川西 火星紫電改 (N1K5Ja)

火星紫電改


今回火星エンジンに換裝した紫電改の存在が明らかになった。これは川西鳴尾工場で
撮影されたもので製造番号524号である。なおこの機体は三沢基地の横空審査部で実
用審査が行われるはずであったが敗戦により幕を閉じるのであった。増槽タンクを付
けているので燃料消費テストを行う直前と思われる。
雷電・烈風がもたつき川西の強風は紫電そして紫電改へと脱皮し急きょ零戦に代わる
主力戦闘機として採用される事になった。その特長として当時考えうる新機軸が盛り
込まれ
 ◎2000馬力エンジン
 ◎層流翼
 ◎自動空戦フラップ/腕比変更装置
 ◎重武装
 ◎自動消火装置
などが上げられ物まねを嫌う川西の技術者の意地が産み出した。しかし設計サイドが
メカニズムや性能を追求するあまり搭乗員の存在を忘れがちになるケースは少なくな
い。これらの新機軸に日本の工業力が追いつけず皮肉にも量産時に足を引っぱる事に
なりさらに熟練搭乗員の不足が拍車をかけた。速度は雷電21型(6000mまで5分38秒)よ
り遅く上昇力は雷電21型の5分38秒に対し紫電改は7分22秒もかかってしまい局地戦と
しては雷電の方が有効であった。にもかかわらず海軍は誉エンジンでの性能向上を進
めていた。そんな中陸軍のキ100がエンジン換裝で性能が良くなったので海軍航空本
部は川西に対し紫電改のエンジンを火星に換裝した機体の試作命令を出した。これは
実際に闘う現場パイロットの意見がかなり反映したと言われ日本の工業力でこなせる
様にそして現状の生産ライン構造で対応できる様に極力シンプルにして性能を欲張ら
ないで速度と航続距離に重点を置いた軽武装タイプでより甲戦に近い機体であった。
【変更点】
○誉エンジンのトラブルについては設計に無理がありそれを運転するには搭乗員の細
 かい配慮そして十分な整備が必要であった。加えて戦局の悪化に伴ってエンジンを
 造る材料や工作機械の精度や技術がどんどん低下したのが原因であった。そこで誉
 より直径が大きいが馬力の近い極光の火星25型へ換裝(誉、直径1180mm・835kg/火
 星、直径1340mm・760kg)された。エンジンが軽くなった分機首が延びた。エンジン
 径は増えたが紫電改自体が誉装備機としては太めの機首だった為写真でも分かる様
 にカウリング幅は若干増えただけであった。紫電より細くなったといえ太い胴体は
 キ100のように手を加えないで済んだ。形状的には紫電に近い。排気管は左右6本で
 カウルフラップで隠れている。
○川西の誇る自動空戦フラップはGによる水銀の作動によってフラップを自動的に動
 かし計画通り働けば旋回性能は優れるものの水銀の表面が酸化して導通が悪くなり
 たびたび油圧機の誤作動などが発生し信頼性を欠きパイロットとの呼吸は若年搭乗
 員にとって難しいという現実に陸軍のキ84のように手動で操縦桿頭部のボタンを押
 すことで開閉ができるようにした。ただ一部技術者から不満が出たらしい。
○強力な重武装である20ミリ機銃4門も零戦に比べ弾道は一定になったがその分機体
 重量は増加し実際の対単座戦闘機空戦は不利であった。さらに航続距離の短さが問
 題であった。もともと紫電改は局地戦で零戦の後継機である烈風の開発が遅れた為
 に零戦の役目もこなさなければならず仕方ないのだが。紫電改には4つある燃料タ
 ンクが零戦のような個別切替使用方式でなく4つのタンクから燃料が平均して集合
 タンクである胴体前方タンクへ集められる複雑な仕組みで飛行中の切り替えが難し
 く失敗するとエアを吸い込んだり燃料が溢れ出したりしてエンジンが止まってしま
 う危険性をはらんでいた。同時にいつでも満タンになった胴体前方タンクがコック
 ピット前方の床下に設置されていたのも搭乗員を不安にさせていた。そこで燃料タ
 ンクは容量は紫電改のままで(紫電改前後270+260リットルに対し紫電前後210+165
 リットル)零戦のように個別切替使用方式に変更して重武装でも命中しなければ意
 味が無くその分重量が増え機動性が減るならばその換わりに燃料を増やし航続距離
 を延ばそうと内側20ミリ機銃を廃止し紫電の翼内タンク(紫電改・93リットルX2に
 対し紫電・180リットルX2)を更に外側20ミリ機銃ギリギリまで増やし210リッルX2
 とした。
以上の結果エンジン直径が増え正面面積が少し大きく(紫電並)なったが機体重量が減
り速度は紫電改並の590km/hだが航続距離は2100kmで上昇力は高度6000mまで5分45秒
となった。なによりも稼働率が上がり若年搭乗員でも紫電改よりは比較的扱い易い米
軍に例えるとF6F的な機体になった。
    
火星紫電改