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292 ドイツ軍の装甲師団ってありますよね?書籍によって戦車師団って書いてあったり,機甲師団って書いてあったりするのですが,本当はなんて呼ぶのが正しいのですか?
装甲兵

  1. 装甲師団というのは日本のマニアがつけた勇み足の名称かな。70年代末頃から流行り出した言葉。
    戦車師団は直訳。昔から使われている名称。
    機甲師団は帝国陸軍以来の機械化装甲部隊の呼び名を冠したもの。
    装甲師団以外はどちらを使っても問題はないように思います。
    BUN

  2.  雑誌「アーマー・モデリング」によると、
    戦車をあらわすドイツ語「パンツァー」の原義が「装甲」であることから、
    一時期「パンツァー・ディビジョン」が「装甲師団」と訳されていたそうです。
    師匠が書かれているように、
    「戦車師団」または「機甲師団」としたほうがふさわしいとのことです。

    どんべ

  3. はじめまして。なぜか同じことを疑問に思い、ちょうど調べていました。

    装甲師団の由来は、加登川幸太郎氏の「帝国陸軍機甲部隊」によると、サンケイ大戦ブックス「ドイツ機甲師団」を翻訳した時パンツァー・ディヴィジョンを機甲師団と訳したのですが、昭和11・12年にヨーロッパに派遣された機動兵団視察団の報告書「機動兵団視察報告」でドイツの編成を装甲師団としているので本書から装甲師団と呼ぶようにしたそうです。報告書では各国の編成や運用の違いを認識した上でそれぞれ命名したようですが、その後この区分が利用された形跡はありません。

    私見ですが「帝国陸軍機甲部隊」が昭和49年(1974年)に出版され、これが出所かは不明ですが、1970年代中期に話が伝聞され、BUNさんの指摘する70年代末には、マニアの間で語感や英米との差別化などから由来も意味も知らずに普及したのかもしれませんし、英文でもドイツの機甲師団にドイツ語のpanzer divisionを用いることが珍しくない影響で翻訳者達がこの表現に飛びついたとも考えられます。原義はともかく70年代に生まれた新語というのが実体のように思えます。

    機甲師団の機甲は騎兵監吉田悳中将が昭和15年に発表した一連の論稿で使った造語で、歩騎別々に発達した戦車・機械化部隊を統合した新兵種機甲兵が生まれました。ですから原語は存在しません。

    私は機甲師団という呼称は時代・国によって全く異なる戦車部隊への総称として戦後、戦車の研究、戦史の編纂の際に戦車師団では使いにくいので便宜的に用いられ定着したのではと考えています。

    戦車師団は帝国陸軍が昭和17年に第1機甲軍隷下に編成された戦車第一師団、戦車第二師団で正式に採用した戦闘順列で、機甲を冠する師団は帝国陸軍に存在しません。
    ついでながら自衛隊は師団・旅団に兵科・兵種名を冠しませんが、自衛隊の資料では第7師団を機甲師団と区分するなど機甲師団が使われます。

    仮にドイツ機甲師団が正確な翻訳であり杓子定規に統一するならば、英文でgerman armo(u)red divisionを翻訳すると英語ではarmo(u)redを師団だけでなく大隊にまで冠しそれ以下にtankを冠すので、大隊までは機甲何々、中隊以下を戦車何々となり装甲車は機甲車になります。ドイツ語のdeustschen panzer divisionはpanzerが上から下まで使われるから二次大戦以降の装甲擲弾兵は機甲擲弾兵となってしまい、杓子定規に直訳はするものではないなと思います。

    日本では戦車部隊の歴史も実戦経験も主要参戦国に比べ浅いため前例が少ないが、半端に存在し、敗戦で系譜が絶たれたため帝国陸軍と自衛隊の二重構造があり、なにより日本語の曖昧さによって翻訳に差が発生するのはしょうがないことだと考えています。結局、ドイツ機甲師団はどれで呼んでも問題はないように思えます。
    長くてどうもスイマセン。


    ふじい

  4. 自衛隊で第七機甲師団とは言わないですが、職種(兵科)として「機甲科」はあるんですよ。
    (N)

