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グロスター・ゴーントリット
 ゴーントリットは、もともとはF.20/27の仕様に基づく単座高高度迎撃機SS18としてスタートした。
 初めはマーキュリーII A、続いてジュピターVII F(SS18A)、さらにアームストロング・シドレーのパンサーIII(SS18B)、ジュピターに戻して(SS19)、車輪にスパッツをつけ、尾橇をスパッツ着きの尾輪にしたり(SS19A)と、いくらかの紆余曲折を経て、1932年10月に、これまで信頼性がいまいちだった本命エンジンであるマーキュリーに戻したSS19Bが完成、1934年にはマーキュリーVI S2を装備したゴーントリットMk.Iとして空軍に正式採用、24機の発注を受ける。
 RAFの第19中隊が1935年5月25日に本機を初装備して空軍での任務が開始された。
 1934年、第二次発注はグロスターシャー・エアクラフト社からホーカー・エアクラフト社に移管されることとなった。これは、すでに開発が始まっていたグラジエーターに集中させるという意味合いが大きいが、当時の空軍省の方針として、手待ちの工場を作らないために単一機種を複数会社に分散して発注するという決定があったためである。
 ホーカーで製造されたゴーントリットはMk.IIと呼ばれ、胴体の内部構造をホーカーの治具に合わせて多少手直ししてある他はMk.Iと変わらず、性能もほぼ差はない。Mk.IIは主要生産型となり、204機が製作された。
 武装は7.7mm機銃2挺で、夜間戦闘時に目をくらまさないように胴体側面に装備されている。(この装備法はグラジエーターにも引き継がれる)
 プロペラは、初めはワッツ木製二翅固定ピッチであったが、後にフェアリ金属製三翅リード固定ピッチが標準となった。とはいえ、ワッツも最後まで混在していた。

 当時としては世界最高速戦闘機で、上昇率も極めて高く、迎撃戦闘機として極めて有能とされた。最盛期の1937年には英本土の14個飛行隊がゴーントリットで装備されていたが、これは本土防衛の戦闘機Sqd.の定数が21個の時代の話であり、文字どおり一時は英空軍の主力戦闘機であった。
 しかし、寄る年波には勝てず、1939年までには大部分の飛行隊から姿を消し、英本土の飛行隊で開戦時にゴーントリットを保有していたのは第616たった一個のみとなり、それも数週間のうちにハリケーンで再装備された。
 ゴーントリットの英本土での最後の任務は1939年12月9日に、空軍の気象予報隊が気象観測に飛ばしたものが最後である。

 しかしながら、アフリカでは主として地上攻撃部隊に配備されていたとはいえ、まだ現役であった。
 エジプトでは1940年まで戦闘第33・第112飛行隊、直協第3飛行隊がなおもゴーントレットを飛ばしており、リビアから国境を越えたイタリア軍に対して出撃していた。そのうち、戦闘機隊からは10月で引揚げられたが、それらは直協第3が引き継ぎ、12月に部品の供給がなくなって飛行不能になるまで出撃を繰り返していた。
 スーダンでは、第43飛行集団が編成され、直協第6飛行隊が南アフリカ空軍第1飛行隊の増援を受け、エリトリアのイタリア軍に対して出撃し、8月末から10月初めにかけて活発に行動、9月にはイタリアのカプロニCa133を空中戦で撃破して、第二次大戦でゴーントレットが挙げた唯一の空戦戦果も記録している。RAFの部隊がライサンダーに切り替わってからもしばらくはSAFF(南アフリカ空軍)の隊はゴーントリットの運用を続けた。
 ソマリアでは直協第2飛行隊がごく少数のゴーントリットを運用した。
 これらのアフリカに展開するゴーントリットも、1942年を迎えるまでには引退か用廃となって姿を消していった。

 この他、フィンランドは24機のゴーントリットを所有していた。
 これは、冬戦争中に南アフリカ政府の醵金によって、当時たくさん出てきていた余剰の英本土のゴーントリットを買って送ったものだが、到着は休戦の三日前とあって、待ち焦がれていたフィンランド空軍第29飛行隊の手には渡らなかった。
 もっとも、グラジエーターでもあまり役に立たなかったことからみて、ゴーントリット24機の増援の効果は疑問なしとしない。
 むしろ、これらのゴーントリットは練習戦闘機としてフィンランド空軍の猛者を育てたことに意味があろう。

 デンマークは17機のMk.IIをライセンス生産して保有していたが、開戦時にドイツ空軍にほぼ全てを地上撃破されてしまい、何らの貢献もできなかった。
 また、南アフリカに6機、オーストラリアに6機、ローデシアに3機が供与された。

(文章:まなかじ)


ジュピター付のSS19原型機です。

デンマーク空軍機です。

諸元
全幅9.99m
全長8.00m
全高3.08m
翼面積29.6m2
自重1,225kg
離陸最大重量1,800kg
武装7.7mmヴィッカーズMk.V機銃*2
発動機ブリストル・マーキュリーVI S2 空冷星型9気筒 640馬力
最高速度370km/h(4,800m)
海面上昇率6,000m/9min
実用上昇限度10,000m
航続距離725km
乗員1

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