アエロA.100は、当時使用中であったアエロA.32爆撃機とアエロA.42偵察機の双方を更新する機体として、A.30試作爆撃機をもとに、アエロ・トバルナ・レタデル社で1933年に設計された。
一葉半形式のごく一般的な複葉機で、同時期の九三式単軽やポリカルポフR-5とほぼ同等の機体であるといえる。
エンジンはイスパノスイザ12NbrをチェコでライセンスしたアヴィアVr-36を使用し、機体構造はエンジンカウリングにジュラルミンを用いたほかは鋼管羽布張りである。
武装は7.92mmの国産機銃クロメトVz30を2挺機首上面に同調機銃として、同じくVz30の連装機銃を後席に旋回機銃として装備し、同時期の複葉爆撃機としてはかなりの重武装といえる。爆撃装備は翼下の四個所に最大500kg(150kg*4)を装備でき、後席で照準する水平爆撃と前席の射爆照準器をもってする緩降下爆撃とを実施できる。
1934年から35年にかけて、試作機4機を含めた48機が生産された。
1939年3月にチェコ全土がドイツの占領下に入ったときも大部分が任務についていた状態であり、これらは直ちにドイツに同盟するスロバキア政府の空軍に編入された。
39年9月のポーランド侵攻作戦では、スロバキア軍はドイツ軍南方軍集団戦区に参戦し、スロバキア空軍もガリツィア方面でルフトヴァッフェに協力して戦った。
A.100の実戦参加はこのときのポーランド軍に対するものが最初で最後となったが、練習や連絡の目的にはその後も長く使用された。
A.101はA.100の爆装強化・馬力向上型として開発され、イソッタ・フラスキーニの液冷W型18気筒アッソ1000をスコダ社がライセンスしたエンジンを核に、主翼をわずかに大きくしたほか、垂直尾翼と方向舵を増積している。
アッソ1000は緊急最大出力こそ1,000馬力であるが、通常の最大出力800馬力であり、それでいてVr-36よりも280kgも重い。
爆弾搭載量は800kg(150kg*6)に向上しているが、当然飛行性能はA.100よりも悪化しており、生産は29機にとどまった。
しかし、それでもただでは転ばないのがチェコであって(このへんのところは別館「真実一路」
の「1948年のメッサーシュミット」を読みましょう)折から内戦中のスペインにこれを売りつけようと試みた。しかも、内戦の両陣営に商談を持ち込んでいるのである。
フランコ軍(ナショナリスト軍)への営業は不調に終わったが、共和国軍へは、ついにまんまと言値で売りつけてしまった。チェコ空軍としては低性能機を高く処分できてばんばんざいであったろう。
しかし、A.101を22機積んでトリエステを出港したパナマ船籍の貨物船は、イタリア当局からの通報があったのかどうかフランコ軍の巡洋艦に海上でとっつかまって拿捕されてしまい、フランコ軍は結局無料でA.101を手に入れることになった。
残る7機(全部、売り払ってしまったのである)は別の船でポーランドから出港、こちらは無事に届いたが、ソ連からのR-5やR-Zに比べて性能に劣るのは如何ともし難く、機数が少ないこともあってすぐに練習任務に下げられてしまう。共和国軍にとってはえらく高い買い物についてしまった。
チェコはこれに学んで、1935年にライセンスを購入した、更に馬力の大きい、「軽い」エンジンとしてイスパノスイザ12Ydrs(860馬力)をA.101の機体に取り付けることにし、これをAb.101と呼んだ。
重心位置を合わせるためにやや機首を伸ばし、後席下面に新型爆撃照準器と写真撮影用の窓を新たに設けた。
これは一応の成功を収め、最大速度260Km/h(海面)、巡航速度205km/hとややA.100よりも遅かったがA.101よりは速く、航続距離は950kmと多少向上、上昇限度は7500mとなった。
64機が製作されたが、それでもA.100をしのぐまでには至らず、より軽量のレトフS.328と交代して39年3月時点では二線級の装備であった。スロバキア空軍では最初から練習機として用いられたに過ぎない。
なんというか、このクラスの複葉機は新型を作ってもダメだというのは、日本海軍の艦上攻撃機や英海軍の艦上雷撃機にも見られる現象で、いろいろ難しいのであろう。
全幅 | 14.70m |
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全長 | 10.60m |
全高 | 3.51m |
翼面積 | 44.31m2 |
自重 | 2,040kg |
全備重量 | 3,215kg |
最高速度 | 270km/h(2,000m) |
巡航速度 | 230km/h |
上昇限度 | 6,500m |
航続距離 | 917km |
武装 | 7.92mmクロメトvz30機銃*4(前方固定*2 後席旋回*2(連装)) 150kg爆弾*4 |
発動機 | アヴィアVr-36vee 液冷V型12気筒725馬力 |
乗員 | 2 |