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4659 日本軍部は100オクタンガソリンの開発をしていたが失敗した、と聞きました。
・事実、真相はどうなんでしょうか??
・独、英は開発出来たんでしょうか??
・また、独が出来たんなら、技術供与は何故無かったんでしょうか??
よろしくお願い致します。
サブロー

  1. 原料の原油そのものが、カリフォルニアの油田から産出するものでしか、100オクタンガソリンを精製できないと聞いたことがありますが?

    霞ヶ浦の住人

  2.  別にイソオクタンだけにすれば100オクタンですから開発も何も、普通の何処の国にも100オクタンのガソリンを得る手段はありました。
     無かったのは量産する技術とそれに適した原油です。
     ガソリンは、酷く乱暴に言うと原油を加熱蒸留して一定の揮発性の範囲のものを「ガソリン」として利用します。よって原油次第で揮発性も含有される成分も異なり、数度の処理や添加物を加える等でベースになるオイルを作り、それに四エチル鉛や別種の炭化水素等(例えばベンゼックス)を加える事で、一般に100オクタン前後のガソリンにします。
     つまりは原油が違うと用いる技術も異なるのです。
     ドイツの技術も日本に導入されていますが、結果論で言うと、それで作られたガソリン量は然程多くは無く、またドイツの技術(接触分解法)は高度な割に効率が悪く、これはガソリン向けとは言い難いコーカサス原油の成分によく対応したものですが、日本で主に用いられたのは戦前は樺太、カリフォルニア等の原油であり、また戦争中は南方原油で、これらには直留や混合式が比較的に向いており、またその方面で工夫されています。
     また問題になったのは、イソオクタンを始めとする混合させるべき添加物の生産でした。ネオヘキサンやベンゼックス等を適量混合させて適切に四エチル鉛を加えると100以上のオクタン価相当すら発揮可能なのですが、これらを効率的に生産する手段が難しかったのです。よって日独では原油を頑張って何とかガソリンに精製するところで努力せざるを得なかったともいえます。
     英米のように収率が恐ろしく低い特種添加物を原油から別途抜き出して、また別の原油から作った比較的素性の良い生ガソリンと混ぜて超高性能ガソリンにするというような贅沢な手段は、日独では原油取得量とその産地(成分)の選択肢が少ない事から事実上用いる事はできなかったとも言えるでしょう。
    SUDO

  3.  日本本土内では生産はできますが、量産は出来ません。
     ドイツの航空燃料生産をみると石油からの生産より、原油から取ったタールや、石炭乾留によるタール、そして石炭に直接水素添加を行なう水素添加法によるものが大半を占めていたことがわかります。ドイツ機に多用されていた95オクタンが生産できるのですから、100オクタンへ向かわなかったのは量を確保したかったのと、水メタノール噴射などで解決できると思ったのではと想像しています。
     ドイツは基本的に日本に燃料製造技術を無償では技術供与しません。有償でも技術供与をいやがります。また、与えた技術も日本では製造プラントにする能力がありません。
    雑学研究家

  4. ありがとうございます。お陰で状況が分かりました。
    では、戦争開始前に、中島が誉を開発する際に、軍が100オクタンガソリンの確保を約束した話しは有名ですが、その技術的根拠、開発への取り組みは無かったと言う事でしょうか??
    また、今日の無鉛ハイオク(100オクタン)の製造技術は、当時では考えられなかったハイレベルの新技術なのでしようか??
    よろしくお願い致します。
    サブロー

  5.  開戦を迎えず、米国と仲良く出来れば5年ほどで量産設備を作れたでしょう。仲直りできなければ10年はかかったでしょう。当時のあったのは「夢」だけであります。
    雑学研究家

  6. >3
     石炭系の芳香族炭化水素ってば、ピクリン酸、TNA、TNTの減量でもあったというのが理由ではないかと・・・。
     つまりはベースになるコークス生産の副産物が僅少であり、そしてその殆どを火薬に回さないといけないという状況が大きな影響を齎してると思います。
    SUDO

  7. ご参考までに、以下の文献を紹介します。

    *石油の世紀―支配者たちの興亡〈上〉
    [原書名:THE PRIZE : The epic quest for oil, money and power]
    ISBN:414005168X 日本放送出版協会
    ヤーギンダニエル:著 日高義樹・持田直武:共訳 

    (同書:524頁〜525頁から抜粋)
    1940年7月19日、ルーズベルトは(中略)資源供給、「とりわけ戦争
    を遂行するための燃料の補給」を打ち切ることが結論だ、と(中略)語った。
    (中略)その結果、禁輸はオクタン価87以上の航空機用ガソリンと一部の鉄鉱石、クズ鉄に(中略)された。アメリカの飛行機はオクタン価100のガソリンを使っていたので、禁輸はアメリカ軍のガソリン供給を確保することにもなった。END
    無奈

  8. >今日の無鉛ハイオク(100オクタン)

    米国では自動車用ハイオクは92です。これはRON (Research Octane Number) とMON (Motor Octane Number) の平均値を表示することになっているためで、これをAKI (AntiKnock Index)と呼んでいます。日本はRONを使っており、米国の92は日本の100に相当するらしいです。で、気になったのですが、良く議論されている航空機エンジンのオクタン価は、どっちに相当するのでしょうか。この話、自動車用ハイオクエンジンが航空機に使えるか、という話題でSUDOさんがお答えになっていたかもしれないのですが、もしそうであれば申し訳ありません。

