5365  いつも勉強させていただき有り難う御座います。今回は航空機エンジンの高度とその高度における最高出力について質問します。この関係については今ひとつ分からず、色々と考えてましたが、一応、以下のように結論しました。但し、エンジンは一段二速の過給器付きのもので、公称一速、公称二速があります
 1)高度0で離昇出力を出す。
 2)高度が上がるにつれて最高出力(以後「最高」の字は省きます)は下がる。
 3)所定の高度になると過給器を一速に入れる(それまでは過給器は働かせていない、0速というのでしょうか)。すると出力は上昇に転ずる。
 4)高度の上昇につれて出力は上昇するが、或る高度を境に出力は低下に転ずる(この出力の山が公称一速)。
 5)所定の高度になると過給器を今度は二速に入れる。すると出力は上昇に転ずる。
 6)高度の上昇につれて出力は上昇しますが、或る高度を境に出力は低下に転ずる(この出力の山が公称二速)。
 7)その後、高度の上昇につれて出力は低下するだけである。

 xyのグラフ(y:出力、x:高度、座標原点では出力、高度ともに0)にしますと(極めて荒っぽいグラフですが)、以下の通り。

|離昇出力
|\  公称一速
| \/\  公称二速
| \/\
| \
| \

+−−−−−−−−−−−−x

但し、離昇出力>公称一速>公称二速とします。
 これで良いのでしょうか。
二一斎

  1.  すみません。グラフがうまくかけませんでした。無視してください。
    二一斎

  2.  もっと詳しい方からの突っ込みが入ると思いますが、簡単に…。
     通常、飛行機がもっとも馬力を必要とするのは離陸時であり、そのため一段二速エンジン装備機では、離昇出力を出す場合には一速を使い、過給器を使わないということはありません。
     ただ、離昇出力ではエンジンの回転数やブースト圧を飛行時に使用する公称出力より高い値に設定していることが多く(栄二一型なら、離昇では2,750rpm・+300mmHgですが、公称では2,700rpm・+200mmHgといった具合)、そのため連続使用時間を数分に限定している場合が多いです。
     なお、飛行中に離昇時とほぼ同じ条件(またはそれ以上の条件)でエンジンを回すことも可能で、日米英とも「戦闘出力」や「War Emergency」として、時間制限付きでの使用を許可しています。
    T216

  3.  えっとですね#1でT216さんが述べてるように、過給器は普通使わないということは無いです。
     で、エンジンの馬力は大雑把に言うと、吸気圧に比例し、吸気温度に反比例します。吸気温度は大気温度と過給器の圧力比と効率、吸気圧は大気密度x過給器の圧力比にしたがって上がります。
     過給器の圧力比は過給器の大きさに比例し、回転数の二乗に比例します。一般にはエンジンの回転数x増速ギヤ比が過給器回転数。過給器の駆動馬力は圧力比と通過空気量と効率で増減します。
     以上から、1速は、低回転で低消費馬力ですが、圧力比も低くなり、2速は高回転で高消費ですが圧力比も高くなります。
     エンジンは運転モードによって、許容する吸気圧が定まってますから、例えば+300mmHgとは、吸気圧は絶対値で760+300=1060mmHgですから、高度0なら1.5倍弱の圧力比があれば間に合い、高度6,000mですと3倍ぐらいの圧力比が必要になります。だから、大抵のエンジンでは1速は1.5〜2倍ぐらい、2速は2.5〜3.5倍ぐらいの圧力比を設定します。
     さて、これで吸気量は確保できますが、設定された許容ブーストよりも多くの吸気圧を、想定高度以外ではかけてしまいます。例えば圧力比2倍の過給器で+300を定格とした場合、高度0では大気圧760mmHgの2倍で1520mmHgを作ってしまいます。500ほど余分ですが、この余分は使わないで捨てます。
     でも、2倍の圧力比で1520も作ってしまったので、吸気の温度はその分上がってしまいます。つまり+300ブーストであっても、2倍ギリギリで間に合うような高い高度(つまり温度も低い)時よりも吸気温度は高いので、馬力は下がってしまいます(勿論、余分な過給器性能も駆動馬力の損失で損です)結果的に、エンジンの馬力はその変速範囲では全開高度が最高になります。それより下の高度では温度のせいで馬力が下がり、それより上の高度では大気圧x圧力比が吸気圧設定上限に足りなくて馬力が下がるのです。
     これは2速でも同じようにおきます。2速はより大きな圧力比ですから、吸気温度は更に上がり、駆動馬力も増えます(大気温度は下がってるのですが、これは過給器の圧力比からくる吸気温度上昇には勝てません)だから1速よりも2速のほうが馬力は下がります。
     離昇はどうしても馬力が欲しいので、同じ吸気圧と回転数では公称1速よりも低馬力ですが、許容ブーストと回転数を増す事で、上乗せする事で馬力を稼ぎ出してるのです。同じ運転条件では高度を上げたほうが(吸気圧が得られるなら)馬力は大きくなります。
     以上から、エンジンの馬力は高度によって上がったり下がったりしていくということになります。
    SUDO



