ドイツ海軍・「ドラッヘ」級戦艦

いわゆるH級戦艦


性能諸元
基準排水量:62500t
全長   :261.1m
最大幅  :37.3m
喫水   :9.5m
機関馬力 :155000HP
軸数   :3軸
最大速力 :28.2kt
航続距離 :16kt、9000海里
主砲   :48口径16.5インチ砲連装4基8門
副砲   :55口径6.1インチ砲3連装4基12門
高角砲  :65口径4.1インチ砲連装12基24門
装甲厚  :主要部舷側406mm、水平装甲180mm、
      砲塔前楯520mm、側楯305mm、上面150mm、後面179mm
      他水密隔壁多数(各隔壁の厚さは37〜57mm)
同形艦  :「Drache」(1943年2月竣工)
      「Greif」(終戦時60%完成)
      「Zerberos」(終戦時建造準備中)
      他艦名未詳(「Salamandor」という説あり)1隻      

注:この艦の世界観は拙作「菊池」「V・レーニン」のものと同一のものです。よっ
て、文中の各種艦
艇の設定は現実世界のものと若干異なっています。

 1943年2月上旬。
 キール軍港の風は寒々としていた。
 先月に行われた「カナリア諸島沖海戦」で、ドイツの水上艦隊はその戦力の大半を
失っていた。
 連合軍の「決戦船団」に壊滅的打撃を与えたにしても、それはあまりにも大きな損
失であった。

 …だが、その老海将の瞳にはまだ希望の光があった。
 つい数日前に竣工したこの戦艦に、戦局を変ええるだけの力があると信じていたか
らだろうか。
 斬新なシルエットを持つその艦を見れば、そう思ってしまうのも無理もなかったの
かもしれない。

 しかし老海将はつぶやかざるおえなかった。
 「…遅かった…。」
 そう、数ヶ月竣工が早かったら、あの「カナリア諸島沖海戦」における悪夢のよう
な光景を避けえた
のかもしれない。この艦の攻撃力、防御力は、それを食い止めるだけのものを期待す
るには充分
だった。
 主砲は、英・米海軍の誇る50口径16インチ砲をしのぐ威力を誇る、48口径16.5イン
チ砲。たった0.5
インチの違いしかないのだが、その破壊力は1.1倍。しかし公表上はあくまで16イン
チ砲であった。こ
の事実を知るものは今のところ軍関係者でも少数であった。

 それよりも重要なのは、従来のドイツ艦からすればいっそう卓絶した防御力であ
る。
 英国にいた諜報員からもたらされた情報によって、ビスマルク級の防御方式には大
きな穴があること
が判明した。英国などの主力艦には対魚雷用の装甲区画(注:これはドイツ側の解
釈)があるのだが、
ビスマルク級やこの艦の設計原案を見ると、水中部分の防御は意外なほどスカスカ
で、45mm程度の
防壁と幾つかの防水壁がある程度でしかなかった。

 そのため、この部分の防御を徹底的に見直し、37〜57mmの防水隔壁を数層重ねる方
式によって対
魚雷防御能力の向上を図った。(ドイツ側は知らなかったが)結果としてこれは水中
弾に対しても充分な
防御になっていた。

 装甲は基本的に対16インチ砲防御なのだが、各部の装甲厚はほぼ18インチ砲艦クラ
スのものに
なっている。決戦距離から放たれる連合国戦艦の巨弾をゆうゆうはじき返せる厚さで
あり、先の海戦で
メタメタにぶちのめされたビスマルク級のような脆弱さは無いといって言い。

 そのため排水量は原案より10000tも増大し、しかもその増加分のほとんどを装甲増
強に当てているため、
一種不自然に太ったような艦形になっている。それでも速力は28ktを出し、これは米
国の主力戦艦サウス
ダコタ級に若干だが勝っている。

 それにもまして違和感を覚えるのは副砲の配置だ。
 副砲はニュルンベルグ級軽巡の主砲を改良した6.1インチ砲3連装4基。これはまあ
普通だろう。しかし
その配置は、30年以上も前の旧式戦艦を思わせる、梯形配置。これに関しては老海将
もその意図する
ことがわからなかったのだが、一つ言えることは、この配置なら正面にすら9門、両
側方にいたっては
実に12門全ての副砲を発射することが出来るのだ。その意味ではこの配置は理にか
なっている。