    ちなみに、アメリカの現用レシプロエンジンのオクタン価は97位だったと思います。
    富士見町

  9. >8
     少し前のログに出したと思いますが。
     日本で用いていた航空用ガソリンのオクタン価はMONであるASTM自動車法です(確かドイツのも)
     米軍のはASTM航空法相当で、自動車法よりも負荷条件が厳しくなってます。
     また別にRONとMONは結果に差が出るともいえません。
     つまり成分によって、負荷によってオクタン価が変るものもありますが、変らないものもあるんです。
     例えばベンゾールは高負荷では覿面に悪化しますが、昨今の市販ガソリンでは環境問題等もあって使われてません(一時期のTVCMでベンゼン全廃とかってやってように)このベンゾールは自動車法ではオクタン価100以上ですが、高負荷の航空法では88にしかならないもので、恐らくリサーチではもっと良好なパフォーマンスを出し、少量配合でもガソリンのオクタン価を引き上げたと思われます。ベンゾールを含む芳香族炭化水素は負荷に比較的敏感で、これを使ってオクタン価を引き上げていると、高負荷の試験では成績が悪くなるといえます。
     またイソパラフィン系炭化水素は負荷に鈍感と言うか、イソパラフィン系のイソオクタンが、どの試験でも基準値である100なので、つまりはRONでもMONでも100であり、これを主成分にしていると変らないといえますし、各主成分を内包したベース揮発油も比較的負荷変化に鈍感ですので、芳香族含有率が試験法による差異の最大原因ともいえます。
     やはりTVCMでアピールされていたアルキレートガソリンこと、アルキル法で精製したものは主成分がイソパラフィン系炭化水素のトリメチルブタンやイソオクタン等ですので、どの試験法でも100相当になり、昨今の国産ハイオクガソリンはこれが一般的なようです。
    SUDO

  10. >9.

    ご丁寧にありがとうございました。
    富士見町

  11.  ドイツにおける石炭乾留は、石炭ガス(都市ガス)生産を主目的とする乾留、製鉄用コークス取得を主目的とする乾留、燃料用モーターベンゾール及び水素添加原料用タール取得を目的とした低温乾留(主に褐炭を原料とする)の、3つに大きく分かれていたと思われます。戦前・戦中これらの乾留によるタール(重質油)生産はかなりなものになります。また、石炭直接液化法(石炭をペースト状にし液状化した後、水素添加する)により製造された原油から航空燃料やさらに水素添加(二次水添)用の重質油やタールを取得します。そして、これに石油精製による重質油やタールの一部が水素添加の原料となるのです。連合国の爆撃による人造石油製造設備破壊による航空燃料生産量の減少は有名な話ですが、原料のタールや重質油の不足が航空燃料の生産を阻害した話を私は知りません。
     なお、米国が100オクタン製造の柱とした、フードリ接触分解法はごくありきたりの灯油や軽油を原料とします。
    雑学研究家

  12. >11
     そりゃドイツでは原料である石炭とその加工プラントに十分な量があるのですから、原料不足はおきがたいでしょう。
     日本の100倍近い弾薬生産を行えたドイツの、トルオールとその原料になるベンゾールの生産能力は、日本の100倍以上あった事は疑う余地はないでしょう。それこそ燃料とTNT双方を賄えたとしても不思議は無く、逆にTNTすら賄いきれずに他火薬へ移行していった日本で、火薬以上に消費するであろうガソリンにベンゾールを提供できる余地は無かったのではないかと述べたのですが?
    SUDO

  13.  すいません。てっきりドイツのことだと思っていました。日本で水素添加がうまくいかなかったのは、設備が不完全なことと、製造ノウハウがなかったからです。原料としては取得の容易な石油からの重質油(重油でいい)の方がより容易に収率良くハイオクタンの航空燃料を製造できるのですから。
    雑学研究家

  14. >13
     重質油からの精製で得られるガソリンのオクタン価は70〜80程度なんです。これは直留で得るのと同じレベルなんです。つまり水素添加法は低オクタンガソリンを得る手段の一つでしかないのです。
     ハイオク燃料は、その低オクタンのベースガソリンに、別途生産したベンゾールやトリメチルブタンといったものを配合して作るんです。
     だからハイオク取得の鍵は、ベンゾール、トルエン、イソオクタン、トリメチルブタンといった特殊な配合物の大量生産能力に求められるのです。
    SUDO

  15.  重質油に水素添加し生成した揮発油に、再度水素添加し高オクタン化しようとしたのが日本での流れだったと思っていたのですが。
     日本でのハイオク取得の鍵は、接触分解による揮発油(オクタン価78−95)の生産だったのではないでしょうか。アルキレートは油田や精製設備の貧弱さから話になりませんが、イソオクタンは辛うじて量産できたのですから。(クメンは日本では無理)
    雑学研究家

  16.  いやあ、だから多段接触分解や水素添加で得られるのは80に届くかどうかなんです。
     勿論イソオクタンと4エチル鉛を混ぜる事で95に出来ますが、オクタン価90の加鉛ガソリンとイソオクタンを混ぜてオクタン価95にするには、ガソリンと同量のイソオクタンが必要です。果たしてイソオクタンはそんなに大量に作れたんでしょうか?
     つまりはイソオクタンの生産量が、ハイオクガソリン取得の鍵なんです。
     水素添加法での揮発油生産と、熱硫酸法や燐酸法によるイソオクタン生産は別のものです(どちらも水素添加で見かけ似てますが)
     再度水素添加して高オクタン化というのは、つまりはイソオクタンを精製するという行為であり、イソオクタン等の、配合させるものの生産能力が鍵だというのと何も変りません。
    SUDO


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