  4. |   公称一速
    |  /\  公称二速
    | /   \/\
    |        \
    |         

    +−−−−−−−−−−−−x

    ということですね。
    離昇出力はブースト圧が違うから、同じグラフの線上にないんです。


  5.  皆様、回答有り難う御座います。大体はわかりました。ただ、いかんせん素養が無いので得心が行くというところまで行けません。そこで、素人にも、こういった航空エンジンについて分かるように解説してある書籍があったら紹介して頂けると有り難いのですが(書店に行っても良いのが見つからないものですので)。
     それと、これは追加質問になりますが、過給器の0速についてです。私も二速過給器は一及び二速だけかと思っておりました。しかし、野原茂氏著の「日本陸軍軍用機集」(グリーンアロー出版)のP.189の上側に四式戦「疾風」の操縦席左側の図解があります。そこに過給器回りのレバーが描かれているのですが、過給器運転の速度選択レバーは0速選択ればーと二速選択レバーの二つでした(一速選択レバーはありませんでした)。この0速を選択できるのはハ45又は疾風独特のものだったのでしょうか。
    二一斎

  6. 一速、二速はマニュアルシフトの自動車と同じで、しかも飛行機の場合ニュートラルがありませんから、二速切換槓桿で一速と二速を切換えます。
    零速切換槓桿は・・・・そのレバー、取説にはあるのですが、四式戦の実機には存在していません。


  7. ちょっと訂正しますね。
    取説の図上にはあるのですが、実機には存在していません。
    残された実機のコクピットでも確認できますし、取説本文でも「現在はナシ」と注記されています。


  8. >5
     えっと、理科年表かな?
     空気は圧縮すると暖かくなる、暖かい空気は膨張するので密度が低くなる。高度が上がれば大気密度と温度は下がる。
     以上が判れば理解できると思うんだけど、難しいですか?
    SUDO

  9. >6、>7
     そうですか、無いものなのですか。片様、貴重な回答有り難う御座います。
    >8
     SUDO様。大体、用語からして良く分からないものがあります。例えば「ブースト」とか、・・・何せ素人ですので。
    二一斎

  10. >9
     ブースト=吸気圧(過給圧)です。
     絶対圧(ABS)で記す場合と、地上気圧からの増減値で記す場合あり。
     第二次大戦時の主要国では
     ドイツは絶対圧表示で、単位はATA(1気圧=1.0ATA)
     米国は絶対圧表示で、単位は水銀柱インチ(1気圧=約30インチ)
     英国は増減圧表示で、単位はPSI(ポンド・平方インチ、ポンドなのでlbで記すこともあり)1気圧分は14.7PSI
     日本は増減圧表示で、単位は水銀柱mmHg、1気圧分は760mmHg
     仮に吸気圧(ブースト)が絶対圧で2気圧だった場合
     ドイツでは2.0ATA、米国では59.8インチ、英国では+14.7PSI、日本では+760mmHgと表記します。
    SUDO

  11.  SUDO様、ご教授有り難う御座います。もう一度トライしてみます。
    二一斎


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