キ84レーサー、「ストーム84」


 



21世紀に入ってから、第二次世界大戦中の戦闘機を復元するプロジェクトがいくつか開始された。フルークヴェルクのFW190、ストームバードのMe262、カナダのブライド社による零戦52型などである。ブライドの零戦は、映画パールハーバーの撮影にも使用された。

ブライド社は次のプロジェクトとして日本陸軍を代表する戦闘機である、キ84、四式戦闘機「疾風」を選んだ。ただし、入手が比較的容易な空冷複列18気筒エンジンはR2800とR3350程度しかなく、何れもハ45と比較すると大型に過ぎるため、14気筒のR2000が採用されることとなった。

この疾風に目をつけたのが、IT長者の第三ウェーブの一人と言われる高田裕幸氏であった。高田氏の事業は基幹系を主としているため、一般人への露出は少なく、第一世代の孫氏、第二世代の三木谷氏や堀江氏に比較すると知名度は全くと言ってよいほどだが、自身は結構な目立ちたがり屋だった。名前を売るに手っ取り早いのは、スポーツである。しかしながら、プロ野球チームを買収・運営するのには莫大な費用が必要だし、F1は新規参入そのものが難しい。国内の自動車レースではインパクトに欠ける。

そこで、日本ではほとんど無名ではあるが、リノのエアレースに「疾風」ベースのレーサーを参加させ、機体の作製からレースまでをドキュメンタリーとする企画を、TV局に持ちかけたのである。企画が持ち込まれた2005年は戦後60年目ということも幸いしたのか、この企画は採用されることとなった。

そして作製されたのが、このキ84レーサーである。機体はブレイドの第一号機を首無しで購入した。オリジナルのR2000に変わり、空冷最強と言えるR3350を搭載。約3500馬力にまでチューンしてあるが、それでも4000馬力とも言われるレア・ベアに比べるとおとなしめのチューンである。

R3350とR2000の直径の差による段差は、カーボン製のカバーで整形してある。過給機用インテークは、セプテンバーフューリィと同じように、カウリング上部に設けてある。オイルクーラーは主翼付け根に取り付けた。

エンジン大型化に伴う重心移動を避け、かつ重量増加を最小限とするため、尾部にはマスバランサーを装着した。また垂直尾翼自体も大型化して、直進安定性を確保している。

主翼は翼端を50cmほど切断し、翼端板を装着した。

そのほかの主な改造点は、可動翼を全て布張りからカーボン製に変えたことである。

機体は「ストーム84」と命名され、2006年のレースに出場予定である(パイロットは未定)。