  5. 一般的な書籍での「装甲師団」の使用は60年代から70年代初頭の戦争ドキュメンタリーまで遡れます。
    1962年 コーネリアス・ライアン「一番長い日(史上最大の作戦)」の近藤等訳で「装甲師団」が使用されています。
    1971年 パウル・カレル「バルバロッサ作戦」の松谷健二訳で「装甲師団」を使用。松谷はあとがきで、前に訳した「砂漠のキツネ」(1969年)では「機甲師団」と訳したが、指摘により今回は「装甲師団」と改めたと記述しています。

    70年代に「装甲師団」という言葉が有力になっていったのは、ふじいさんが指摘されるように翻訳に起因することは間違いないでしょう。ただし、tank、armored、panzerなどの語句が混用される文章を訳すときに、それぞれを区別するために、tank=戦車、armored=機甲、panzer=装甲 と訳したことは、機械的に過ぎるかも知れませんが、原文の用語法の違いを踏まえた訳として、一定の意義はあったと思います。すくなくとも一つの論説に出てくるtankもarmoredもpanzerもみんな「戦車」と訳して原文のニュアンスを無視すよりはマシでしょう。
    この点BUNさん、ふじいさんの70年代マニアあるいは翻訳者に対する評価は一寸厳しすぎるのではないでしょうか。

    個人的意見としては、戦車・機甲・装甲どれでもよく、特に装甲を否定することもないのではないかと思っております。

    ところで関連質問です。
    panzer grenadier はどう訳せばよいでしょう。
    また「装甲擲弾兵」という訳語はいつごろから一般化したのでしょうか?
    ちなみに松谷健二訳の「彼等は来た」(1974年)では、「機甲化歩兵」でした。

    長々と申し訳ございませんでした。
    カンタニャック

  6. >panzer grenadier はどう訳せばよいでしょう。
    偉そうにドイツ語云々言いましたがドイツ語初心者なのでひかえます。

    >また「装甲擲弾兵」という訳語はいつごろから一般化したのでしょうか?
    古本屋で調査した結果、70年代は様々な言葉が使われ、80年代に機甲擲弾兵がやや有利となり90年・91年に急激に装甲擲弾兵と呼ばれるようになります。何故でしょうか?

    「一番長い日」を確認しました。私の装甲師団70年代新語説は誤りです。
    翻訳者に対して鼻につく言い方をしたと反省しております。
    最近読んだ本の翻訳が出鱈目だったので感情的になっていました。
    私も四股踏んできます。
    ふじい

  7. 訳語の使用例があるという事実だけでしたらば「戦車投擲弾兵」という言葉も使われています。ただ、70年代半ば以前に自信をもって「装甲師団」と翻訳した人物は皆無ではないかとも思えますし、実際には当時パウル・カレルの著書は簡単に入手できる数少ないまともな戦記でしたが、広く読まれていた訳ではなく、そこでの訳語が一般に影響を与える情況ではありませんでした。70年代初頭に使われていた言葉は圧倒的に「機甲師団」と「戦車師団」だったのは事実なのです。専門用語を正確に訳す事や、その是非を問う事が可能なほどに広く知識も浸透していなければ、メディアも無かった時代のことで、日本の戦車ファンが自分で物を考えて独自の研究を始めるのはそれからたっぷり20年後の事なのですから、今も残る誤訳や珍訳はその名残としてほろ苦い印象で眺めております。
    BUN

  8.  訂正「戦車擲弾兵」です。
     今月号のPANZERで後藤仁氏が、装甲猟兵という訳語に対して、大変歯切れの悪い説明を行っていますが、これは昔から先頭に立って使ってしまった事に対しての引け目からの混乱でしょう。正誤は別として気持ちが理解できます。遅れて来た分野である戦車ファンのレベルは本当に低かったんです。
    BUN

  9. 「装甲師団」が一般化するのが、70年代末から80年代初期にかけてであることについては、全く同感です。私の友人のパウル・カレルのファンなどは70年代前半から「ドイツ装甲師団」といっていたと思いますが、これは極めて希なケースでしょう。
    「装甲師団」という語句の成立および普及についての私の仮説を述べさせていただきますと次の通りです。

