米海軍航空隊 試作艦上戦闘機 グラマン/ゼネラルモータース F4M 「スーパーキャット」

F4M and F6F (18K)


ゼネラルモータース F4M 緒元
エンジンプラット&ホィットニー R-4360-13(3,380hp)
武装M2 12.7mm 機銃 ×6
最大速度685Km/h
航続距離1,600Km
乗員一名
翼幅13.06m
全長10.40m
全高4.52m
重量4,567Kg(乾燥) 7,041Kg(最大)

 1944 年、太平洋戦線において米海軍は日本軍の執拗な特攻戦術に悩まされており、高い上昇力を備えた艦上戦闘機が早急に必要であると要求していた。これに答えるべくボート社の F4U をライセンス生産していたグッドイヤー社は、F4U をベースに 3,300hp のプラット&ホィットニー R-4360 エンジンを搭載した発展型 F2G の開発を開始していたのである。

 米海軍御用達艦載機メーカーを自負するグラマン社としては、この状況を指をくわえて見ている訳にはいかない。しかし折り悪く、社内は F6F ヘルキャットの生産と F7F タイガーキャット・F8F ベアキャットの開発で手一杯である。そこで FM(F4F ワイルドキャット), TBM(TBF アヴェンジャー) のライセンス生産で実績を上げたゼネラルモーターズ社に設計主任を送り込んで開発チームを結成し、F2G に対抗できる F6F 発展型の開発プロジェクトがスタートした。GM 社は既に F8F を F3M の名称でライセンス生産することが決定していたため、この新戦闘機には XF4M の機体番号が与えられた。

 全長の長い R-4360 を搭載するために機首は 8 インチ(20cm)延長され、重心位置を補正するために後部胴体も1フィート(30cm)延長された。これに伴い後部胴体は再設計され、後方視界の良い水滴型のキャノピーに改められた。3,300hp のパワーを吸収するためプロペラは幅広の四翅に改められ、強大なトルクに対処するため垂直尾翼の高さが 5 インチ(12.5cm)増やされた。また乾燥重量で 1,000 ポンド(453Kg)近くも増えた機体を支えるため、主に主翼と脚部に構造強化が施された。

 作業は突貫工事で進められ、1945 年 6 月には初飛行を迎えることができた。ライバルの F2G に比べると速度はほぼ同等、高度 3,000 フィート以上への上昇力でやや劣ったものの、F4U 以上のジャジャ馬になった F2G に比べれば遥かに操縦しやすく、F6F ゆずりの運動性能はパイロットにも好評だった。喜んだ海軍は早速 300 機の量産を発注したが、この頃にはカミカゼアタックもすっかり下火になっており、日本の降伏は既に時間の問題となっていたのだった。今更こんな飛行機を作ってどうするつもりだろう?大喰らいの R-4360 を積んだ F4M の航続距離はわずか 1,600Km、艦隊防空以外には使い道のない機体なのだ。

 予想どおりと言うかいつものパターンと言うか、日本の敗戦から 5 日後の 8 月 20 日に米海軍はニベもなく量産キャンセルを通知、既に納入された 12 機と工場ラインに並んだ 50 機を合わせて F4M はわずか 62 機が生産されたにとどまった。受領された機材はごく短期間海軍および海兵隊で使用されたが、一度も母艦運用されることはなく 1950 年までには全機が退役した。退役機のうち十数機は民間に払い下げられ、このうち何機かは今もアメリカのエアレースに現役で出場していると言う。


F4M Navy and Racer(44K)
(上)大戦後の米海軍で短期間使用されていた F4M。創意工夫のカケラもないベタ塗りのブルー塗装、無味乾燥なステンシル、スピナーはわざわざ赤く塗るセンスの無さ。

(下)レーサー仕様に改造された F4M "Miracle Kitten"。二重反転プロペラと大型のスピナー、小型の曲面風防、背の切り詰められた垂直尾翼が主な改造点。



作者からのコメント
 ゼネラル・モータースと言えばあのフィッシャー P-75 を作ったことで悪名高い会社ですが、今回は珍しく「駄作機ではない」機体です(^^;)。WarBirds の「あなたはどっち?」で「F6F に R-4360 ワスプ・メジャーを積んだら?」という話題が出たのがアイデアのもと。R-2800→R-4360 への換装は P-47D→XP-72, F4U→F2G, B-29→B-50 などメジャーに行われていますが、何故か F6F にはそういう発展型がありませんでした。既に F8F が完成したいたことや、そもそも原形の XF6F が 1,700hp の R-2600 ベースだったのでパワーアップの限界に達していたという理由が考えられます(後者は結構深刻^^;)。

 基本的には水滴風防にして胴体を延長しただけですが、ずいぶんスリムになるものですね。どこか F8F に似ている気がするのは、やはり血は争えないということなのでしょうか。9月にリノレース観戦にゆき本物のアンリミテッド・エアレーサーを見て感動したところだったので、その勢いでレーサー仕様の絵も追加しました。今回は全面的にパスを使って描いたので曲線が滑らかに出ていますが、主脚収納部などの細部はちょっと手抜きしています(^^;)。

文・画とも Copyright by Y.Sasaki 1999 9/25