フリート10/16 フィンチ

 フィンチの原型は1934年のフリート・モデル7の中国向け改修型であるモデル10である。
 モデル7にブレーキ付き主車輪、尾輪、尾翼の変更などいくつかの改修が施された結果、名称はモデル10と変更された。
 フリート・モデル10は中国向けにモデル10A(キンナーK5星型5気筒100馬力)が6機、モデル10D(キンナーR5星型5気筒160馬力)を30機、及び10Dのノックダウン用部品20機分が輸出された。
 更にモデル10シリーズはアルゼンチン、ドミニカ、イラク、メキシコ、ニカラグア、ポルトガル、ベネズエラ、ユーゴスラビアに売れ、隠れたベストセラー機となった。
 カナダ空軍はモデル10Dを1938年9月に審査した結果、曲技練習用に装備を改めた仕様を要求した。これがフリート・モデル16で、カナダ空軍ではフィンチ(Finch:アトリ科の小鳥)と呼称し、高等練習機として採用した。
 エンジンによりMk.I、Mk.IIに分けられるが、生産は並行して行われた。フィンチMk.Iはモデル16Rとも呼ばれ、キンナーR5を装着していた。Mk.IIはモデル16Bとも呼ばれ、キンナーB5(125馬力)を装着した。カナダ空軍には1939年から1941年にかけてMk.I、Mk.II合計430機が納入された。
 この他、キンナーR5を装着したモデル16D、ワーナー・スーパースカラブ(空冷星型7気筒145馬力)を装着したモデル16Fが合計7機作られている。
 この大量発注は英連邦航空訓練計画に基づくもので、カナダで英連邦各国の操縦士をまとめて訓練する必要性からである。
 フィンチは1947年までカナダ空軍で就役していたが、大部分は1944年から1945年にかけて退役して民間に払い下げられた。現状でもまだまだ多くがフライアブルで残っている。

(文:まなかじ)


寒気に耐えるための、このクラスの機体としては珍しい密閉風防に注目。

カナダ航空博物館の収蔵機。今でも飛べます。

諸元(モデル16B フィンチMk.II)
全幅8.53m
全長6.60m
全高2.36m
翼面積18.06m2
自重510kg
全備重量900kg
最高速度167km/h(SL)
巡航速度137km/h
上昇限度3,200m
航続距離480km
武装なし
発動機キンナーB5 空冷星型5気筒 125馬力
乗員2名

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