    「装甲」自体はarmorあるいはpanzerの訳語として戦前からあった(ふじいさんがあげられた例の他にたとえば「見よ装甲の機動力…」という国民歌謡「戦車兵の歌」など)が、戦車部隊の呼び名としては定着しなかった。
    60年代、ジョン・トーランドの翻訳などで英語著作でのarmorとpanzerの使い分けが意識され、「装甲師団」や「パンツアーのルビ付きの戦車・師団」が使用された。(「バルジ大作戦」向後英一訳の68年3月の第5版では、「パンツァーのルビ付きの戦車・師団」が使用されていました。一般的にわかりやすい「戦車」を使用しながら原文のニュアンスの違いを示そうとした努力の結果だとは思いますが、文章は読みにくい。)ただし、このような翻訳上の努力は一般のミリタリマニアにほとんど影響を与えなかった。
    70年代初頭、パウル・カレルの一連の作品に「装甲師団」が使用されることによりミリタリマニアの一部に「装甲師団」という用語が認知されるようになったが、まだ普及はしなかった。
    70年代中期、英語版ウオーゲームの日本での紹介にともない、ゲーマー達の間で、armorやpanzerを(自分たちがゲームをするとき)どう訳すかという問題が発生。このとき、ドイツ軍マニア、その中でも戦闘序列マニア(作戦中の各師団の位置や充足状態などの解明に血道を上げる人々、ほぼ確実にパウル・カレルの愛読者)が「装甲師団」の布教を始めた。
    70年代末から80年代初期に、これらのコアなウォーゲーマー達が英語ゲームの翻訳、解説、日本語ゲームなどで「装甲師団」を普及させた。その後、ボードウオーゲームの衰退と共に「装甲師団」派も衰退し始める。

    私は70年代のウォーゲームマニアの動向はある程度わかるつもりですが、それ以外のドイツ軍ファン、戦車ファン一般の動向はわからないので、まちがっっているかも知れませんが、どうもゲーム界の「装甲」化が時期的に少し早かったようなところからの推理です。

    私は70年代前半は世界史系戦史マニアで、74年以降はゲテ物系(第二次大戦以外)ウォーゲームマニアでしたから、これらの動きは横目で見ていただけですが、当時のOBマニア諸氏のレベルは、今の目から見れば不十分でしょうが、ドイツの公刊資料のチェック程度まではやっていました。BUNさんがおっしゃる戦車ファンとは一寸違うタイプの人達のように思えます。

    自分ではそのつもりはないのですが、昔の友人達の名誉の問題と考えて、私も一寸ムキになっているのかもしれません。そうでしたらごめんなさい。
    (もっとも私個人については、そういうコアな友人達につられて勇み足しつつ追従しただけですから、その点をBUNさんふじいさんに指摘されればごもっともと頭を下げるだけです。)

    蛇足
    >今月号のPANZERで後藤仁氏が、装甲猟兵という訳語に対して、大変歯切れの悪い説明を行っていますが、これは昔から先頭に立って使ってしまった事に対しての引け目からの混乱でしょう。正誤は別として気持ちが理解できます。遅れて来た分野である戦車ファンのレベルは本当に低かったんです。
     シロウトの怖い物しらずでいわせていただければ、駆逐戦車大隊(あるいは戦車駆逐車大隊)を装甲猟兵大隊と訳すのは明白な誤訳でしょう。これがOKなら、Bf109猟兵とかHe162国民猟兵といった訳がまかり通りますよね。
     BUNさんは単に誤訳の典型例をあげられただけかも知れませんが、全文の文脈から見るとどうも「装甲師団」を誤訳・珍訳の一種とお考えのようにも受け取れます。もし「装甲師団」を「装甲猟兵」と同じレベルの誤訳・珍訳だとお考えなら、首をかしげざるを得ません。
    また一般論としての過去のマニアのレベルの低さの話をなさったのだとすると、(そのことは過去のマニアの一人として全面的に認めますが、)個別問題の正否の決定根拠にはなりません。

    うーん、やはりムキになているかな。
    基本的には老人の繰り言です。適当に相手してやって下さい。(^^ゞ

    また長々と書いてしまいました。
    すみません。
    カンタニャック


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