色ぐらい塗れ!

組み立てるオモチャで39万おまけ


(おわび)
生存競争激化のため、「兵器生活」更新が滞っておりましたことを、読者諸氏に深くお詫び申し上げるとともに、従来通りの御愛顧を、切にお願い奉る次第で御座います。 2007年5月6日「兵器生活」主筆 印度総督

 一時期は、「一生プラモを完成させることは無いんだなあ…」と思っていたのだが、筆塗りにして、とりあえず色だけ着けるくらいなら、今の机まわりでもやれるんじゃあないか、と云うことに気付き、チマチマとプラモデルを作るようになっている。今回のネタは、


「少年」昭和37年9月号ふろく

 「少年」昭和37年9月号ふろく「大空の勇者」である。
 昭和30年代末期、少年雑誌に戦記マンガ、戦記読み物、兵器図解が多数掲載され、「少年向け戦記ブーム」を巻き起こしたことは、一部では良く知られている話で、この「少年」(光文社)ふろくも、その一つである。
 しかし、中身は別ネタの元になるので、ここでは紹介しない(セコイ!)。まあ、このような「カッコイイ」画とわかりやすい文章が、ウケた時代があったのだ、くらいで充分であろう。今買うと結構良い値段もするので、高級ウィスキーよろしくチビチビやらないといけないのだ。

 「カッコイイ」画と、兵器の「大かつやく」を描いた文章満載の記事を読めば、「ボクも隼が欲しい」と云い出し、親御さんを困らせるのが子供であれば、そこに色々売りつけて一儲けしよう、と考えるのがオトナと云うもので、ウラ表紙には「大滝製作所」(中年モデラー諸氏であれば『オータキ』の方が通りが良いかもしれない)が全面広告を掲載している。
 今回のネタは、その「裏表紙」の方なのだ。


裏表紙

 お子様の購買(買ってもらうわけだが)意欲が落っこちないのだろうか、とはるか未来から心配してしまう広告である。色が塗って無い! 下手に箱画でウソをつかないで、現物を堂々出しているだけ、正直でヨロシーと、親には好印象を与えたのだろうか?
 この時代のプラモデルの現物は、マニアのところか、立派なアンティークとして結構なお値段(組立前)がついていて、あまり目にする機会が無いので、もう少し大きくしてみよう。


零戦

 胴体を銀色、翼を黄色にしたら、米海軍の雷撃機になってしまいそうな「ゼロ戦」である。アンテナ線が「付けたはいいが、撮影の時とれちゃいました♪」と云いたげなビミョーな付き方をしているのが泣かせる。


 この附録の表紙の画も、「隼」(ただし1型)である。機首前方のアンテナ柱が、取付部を削ってやらないと胴体にはまらない、と云う事が、キットを買う前にわかる! 顧客に無用な夢を与えない写真であると云えよう。


月光

 夜間戦闘機「月光」である、と云われれば「そうだね♪」と肯く。モーターで走らないので安い。今日では必ず1/72だ1/48だとある縮尺の表記が無い。余談だが、プラモデルを作ると、エンジン2つのわりに小さい飛行機であることがわかる。


飛燕

 子供相手なので「ヒエン」とカナ表記もちゃんとある。後にオータキは、1/48飛行機のプラモデルのラインナップを立ち上げるのだが、ナゼか箱はカタカナ表記だったりして、子供心は不思議に感じ、長じてはカッコワルイになり、ついにオータキ1/48のプラモは作らずに終わってしまった。そんな人間が、こんな事を書いていて良いのか、と思う(そのせいではあるまいが、オータキは稼業をたたんでしまい、現在はアリイのプランド名で、一流模型店で好評発売中です)。


ヘリコプター

 今時のプラモデルは、型式だ愛称だとしかめつらしい名前があるものだが、「ヘリコプター」とは大胆である。もっとも、現在でもニュースでは大型小型ひっくるめて全部「ヘリコプター」で通しているのだから、軍用飛行機は「戦闘機」、軍用艦艇は「戦艦」でもいいじゃあないか、と云う気にもなる。

 本稿タイトルには「色ぐらい塗れ!」と書いてしまったが、上下二色になってますね、コレは。
 こう云う広告が堂々と掲載されていた時代、ソリッドモデル(木を削って仕上げる模型、プラモデルが主流になる前、精密縮尺模型と云えば、これしか無かった。「ソリッド」と云う言葉の意味から云えば、フィギュアの原型や、そのキットもソリッドモデルと呼ばれてしかるべきなのだが、狭義の「ソリッドモデル」が戦前の天皇陛下並にエライため、誰もそう云わない)が、「模型」の主流で、プラモデルは「組み立てるオモチャ」と見られていた(今でもそう思っている人は多い)のだが、この広告を見る限り、そう云われても仕方がないよなあ、と思ってしまうのである。

 この頃はプラモデル用塗料が事実上国内には存在しなかった事を思うと、「色ぐらい塗れ」と云うのは、現代人の傲岸不遜なモノの云い方でしか無いのだが、今のプラモの広告くらいに色がつき、きれいに組み立てられていれば、「こンなモノのどこが面白いのやら」とオフクロにブツブツ云われることも無かったものを、と口惜しく感じてしまうのだ。