カプロニ Ca.165

 R計画戦闘機群の保険として、またイタリア空軍部内の根強い複葉戦闘機擁護論者の圧力によって、そしてスペイン戦争でのCR32優位という戦訓に基いて、1938年に出された複葉単発単座戦闘機の仕様による戦闘機である。
 また、カプロニの子会社、すなわちレッジアーネ、カプロニ・ヴィッツォーラがR計画に応募していたのに対し、カプロニ本社がこちらに応募したという意味は小さいものではないだろう。
 固定脚、単張間の通常形式の複葉機で、主構造は木金合製の複合、主翼は木製セミモノコック、胴体前半は軽金属、後半は羽布張りの外被であった。密閉風防を備える。
 機銃は両胴体側面下に装備され、弾丸はブラストチューブを通じて機首下面に導かれる。
 1939年8月3日に初飛行し、最大速度は466km/hに達する好性能を発揮したが、競作の対抗馬はCR32から40、41の自主制作を経て発展してきた、かのフィアットCR42であった。
 ロザテッリの戦闘機とは、前回のコンペティションでもCa.114とCR32とで採用を争ったが、性能面で差をつけられて苦杯を喫したのであった。
 さて、今回はといえば、Ca.165は速度と上昇力でCR42を上回り、運動性でも劣らなかったが、その価格差は決定的であった。即ち、機体単価でCa.165はCR42の2倍近くに達していた。
 更には、単なる取得価格の点にとどまらず、木製主翼からする高い維持コスト、そして試作エンジンであるL121の量産化待ちなどといった総合的な運用コストを考えれば、CR42との差は絶望的なものであった。
 この複葉戦闘機の存在意義は実戦化の遅れているR計画の本命MC.200へのつなぎであり、またそれを補助するにあり、あまり高価でかつ実戦化に時間がかかるようではいくら高性能でも本末転倒となってしまうのである。
 結果、スペック上は上回るはずのCa.165は競作に落選となってしまう。
 CR42の勝利はコンセプトワークの勝利であった。

(文章:ダリオ・マナカジーニ)


Ca165試作機 胴体側面のCTマークはカプロニ・タリエドのイニシャルで、社主カプロニ家がタリエド伯爵家であることに由来する。

諸元
全幅9.30m
全長8.10m
全高2.80m
翼面積21.40m2
自重1,885kg
全備重量2,425kg
武装12.7mmブレダSAFAT機銃*2
発動機イゾッタ=フラスキーニL121 RC40 液冷V型12気筒 900馬力
最高速度466km/h(1,000m)
実用上昇限度10,000m
航続距離672km
乗員1名

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