サヴォイア・マルケッティ SM.73
 第二次大戦中に使われたサヴォイア・マルケッティの三発機の基礎となった機体である。
 当時のSIAI・マルケッティが国際線用旅客機として開発したもので、1934年6月4日に初飛行している。
 本機に採用された木金合製の骨組みに合板と羽布を張るという構造構成法は、実に戦後のSM.95まで引き継がれるサヴォイア・マルケッティの標準的な機体構造となった。
 装備エンジンはノーム・ローン9Kミストラル600馬力、ピアッジョ・ステラX RC700馬力、ライトGR-1820サイクロン700馬力、アルファ・ロメオ126RC34 750馬力、ワルター(ブリストル)ペガサスIIM2 615馬力など、多岐にわたる。
 最初のユーザーはベルギーのサベナ航空で、1935年に5機を購入した他、よほど気に入ったのか更にわざわざライセンスを買って、ベルギーの航空機製造会社SABCA(Societe Anonyme Belge de Constructions Aeronautiques)で7機を生産させている。
 初めの5機はノーム・ローンを装備しており、ロンドン〜パリ〜ブリュッセル〜ハンブルク〜コペンハーゲン〜マルメを結ぶ国際連絡線に就航し、後の7機はブリュッセル〜ベルギー領コンゴのエリザベスビル(現在のルブンバシ)を結ぶ44時間がかりの長距離路線に就航した。この7機はSM73Pと呼ばれ、エンジンがノーム・ローン14Kirsミストラル・マヨール空冷星型14気筒869馬力で、客席をゆったりめの8名とし、その分胴体内に燃料タンクを増設するなどかなり改修が施されている。
 続いてイタリアの半官アラ・リットリア航空が20機あまりを購入して主力機のひとつとし、他にもアビオ・リネ・イタリアーネ航空が6機を購入している。また、空軍も軍用輸送機として貨物型26機を採用した。
 イタリアの機体は政策上国産エンジンを搭載している。
 1937年にはチェコスロバキアのCSAがまず3機、すぐに続いて2機の5機を購入。CSAの機体はオランダのワルター社がライセンスしていたペガサスを装備していた。

 当時のヨーロッパ製の旅客機としては優れている部類に入り、価格は中程度で整備点検も容易であったとされる。
 また、イタリア空軍のSM.81爆撃機の直接の母体にもなった。
 イタリアの参戦と同時に民間機は全て軍の管理下において運行されるようになっていたが、アラ・リットリア所属のSM.73数機が特にイタリア空軍に直接徴用され、人員輸送機として大戦期間を通じて任務に就いていた。
 また、サベナ所属のSM.73P数機も南アフリカで英空軍に合流、徴用編入されて同地で後方輸送に従事していた。

(文章:ダリオ・マナカジーニ)

SM73P
サベナ航空のSM.73P(登録記号OO-AGL)

諸元(アラ・リットリア航空 登録記号I-SUSA)
全幅24.00m
全長17.44m
全高4.59m
翼面積93.00m2
自重7,300kg
離陸最大重量10,800kg
武装なし
発動機アルファ・ロメオ126RC34 空冷星型9気筒 750馬力
最大速度328km/h
巡航速度280km/h
実用上昇限度7,000m
航続距離1,000km(過荷重1,600km)
乗員4〜5名 乗客18名

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