昭和18年11月、海上護衛総司令部は新たに編入される商船改造空母の運用に関する検討を開始した。
商船改造空母には艦上攻撃機を搭載し対潜哨戒を主任務とする意見が大勢を占めたが、艦上戦闘機による船団上
空支援を望む声も少なくなかった。しかし編入される商船改造空母はいずれも小艦で搭載能力が小さいため、対
潜哨戒と上空支援を両立するに足る機数を搭載するのは難しい状況であった。
少ない搭載機での対潜哨戒と上空支援の両立は制空戦闘にも対応できる艦上攻撃機、もしくは対潜哨戒にも対応
できる艦上戦闘機により可能となるが、艦上攻撃機による制空戦闘など望むべくもないことから、艦上戦闘機を
改造し対潜哨戒に当らせる方がより現実的と考えられた。
海上護衛総司令部は仮称零式艦上戦闘機改として零式艦上戦闘機を二座とし対潜哨戒にも対応できる機体とする
改造に着手した。
仮称零式艦上戦闘機改はベースを零式艦上戦闘機21型とし機体/主翼/尾翼/エンジン/プロペラなど主要部
を極力流用する方針により必要最低限の改造のみが施された。
・操縦席後方に偵察席を設けた。
偵察席には航法兵装として航空羅針儀、九七式1号偏流測定器、一式空3号無線帰投方位測定器、通信兵装と
して九八式空2号隊内無線電話機、後方武装として九二式7.7粍旋回改1機銃を装備した。
座席は平衡ブランコ式銃架との一体構造で踏板操作により任意の仰角で銃架を固定する機構があり、大きなG
がかかった状態でも射撃を継続することが可能となっていた。
・照準装置を潜水艦攻撃を考慮し九八式射爆照準器1型から九八式射爆照準器2型に変更した。
・胴体下に戦闘機用改1小型爆弾架の取付け機構を追加した。
昭和19年1月中旬、突貫作業で完成した試作機による飛行試験が行われた。飛行性能としては零式艦上戦闘機
21型と比較して最高速度及び上昇力が低下したものの飛行特性に関しては遜色がなく敵雷爆撃機に対し有効な
迎撃能力を備えると共に長時間の哨戒任務や敵潜水艦に対する制圧爆撃にも対応し得ることが確認された。
仮称零式艦上戦闘機改は実用に耐え得るとの評価により1月下旬には、四式艦上哨戒機「空海」として制式採用
された。
「空海」の量産(大部分は零式艦上戦闘機21型からの改造)は日立航空機が担当し19年2月の第931海軍
航空隊の開隊と共に納入を開始した。第931海軍航空隊で練成された飛行隊は19年4月の海鷹への配備を皮
切りに大鷹、雲鷹、神鷹に搭載され終戦の日まで日本の海上輸送を守り続けた。

四式艦上哨戒機「空海」(A6M2−Q)
諸元:
全幅 12.000m
全長 9.050m
全高 3.525m
翼面積 22.438m2
自重 1,860kg
全備重量 2,720kg
発動機:
空冷星型複列14気筒 栄12型
離昇出力 940hp
基数 1
性能:
最高速度 482km/h(高度4,300m)
巡航速度 296km/h(高度4,000m)
着陸速度 119km/h
航続距離
(正規) 1,920km
(過荷重) 2,860km
実用上昇限度
10,180m
上昇時間 7分38秒 (高度6,000mまで)
武装:
九七式7.7粍固定3型改2機銃 2挺(装弾数 :各680発)
九九式20粍1号固定3型機銃 2挺(装弾数 :各 60発)
九二式7.7粍旋回改1機銃 1挺(弾倉6個:各 97発)
爆装:
九九式6番2号改爆弾 3発
派生型として三式空6号無線電信機(H−6型捜索レーダー)を搭載した電探哨戒機型と、三式1号探知機(磁
気探知装置KMX)を搭載した磁探哨戒機型がある。
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作者コメント
零式練戦11型(A6M2−K)をヒントに、F4ファントムUのような戦闘爆撃機をイメージしたのですが、
試行錯誤の結果、悪名高き単発複座戦闘機になってしまいました。最終的には哨戒機としましたが作画中は一貫
して戦闘機だったので呼称番号は戦闘機のままです。海上護衛隊としては戦闘機でもあるので良しとしました。
さらに爆弾誘導桿と補助フラップ(エアブレーキ)を追加し、急降下爆撃も可能とした四式艦上爆撃機「北斗」
(A6M2−D)が、あ号作戦で活躍するという続編も考えましたが性能上、無理があるので止めました。
「空海」は零式艦上戦闘機21型(A6M2b)の操縦席後方に零式水上観測機(F1M1)の偵察席を載せた
もので、際立った性能を持つものではありません。
ただこんな機体でも、あれば商船改造空母による船団護衛も効果を上げたのではないかと思い描いてみました。
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