日本郵船株式会社所有・貨客船琴平丸

日本郵船の旗艦/1941年


日本郵船株式会社 貨客船琴平丸要項
全長:225m
最大幅:26.5m
総トン数:21,410t
機関:B&W社製ディーゼルエンジン4基4軸
馬力:40,630hp
最大速力:24.4kt
乗客:1123名
乗員:805名
同型船:八坂丸


 そもそも、日本郵船に琴平丸という船は無く、この船は大日本帝国海軍の空母『鳳翔U』『飛鸞』
として三菱大連造船所で建造されていた。
 この二隻は旧式化した『鳳翔』の代艦として1936年から建造され、当時米国から導入されたばかり
の機構の数々を盛り込み、中型空母としてはかなり有効な艦として海軍からも期待されていた。
 だが1937年8月、この2隻の建造に三菱財閥と海軍の間で大量の金が流れていたのが発覚し、その後
次々と陸海軍内部の贈収賄が発覚したいわゆる『大連疑獄事件』で建造計画はいきなり頓挫。
のちに米国からの空母購入計画により船体は第一甲板までほぼ完成したまま宙ぶらりんとなった。

 その船体を有効活用したのが日本郵船だった。
 日本郵船は陸軍への輸送艦供出で欧州・豪州航路の旧式船をほとんど供出してしまい、新鋭の新田
丸級や出雲丸級の集客能力も限界にあった。
 そこに輸送力増強の意味で、2隻の空母を客船に改装して欧州・豪州航路につかせる計画を海軍に
提出したところ、海軍は多少渋ったものの、所持していても周辺諸国に叩かれるだけなので「いざと
なったら軍用艦として活用すること」を前提にOKサインを出したのであった。
艦体も、航空機を出来るだけ多く搭載する事と乗務員の居住空間改善を前提に設計されていたので、
客船業務には支障は無いと思われ、そのまま2隻の船体を進水させて、偽装工事をほどこし、1938年
末に『琴平丸』『八坂丸』として共に神戸を母港に欧州・豪州航路に就航した。
 この際にエンジンが艦本式蒸気タービンからB&W社の最新鋭ディーゼルエンジンに載せかえられ、
速力は低下した物の航続性の増強に繋がり、経済的な船に仕上がった。
 さらに琴平丸は空母時代のスマートな船型と、はシックかつ高級感溢れる内装。ある代議士が「帝
国ホテルより凄い」と言ったほどの客室を持っており、処女航海の切符の注文が国内外から殺到した
と言う伝説まで残っている。
 多くの航行用儀装は海軍の機器のままであり、船底には防御が施されているなど船体は空母時代
のまま竣工したので、乗務員からは「扱いにくい」「窮屈だ」などと不評も多かった。だが、その分
高速性と擬洋風のインテリアが乗客からは非常に評判で、イギリスの船雑誌はこの船を「もっとも豪
華な巡洋艦」と書いた。
 陛下の英国巡幸の際にも陛下自らお召し船に選んだという伝説まで残り、贈収賄の末に産まれた
『黒い空母』は自他ともに認める『日本最高の客船』として生まれ変わった。

 だが戦火が激しくなるに連れて両船は欧州への航海が困難になり、ついに1942年に琴平丸は欧州戦線
での秘密任務をうけもつ特務艦、八坂丸は輸送艦隊の母艦として前線へと出た。
 特に琴平丸は後に伝説となったド・ゴール将軍護送作戦においてもその性能を存分に発揮し、ドイツ
海軍機動艦隊の追撃を振り払って無事日仏の同盟国であるフィンランドへたどり着いたのだ。
 いわば琴平丸の存在が無ければ、同盟国側による大反撃も無かったのである。

 戦後も欧州航路の旗艦として君臨したが、航路閉鎖によりクルーズ部門に転換。ライナー時代と同じ
く神戸を軸に世界中を巡ったが、1987年8月19日、琴平丸就航40周年パーティの際に小笠原列島沖にて
消息を絶った。
 後に南鳥島沖の大陸棚から船体が発見され、沈没の原因が火薬による内部からの爆発と判明した後
も空母並みの装甲をどう破壊したのか、物議をかもした。
 琴平丸の装甲の厚さから少量の揮発性物質の自然発火による沈没はありえなく、爆沈は人為的犯行と
断定され『共産主義国のテロリスト説』『赤軍残党説』『江崎グリコ犯人説』など犯人にも多くの説が
上がったが、犯人が特定できないまま2003年8月19日に『琴平丸爆沈事件』は時効が成立してしまった。
 なお、八坂丸のほうは現在氷川丸と同じく山下公園に係留され、日本郵船博物館として今日もその
姿を留めている。


あとがき
ということで予告通り客船を描いてきたろしあ革命です。文章からではわかりにくいでしょうがこの船の
産まれた世界は前三船と違い、枢軸国(独・伊)・連合国(米・英etc)・同盟国(日・中・仏・フィンランド)
・ソ連の四つ巴の第二次世界大戦の時代です。
基本的に枢軸国と連合国は泥沼の対立、同盟国は中立を保っていますがソ連や枢軸国の侵攻に対しては反抗。
ソ連はいつものように領土をねらってるわけです。

この船を描くきっかけとなったのは浅田次郎さんの『シェエラザード』を読んだせいでしょうか。なんだか
日本の客船が無性に描きたくなって、橿原丸と八幡丸のプラモと雲龍をベースに描きなぐりました。
結果、どちらともつかない異様な船が一隻出来上がったわけで……。
最後にいらないミステリが挟まれてますが、あれは単なる趣味です。