great britain

ヴィッカーズ・ウェルズリー
 この機体は、いちおうG.4/31仕様に基づいているが、ヴィッカーズの自主製作機に近い。
 G.4/31に提出すべき複葉雷爆撃機タイプ253の試作は進んでおり、実のところ空軍はその複葉機の方を150機発注するところまで行っていたのだが、ヴィッカーズの天才発明家バーンズ・ネヴィル・ウォーリスとレックス・ピアスンのチームが自主製作で試作していた原型機タイプ246を1935年6月19日に初飛行させたところ、その複葉機よりもかなり性能がよかった。
 「死の商人」という形容の筆頭株であるヴィッカーズであるがここで良心的な商売をすることにし、この新型機の完成を急いで、空軍省がG.4/31の発注をこの新型に振替えられるよう努めた。
 晴れて新型機は1935年9月には空軍の制式採用となり、ウェルズリーと名付けられることとなった。1938年までに176機が生産された。

 本機は、なんというかつまり単発複座の「長距離爆撃機」である。
 三面図を見ればわかるように、アスペクト比の大きい長大な主翼が最大の特徴で、全幅は全長のほぼ二倍に達する。
 この長大な主翼を支える構造には、バーンズ・ウォーリス開発の大圏構造を用い、主翼桁前方の胴体と尾翼にも適用している。また、本機は、量産機としてはじめて大圏構造を採用した飛行機でもある。大圏構造は強度が高く、こんなレイアウトの機体でもかなりの急操作にも耐えたそうで、軽荷状態であれば本機は意外と運動性は悪くないらしい。
 防御武装は極めて軽く、前方の固定機銃はほとんど使い道がなさそうなので、実質後席の7.7mmルイス1挺(おそらく参戦時にはヴィッカーズKに換装されていたものと思われるが)が全てである。
 爆弾は、両翼下のスリッパ型のポッド内に収容するという変わった方式で、合計2000lbの携行が可能である。
 本質的には軽爆であるが、その攻撃圏は(欧州標準からすれば)重爆並という、平時にハッタリをかますには最適なスペックといえる。

 量産開始は1937年初めからで、部隊配備は同年4月の第76飛行隊を皮切に、英本土に4個飛行隊、中東方面に3個飛行隊が配備された。
 1938年、特別に長距離仕様に改造されたMk.I(ペガサスXVII装備、燃料搭載量を標準の1,930lから5,860lと三倍近くにまで増加)を以って、エジプトのイスマイリアからオーストラリアのダーウィンまで11,519kmを無着陸で48時間で飛び、世界記録を樹立。
 1939年には、本国の部隊はウェリントンで再装備されることとなり、中東方面は6個飛行隊に増強される。1940年、イタリアと開戦すると、中東に展開するウェルズリーはエチオピアやエリトリアのイタリア軍拠点に対する爆撃に出撃した。
 この方面のイタリア空軍は弱体で、数少ない戦闘機はそのうえCR.32を主体としており、ウェルズリーでもさほど危険なく作戦することができたが、それでも運悪く捕捉されてしまうとイタリア複葉戦闘機にとっても容易な目標となり、エリトリア戦線でのイタリア空軍エースのスコアの幾分かに貢献してしまうことになった。
 エリトリアの戦線が一段落すると、各部隊はブレニムで再装備されることとなったが、多少の機体は連絡機などとして1944年ごろまで飛行を続けていた。

(文章:まなかじ)

WELLESLEY Mk.I
諸元(Wellesley Mk.I)
全幅22.73m
全長11.96m
全高3.76m
翼面積58.5m2
自重2,889kg
離陸最大重量5,035kg
武装7.7mm機銃*2(前方固定ヴィッカーズ機銃*1 後席旋回ルイス機銃*1) 爆弾905kg
発動機ブリストル・ペガサスXX 空冷星型9気筒 925馬力
最高速度367km/h(6,000m)
巡航速度303km/h
実用上昇限度10,060m
航続距離1,786km
乗員2

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