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3130 いつも興味深く拝見させていただいてます。とても勉強になってます。
今回は陸軍の徴用輸送船となった「金華丸」に搭載されたというレーダーについてお聞きしたくあります。「金華丸」にはドイツ製のウルツブルグレーダーが搭載されたということですが、これは第二次輸送(レーダーの)により日本に届いた器材より製作されたものでしょうか。或いは、遣独潜水艦伊8
号によりもたらされた完成品だったのでしょうか?上田画伯御自らのお話でありますので、ウルツブルグ搭載のことは事実とは思いますが…どうなんでしょうか。もし、情報等をご存知の方がおられましたら、ご教授のほどよろしくお願いいたします。
ガッビアーノ

  1. 直接の回答ではありませんが。CQ出版の「幻のレーダーウルツブルグ」によると、日本製ウルツブルグの試作1号機が完成したのは昭和19年末。この1号機は調整の後(調整にはかなり手間取ったとのこと)久我山の15cm高射砲陣地に備え付けられたとあります。日本無線三鷹工場で2-5号機の生産を行っており、少なくとも2号機は完成したとあります。

    また、この本の前書きにはウルツブルクは国産化されたものの実戦に使用されることはなかったと書いてあります。

    一方、ウルツブルグの技術を利用した「た号改4型」を筆者は「佐竹式ウルツブルグ」と呼んでいます。ウルツブルグの波長50cmに対して、「佐竹式ウルツブルグ」は波長1.5mですが、その分技術的に容易であるため20年正月から大量生産に入っています。

    潜水艦輸送の方ですが、第一次輸送の伊30はシンガポールで触雷・沈没しており、引き上げたものの機器・図面とも使い物にならず。第二次輸送はイタリア潜水艦ババリーとトロリーが担当。途中ババリーは沈没し、トロリーのみが18年8月30日にシンガポール着。図面はシンガポールから先は飛行機で運ばれ、9月13日に東京に到着しています。どうもこの時に着たのは図面のみのようです。但し、図面だけでも5,000枚あったそうです。パラボラだけでも直径3mあるので、組み立てに必要な全ての機器を潜水艦で運ぶのは難しいように思えます。

    従って、本物のウルツブルグが輸送船に搭載されていたとは考えにくく、レーダーが搭載されていたとしたら「佐竹式ウルツブルグ」ではないでしょうか。
    富士見町

  2. 訂正です。

    第2次輸送の際、図面はババリーに搭載されており、従って水没しています。トロリーにはドイツ人技師のフォダス氏と佐竹中佐および技術資料が乗せられており、このため図面が失われた後、フォダス氏と佐竹中佐で「佐竹式ウルツブルグ」の検討を行い、またフォダス氏も日本到着後しばらくの間はこの研究をサポートしていました。図面が届いたのは19年の1月で、伊8が運んできていますね。
    富士見町

  3. >富士見町さま、ご丁重なるご回答ありがとうございました。
    伊30号の海没(英軍の機雷でしたっけ?)は聞き及んでおりましたが、第2次輸送も失敗していたのですね。「佐竹式ウルツブルグ」説、なるほとど関心してしまいました。ちなみに、「佐竹式」はウルツブルグに類似した、パラボラ型だったのでしょうか?もし分かるようでありましたら、お教えいただけないでしょうか。上田画伯が描かれた「金華丸」のイラストのウルツブルグレーダーと私が雑誌の写真で見た同名のレーダーの形が違うようであり別の型式のレーダーが存在したのではとも考えておりました。めるぼるん丸(だったかなぁ)の後マストのパラボラアンテナも同一のものかと気になります。伊8号も完成品や器材までは輸送できなかったようですね。
    ガッビアーノ

  4. パラボラではないです。2.6m四方の平面反射板で、そこに長さ1.9mの八木アンテナが4本装着されています。

    測距精度はは40kmで±100m。本物は40kmで±20mとなっています。
    富士見町

  5.  画伯の描かれたものはパラボラですね。
     http://www.aa.cyberhome.ne.jp/~museum/19441114kinka/15kink-pict.htm
     絵画ですので、記憶に基づくものか、後から資料を見て描いたものか分かりませんが。
     
    hush

  6. >富士見町さま早速のご回答ありがとうございました。やはり陸軍で試作された「タチ」型のような平面型でしたか。うーんっ困った。
    >hushさま、情報ありがとうございます。
    この上田画伯のイラストは私も存じておりまして、故に今回の質問の原点となっております。月刊MG誌の岩重多四郎氏の連載に記事においては、「ドイツから供与されたウルツブルグ対空レーダー。2基を陸海軍が1基づつ分け合い、海軍は研究、陸軍は気前よく金華丸に搭載。搭載工事は神戸川崎で実施、詳細は不明云々」と記されておりました。憶測ですが、やはり何らかの別ルートで完成品或いは器材が日本に到着していたのかもしれません。戦後に描かれたイラストではありますが、乗船していた画伯の記憶や一部の各船のスケツチが残されていることを考えるとどうしてもパラボラ型はどうしても否定できない状況にありそうです。
    ガッビアーノ

  7. 陸軍武官の報告書によると、「ウルツブルグD型の制作見本機材は3台取得(1台は海軍に分譲)、出国手続き完了」とありますが、これが伊30につまれていたもののようです。さらに、計画としては、当初「50台程度の電機部品を全部輸入して」とあります。パラボラに関しては分かりません。国産ウルツブルグのパラボラの作製は東洋工業(元マツダ)がおこなっております。オリジナルはパラボラを2分割できる型式だったそうですが、制作困難なため国産では3m一体型としたそうです。

    「幻のレーダーウルツブルグ」は、日本無線の技師の方が書かれているため、記述内容は電子部品が中心で、また資料の多くが消却されているため、記憶に頼って書かれいる部分もあります。

    従って、ウルツブルグの輸送も含めた全貌が分かる訳ではないですね。ひょっとすると伊8が実物を運んできたのかもしれませんが、そのことに関連する記述は全くありません。

    1。では直径3mとしましたが、実際には2分割できるそうなので、搭載はどうなんでしょうか。輸送用の水密倉庫みたいなものを搭載していれば、運べないこともなさそうですが。この辺りは詳しい方のご意見を伺いたいです。

    http://yokohama.cool.ne.jp/esearch/sensi-zantei/sensi-igo2.html

    ここに、遣独潜水艦の話があるのですが、「対空射撃指揮装置の製造技術」とは書いてありますが、本体に関しては記載はありません。
    富士見町

  8. >富士見町さま、引き続きありがとうございます。
    >陸軍武官の報告書によると、「ウルツブルグD型の制作見本機材は3台取得(1台は海軍に分譲)、出国手続き完了」とありますが
    ゲッ!3台取得ですか。海軍へ1台分譲は事実だったのですね。パラボラの製作が東洋工業ということも初めて知りえました。本体と同一会社の製作とばかり思っていました。
    >従って、ウルツブルグの輸送も含めた全貌が分かる訳ではないですね。ひょっとすると伊8が実物を運んできたのかもしれませんが、そのことに関連する記述は全くありません。
    そうですか、伊8号あたりが「2〜3台輸送完了」などという記述があればスッキリするんですけどねぇ。2分割のアンテナならば輸送もOKですね。なるほどなるほど。貴重な情報ありがとうございました。感謝します!

    ガッビアーノ


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