英空軍 イスパノ 20mm 機関砲



解説

 イスパノ 20mm 機関砲の歴史は第一次大戦時(1913年)のドイツ製ベッカー 20mm 自動砲にさかのぼる。大戦後の 1930 年代、スイスのエリコン社とフランスのイスパノ−スイザ社はベッカー砲を原形としたエンジンマウント装備の航空用機銃開発をスタートさせた。このプロジェクト自体は商品として結実しなかったものの、エリコンはこの経験をもとに有名な「FF 型 20mm 機関砲」を開発、イスパノ−スイザ社もまた独自に研究を進め「404 型モーターカノン」を開発した。
 イスパノ−スイザ 404 に興味を持った英空軍は、1935 年にライセンスを取得し「イスパノ Mk.I」として採用した。しかし原形のままでは不満な点が多く、独自の改良を施して 1940 年に完成させたのが「イスパノ Mk.II」である。
 イスパノ機銃は反動+ガス圧利用によるロング・リコイル作動方式で、発火時に遊底が固定される「ポジティブ・ロッキング・ブリーチ」発火方式によって高い作動性を持っていた。給弾方式は当初 60 発入りのドラム弾倉だったが、1941 年以降はベルト給弾が標準となった。
 試作的な Mk.III, Mk.IV を経て、1943 年には改良型の Mk.V が登場した。Mk.V は銃身の短縮や再装填装置の省略などによって軽量化を実現し、発射速度を向上させたものである。Mk.V は 20mm 機関砲として非常に完成度が高く、ADEN 機関砲に置き換えられる 1955 年まで使われ続けていた。


サブタイプ

名称採用年度概要
Mk.I1935フランス仕様のライセンス版。
Mk.II1940英軍仕様、後期以降はベルト給弾。
Mk.III?エンフィールドによる改良型、試作のみ。
Mk.IV1942Mk.II の短銃身版。Mk.V 開発の予備実験用。
Mk.V1943短銃身、軽量型。発射速度 750rpm。

要目

名称 Hispano Suiza 20mm
製造元 The British Manufacturing and Research Company
Barmingham Small Arms(BSA)
採用年度 1935
作動方式 反動利用(ガス圧による補佐あり)
同調装置 なし
重量 49.9Kg(Mk.II)
38.1Kg(Mk.V)
全長 2380mm(Mk.II)
2075mm(Mk.V)
銃身長 1715mm(Mk.II)
1410mm(Mk.V)
線条 9条右回り
使用弾薬 20x110
口径 20mm
銃口初速 878m/s(Mk.II)
838m/s(Mk.V)
発射速度 650発/分(Mk.II)
750発/分(Mk.V)
給弾方式 ドラム弾倉(Mk.I, Mk.II)、金属ベルト
装弾数 60 発(ドラム弾倉)
主な搭載機 英軍機全般

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