5420 九九式艦爆、彗星艦爆、SB2Cなどの艦上爆撃機は、いずれも前方固定機銃を搭載していますが、目的は何なのでしょうか。
敵戦闘機との空戦でしょうか。
雷撃機は後方旋回機銃しか無いのが多いように思いますが。
ねのひ

  1. 艦爆は空中で格闘戦を行う機種です。
    BUN

  2. 本来のドクトリンでは、「艦爆が敵空母を制圧して制空権奪取」→「艦攻による敵主力艦雷撃」と移行します。
    敵戦闘機がわんわん待ち構えている敵空母上空に強襲をかけるための機種ですから対戦闘機戦闘能力が付与されているのですが、現実的には強襲を完遂するためには艦爆は敵戦闘機に当たらせないのが好ましく、戦爆連合として味方戦闘機援護下に攻撃すべきであるという方向に傾いてゆきます。


  3.  便乗質問失礼します。てっきり攻撃機と出くわしたときの対抗手段と地上や銃手を撃つためと思ってました。艦爆のみで直掩のいる空母艦隊を襲ったケースもあるのですか?
    ど素人

  4. 太平洋戦争開戦前までの常識は我々が抱いているイメージとかなり異なります。
    この時代には戦闘に参加する空母の数、飛行機の数から考えて洋上の航空戦では母艦を掩護できる戦闘機の数を十分に確保できないと考えられています。母艦を集中運用する戦術が一般的になるまでは母艦が直衛戦闘機として割ける戦闘機はごく少数で、多数機による攻撃隊を阻止できないと予想され、そのために攻撃の成否は先制攻撃を実施できるかどうかに掛かっていると思われています。
    艦爆はその先制攻撃のためにつくられた機種ですが、だからといって爆装した艦爆が空戦しながら突撃することはなく、艦爆による強襲が成功する要因は多数機による先制攻撃とその速力にあります。この点で少数機で接敵する二座水偵が敵直衛戦闘機との空戦を覚悟しているのとは異なります。それゆえに高速雷撃機の要求は低くとも艦爆には早くから高速艦爆が求められているのです。
    艦爆の空戦性能はその生い立ちに艦戦流用による急降下爆撃機があり、専用のニ座機となってからも複座戦闘機の発想を引き摺っているからで、「身軽なニ座機は補助戦闘機としての能力を求められたから」というのが現実に近い説明になるようです。



    BUN

  5. 各機種の用法研究は戦前各年度の演練の中で検証され、作り上げられていったものです。「艦爆のみで直掩のいる空母艦隊を襲ったケース」などというのも演習上では行われています。
    艦爆が二座戦闘機として、例えば、自艦隊上空の警戒を行い敵機捕捉後防御空戦に入るという用法がむしろ分相応なものではあったのは確かと思いますが、戦前の艦爆隊の空戦訓練では爆撃前後に予想される対戦闘機防御戦闘法に重点が置かれていた、というある種の「建前」が存在していたらしい形跡も見受けられます。しかし、むしろ高速高高度隠密接、あるいは敵味方援護戦闘機との連合こそ確立させなければならない用法であるとされながらの対戦闘機空戦訓練なのですから、これはどこか付け足し的な気配を隠し切れないものでもあります。
    昭和17年には、むしろ対戦闘機戦闘は行わずとして、前方機銃を撤廃し、その分の性能的余裕を高速大航続距離に充てるべきであるという空技廠提案が行われるに向かっています。
    結局のところ、高速隠密接的させるべき艦爆の空戦用武装については、戦前期に十分にその意味が練りこまれていなかったのではないかと想像するのです。



  6. 質問者です。
    ご回答ありがとうございます。
    投弾前の艦爆が空戦を行い、敵機を振り切って敵艦隊に強襲をかけるのは、実際問題として相当難しいのではないかと思いました。
    やはりWW2開戦前は、各国とも空母艦爆の運用法には試行錯誤していた、その結果を我々は事後的に眺めているから、艦爆に固定機銃を搭載していたのが、なんか奇妙に感ぜられるのかと思います。
    ねのひ

  7. BUNさん、片さんんのご説明で理論的には納得できるのですが、流星が(計画は昭和十六年に遡るとはいえ)彗星に比べて強化された前方武装をもち、最後までその武装を維持した理由はどのあたりにあるのでしょうか。ミリタリ音痴故誤解があるかも知れませんが、よろしくお教え下さい。
    カンタニャック

  8. 昭和11年の性能標準に艦爆の特性として「航続力なるべく大 速力上昇力並びに空戦操縦性能(無爆時)優秀なること」とあるように艦爆の空戦性能は無爆時に求められるもので、爆装のままの空戦は演習のテーマとして挙げられる「多座機の空戦」と同じく、積極的な空中戦闘という意味ではありません。
    昭和13年以降、性能標準中の特性の項目には「2) 速力上昇力優秀 3) 下記性能満足の上は極力格闘戦能力を向上せしむ」となり、速力、上昇力により重きを置き、その上で格闘戦能力を求められるようになります。各種性能の微妙な位置付けの変化が興味深いところです。

    また十六試艦攻の兵装は彗星と同じ7.7mmで計画されています。
    兵装強化は途中から盛り込まれたもので、水上爆撃機の瑞雲にも同じような途中からの兵装強化が見られます。そこから用法の変化を読み取るのは難しそうです。
    BUN

  9. ありがとうございます。
    カンタニャック


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