great britain

ヴィッカーズ・ビルドビースト
 1928年4月初飛行、部隊就役は1933年にブリストル駐留の第100中隊を皮切に開始されたという旧式雷撃機であるが、ほとんど10年後の1942年にもまだ現役で頑張っていた長命機でもある。
 開発当時、まだ英空軍は任務別のコマンド制をとっていない頃であったが、本機は陸上基地から発進する対艦攻撃機、つまり「陸攻」であり、後にはコースタルコマンド(沿岸航空軍団)に所属するべき機体であった。
 単発複葉複座(または三座)のため、よく艦上雷撃機だと誤解されるのだが、つまり、ボーフォートの先代にあたる機体である。
 本機が長命だったのも、ボーフォートの開発が遅れたためで、いくら英軍が保守的だといっても限度というものはある。
 Mk.I(タイプ244)、Mk.II(タイプ258)は発動機にブリストル・ペガサスを使用しているが、これらは比較的早期に引退している。Mk.Iは22機、Mk.IIは30機が生産された。
 Mk.III(タイプ277)はMk.IIに増加燃料タンクと主翼折りたたみを追加したタイプで、203機が生産された。
 最終生産型はMk.IIのエンジンをパーシュースに換装したMk.IV(タイプ286)で、このビルドビーストMk.IVが世界最初のスリーブバルブエンジン搭載の実用機となる。35機が生産された。

 英本土の部隊がボーフォートに機種変更された頃でも、海外駐留のコースタルコマンドの雷撃機はまだまだこのビルドビーストを装備していた。
 1941年に日本が参戦した当時、極東に展開していたRAF、及びニュージーランド空軍の雷撃部隊はほとんど全てがビルドビーストで占められており、快進撃を続ける日本軍に対して実り薄い戦いを強いられた。
 RAFでは前線での使用はシンガポール陥落を最後に、1942年半ば頃から急速にボーフォートへの更新が進んだが、オーストラリアやニュージーランドでは二線級兵力としてではあるが、なおも1943年いっぱいほどは任務に残っていた。
 ニュージーランド空軍はMk.III、Mk.IVを合わせて39機を装備。
 また、スペインは内乱が始まる前までにイスパノスイザ12Wcrs液冷V型12気筒エンジンを装備したタイプ245を26機ライセンス生産した。
 この型はエンジンを換装してあるだけなのだが、何だか妙に垢抜けたカンジのカッコいい飛行機である。王国海軍航空隊から共和国海軍航空隊へと横滑りし、内乱時にはほとんどが共和国側に立って戦った。

(文章:まなかじ)



諸元(Vildebeest Mk.IV)
全幅14.94m
全長11.48m
全高4.47m
翼面積67.63m2
自重2,143kg
離陸最大重量3,856kg
武装7.7mm機銃*2(前方固定ヴィッカーズ機銃*1 後席旋回ルイス機銃*1) 18インチ魚雷*1または454kg爆弾*1
発動機ブリストル・パーシュースVIII 空冷星型9気筒 825馬力
最高速度251km/h(1,525m)
実用上昇限度5,790m
航続距離2,615km
乗員2

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