 老海将は、この艦をいたく気に入った。
 そしてこう思った。
 「この艦こそ、ドイツ大海艦隊の最後の戦艦にふさわしい…。」


 この5ヵ月後。  この戦艦「ドラッヘ」(「竜」の意味)は、ヒッパー級重巡「ブランデンブルグ」 と共に北海に出撃 する。  これがこの艦の最初で最後の出撃となった。  7月3日、この小艦隊は、通商破壊任務に臨むべく、ノルウェーのナルビク近郊にあ る秘密基地を出撃 した。  だがその動きはすでに英軍に読まれていた。  ヘルゴランド島沖の海域で、艦隊はレンドリース船団らしい船団を発見した。  深い霧の中、「ドラッヘ」の主砲・副砲が、数多い護衛艦艇めがけて火を吐く。  水雷戦隊は雨あられと降ってくる副砲弾の前に手も足も出ない。  やがて、護衛についていたR級戦艦1隻を撃破し、船団にダメージを与えたが、そ れは英海軍の壮大 な罠であった。  後衛に控えていた、キング・ジョージV世級戦艦3隻(16インチ砲9門搭載に改 装)、ネルソン級戦艦 2隻、ヴァンガード級巡洋戦艦2隻を含む総勢100隻近い艦隊が、このたった2隻の艦隊 に襲い掛かって きたのである。  この戦闘で、「ドラッヘ」はまず「ネルソン」に反航戦を挑みこれを撃破、ついで 「ロドネー」に数発を 叩き込んだあと、速力を利してその場を脱出、今度は「プリンス・オブ・ウェール ズ」の主砲塔全てを 爆砕し、「キング・ジョージV世」の艦首を叩き割って両艦を戦線から脱落させ、 「デューク・オブ・ヨーク」 との一騎打ちの体制に入った。  ここまでで「ドラッヘ」がこうむった損傷は軽微であり、一方「デューク・オブ・ ヨーク」はいきなり初弾を 3番砲塔に叩きこめれて火力の3分の1を失った。同艦はそのあとさらに8弾を食らい、 艦後部の構造物 のほとんどをなぎ払われ、あわや沈没か…と言うとき。  霧の中から「ヴァンガード」が姿を現し、「ドラッヘ」を挟撃する体勢になったの である。  壮絶な撃ち合いは、さらに数分間続いた。  だが、いかに「ドラッヘ」といっても、至近距離から、しかも左右両方向から大口 径弾を立て続けに 食らっては、なすすべもなかった。  そして、「奇跡の13発」と後に言われる一撃が「ドラッヘ」を襲った。。  「デューク・オブ・ヨーク」の斉射全弾6発と、「ヴァンガード」の斉射8発中7発 が、ほぼ同時にこの 艦に命中したのである。「デューク・オブ・ヨーク」の斉射は、「ドラッヘ」の艦上 構造物をことごとく なぎ倒し、一弾は推進軸を粉砕した。そして「ヴァンガード」の攻撃は、4番砲塔を 除く全砲塔の 後楯にまともに直撃、これをことごとく粉砕し、「ドラッヘ」の抵抗力をほとんど奪 い去ったのである。  やがて、この艦が「デューク・オブ・ヨーク」「ヴァンガード」両艦の攻撃によっ て沈黙を強いられた ころ…。  丁度その時刻に、(この世界の)総統は暗殺されたのであった。    数日後に予定されていた、「ツィデタレ」と呼ばれる東部戦線の大攻勢は中止され た。  そして、この世界のドイツは、この海戦から一週間後、連合軍と講和条約を結ん だ…。 コメント  久しぶりの投稿です。卒研の息抜きのつもりが結構作りこんでしまいました。  今回の作品は私なりに考えた「H級戦艦」です。  実際のH級戦艦原案は全く気にせずつくりました。  だから、副砲の配置などはかなり異様なものになっています。  ですが、後から調べてみると、本当の原案にも16.5インチ砲搭載案があったことな ど「偶然の一致」が多いことに驚いている次第です。  排水量については…はっきり言って過大?。  さあこれから卒研本番…って、時期的にやばいんじゃない(爆)。  あと1ヶ月全力を尽くします。