. つまりは夕雲型以降の駆逐艦や艦艇に至っては対空射撃能力は向上していないと。ファクターとして考えられるのは長10サンチ砲くらいですか。対空射撃の偏差修正に長けた人間を育てるのはかなり時間(実戦経験)がいると思われるのですが。風や敵速、それに自分の艦の速度を計算して自分の高射砲群や機関銃群に各個に指示をあたえるのは効率から言ってあまりいい方法とは思えません。機関銃そのものを操る人間の数が大戦末期に至っては数倍に増えている日本海軍も射撃指揮装置も無く、優れた指揮官も少なく、実戦経験も未熟な人間を駆り出していたわけですよね。

     実際に射撃装置や射撃精度に顕著な問題点を抱えていたとは考えにくいのですが、何か根拠があるのでしょうか?
    という点に関して、私が入院していた病院の隣のベットの老人が語っていました。もちろん実戦経験ありです。それどころか大和特攻にも参加した駆逐艦の乗組員の一人だったそうです。まあでも戦闘艦の対空兵器は最後の手段、決め手となるのはやはりCAPの存在と(もちろんそれを管制するレーダーやPPIスコープなりが必要なわけですが)、「平均的な性能を出してなおかつ大量生産の効く」射撃指揮装置が必要なわけですよね。日本はその両方に失敗していたと。
    迷探偵

  3. >2
     ああ、駆逐艦の事例ですか。それは失礼しました。
     夕雲以降の駆逐艦とは秋月じゃないのでしょうか?
     夕雲以降の駆逐艦となると、松型の射撃装置は、夕雲に比較して劣るというレベルのものになってます(対空射撃能力では大差無いですが)これは量産性の問題です。
     一隻しか建造されなかった島風は夕雲と同じ射撃装置を搭載していました。 言うまでもなく、夕雲の射撃装置も秋月のそれと比較した場合、かなり劣ります。
     このあたりは、対空射撃もできる水上戦用駆逐艦である夕雲、量産型である松、そして対空射撃用駆逐艦である秋月の、それぞれの性格の違いであるといっても良いと思います。
     これは米軍でも対水上射撃用駆逐艦である嚮導駆逐艦では水上射撃専用の法と射撃装置を用いていた事等からも理解できると思います。
     駆逐艦で完全対空射撃対応射撃装置を備えていたのは戦時中に建造された米駆逐艦と日本では秋月、そして大戦末期に英国が建造した一部の駆逐艦だけでした。 

    ちなみに、日本軍の場合、高角砲用の高射装置は自艦の針路・速度も加味して計算しています。
     水準レベルと述べたのは、他に組み入れるとしたら電探と、あとはそれこそデジタル演算ぐらいのものだったのです。それとより高い計算精度になるでしょうか。
     そういう意味では、あの時代の技術で考えた場合、進歩させる余地は、あまり無かったと言えるでしょう。
     また長10糎は別にそれほど凄い戦果を上げた訳ではありません。総合的に見て、他艦が備えていた89式12.7糎砲と変わらないと考えられます。
     これも砲の性能の問題よりも射撃装置の問題であるといって良いでしょう。
     ご指摘の、優秀な人員が少ない事と、それを有効活用できる機銃射撃装置の数量が稀少であったことが大きな問題点でした。
     まあ、この問題は、実はほぼ全ての国の機銃射撃に適用できるのですが。
     この点では、米国が非常に進歩していましたが、日本では、同様の射撃装置の量産は出来なかったでしょうね。
     そして極普通の機械式射撃装置として考えた場合、日本のそれは、極普通のものだったのです(射撃装置が無いという点では他国の機銃も多くが同様だったりします)

    >私が入院していた病院の隣のベットの老人が語っていました。
      申し訳ありませんが、その方は同時期の他国の機関銃や高角砲の事例も知っている方なのでしょうか?
     実戦を経験した方が、自らの扱った武器の持つ問題点を率直に述べている以上の何かなのでしょうか?
     戦闘詳報等を適当に見ていても、同種の記述は見受けられますし、興味深い事に他国の対空射撃に関する報告でも様々な問題が上げられています。
     恐らく、当時、満足の行くシステムを成立させられたのは米国だけだと思いますし(いや、当の米軍が全然不足していると悲鳴を上げていますが)それは戦闘経験を直ぐに活用できるだけの膨大な開発生産リソースあってのものだったと言えるのではないでしょうか。
    SUDO


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