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ロンドン条約により、日本海軍は高雄型以降の重巡建造が出来なくなった。 漸減作戦の中核たる水雷戦力支援――極言してしまえば米主力艦隊の前衛である米重巡を排除すること――に重巡を充てようとしていた日本海軍にとって、現有の重巡戦力はあきらかに不足していた。 一方で軽巡保有枠には若干の余裕があった。この軽巡枠で大型軽巡を建造しておき、戦時には8インチ――20.3cm砲に換装して重巡の不足を補おうという提案がなされた。 だが・・・・ 造船技官Y:基本に立ち返ってみよう。日本海軍が欲しているのは重巡じゃない。 造船技官N:・・・・言ってることが良くわからないよぅ。 造船技官Y:考えてみろ。日本海軍は重巡を何に使おうとしていたんだ? 造船技官N:えと、敵主力艦隊の護衛――つまり重巡の撃破だよね。 造船技官Y:そう。日本海軍が欲していたのは敵重巡を潰せる戦力だ。 重巡――20.3cm砲搭載巡洋艦そのものが欲しかったわけじゃない。 敵重巡潰しのために自らの重巡を充てようとしていたけれども、 手持ちの重巡では数が足りない、そういうことだな。 造船技官N:あ、わかったよ。 『敵重巡を潰せる戦力』なら、別に重巡そのものじゃなくても良かった。 そういうことなんだね。 だが重巡というものは意外に強靭な耐久性を持っている。一部の重巡は限定的ながらも20.3cm対応防御さえ備えている。20.3cm砲といえども、これを確実に潰すのは困難なことだ。 ならば重巡をより確実に潰すためにはどうすれば良いのか。答えは単純だ。より大口径の砲を使えばよい。 造船技官Y:戦時――条約制限から開放された状況下で改装するなら、 20.3cmにこだわる必要はないよな。 造船技官N:どうせ改装するなら、重巡を確実に撃破できる、20.3cmよりも大口径の砲を載せるんだね。 造船技官Y:そう。数の優位を確保できないのであれば、個艦戦闘力の優位で対応する。 基本的な発想だな。 造船技官N:でも、大口径砲だと重いよね。搭載できるの? 造船技官Y:そうだな。10,000t級の巡洋艦だと、主兵装に充てることができるのは計900t程度。 これはどの国の巡洋艦でも同じこと。 そして、公算射撃という観点からすると、砲門数は最低6門は必要だ。 これから逆算すると、搭載可能な砲の最大口径はおよそ24cmになる。 造船技官N:えぇと、弾体重量は200kg強。20.3cm砲弾のおよそ1.6倍だね。 造船技官Y:当然、装甲貫徹力は大きいし、最大射程も伸びる。 まあ10,000t級巡洋艦が装備できる限定的な20.3cm対応防御程度なら、 全射程で装甲貫徹可能だね。 造船技官N:でも、命中しないと意味は無いよね。 6門で充分な命中数は確保できるの? 造船技官Y:たとえば6門艦の古鷹だけど、オマハ級を筆頭とする旧世代軽巡に砲戦で勝つことを 目標に建造されたんだぜ。 意味合いは違うけれど、英海軍だって6門の条約型重巡を建造してるしね。 そりゃまあ、公算射撃の観点から言えば10門は欲しいところだけれど・・・・ この時期って、散布界の問題がまだ根本的な解決を見ていない。 10門艦の妙高型は散布界が広くて、6門艦の古鷹・青葉と命中弾数で大差ないんだ。 造船技官N:うーん・・・・。 だとすると、大口径砲6門搭載って選択も、おかしな考え方じゃないんだね。 造船技官Y:それにもうひとつ。 大口径砲の効用は破壊力だけじゃない。 小口径の砲に比べて、より大射程で高い命中精度を得られるんだ。 造船技官N:つまり、20.3cm砲だと有効戦力を発揮し得ない遠距離でも、 24cm砲なら有効戦力と成り得る命中率を発揮できるってことなんだね。 20.3cm対応防御の重巡を確実に潰せる10,000t巡洋艦として24cm砲6門装備という選択が成されたが、軽巡計画で新造する以上、口径15.5cm以下の砲を搭載して竣工させざるをえない。10,000t級巡洋艦としてみた場合、15.5cm砲の搭載数は12〜15門程度となる。24cm6門への換装を前提として搭載方法を検討した結果、軽巡としての装備は15.5cm4連装3基12門、換装後は24cm連装3基と決定した。 造船技官N:ええと、24cm砲3連装2基で6門装備じゃ駄目なのかな? 造船技官Y:軽巡として竣工するときの装備はどうするんだ? いくら多連装でも、せいぜい4連装が限度だろう。 造船技官N:砲塔2基だと15.5cm4連装で8門。 いくら24cm砲への換装を前提にしているとは言っても、 10,000t級巡洋艦の備砲としては少なすぎるものね。 造船技官Y:そう。 それに日本の重巡は、米重巡を潰す事だけが任務じゃない。 前衛の米重巡を突破できたらそのまま主力艦に対して雷撃を敢行することも 要求されているんだ。 造船技官N:中距離以上での砲撃だけじゃなくって、 近接戦闘も要求されているってことだね。 造船技官Y:近距離砲戦を行ったら、 いくら砲塔の装甲を厚くしても耐え切れるものじゃない。 砲塔数が少ないと砲塔を潰されたときの戦力低下比率が大きいからね。 造船技官N:確かに多連装砲塔はバイタルパートの圧縮なんかで 単位面積あたりの装甲を厚くできる、 だけれど、近接砲戦を耐え切るだけの厚さはとてもじゃないけど確保できない。 だから被弾時の戦力低下を小さくするために、 むやみに砲塔数を減らすわけにはいかないんだね。 造船技官Y:無茶な近接砲戦を行う事を想定していない戦艦だったら、 多連装砲塔2基で装甲厚を確保するのもひとつの方法だろうけどね。 仮称『最上』型二等巡洋艦として建造が決定された本級は、高雄型以前の重巡に比べて全幅が大きく取られている。これは24cm連装砲塔/15.5cm4連装砲塔を搭載する前提であるため、全幅を大きく取らざるを得ないためであった。このため10,000t級の日本巡洋艦としては、速力/出力比が若干悪化している。 また、24cm砲による大射程砲戦を意識したためか、戦艦のそれに匹敵する高さの観測檣と砲戦指揮所を備えている。 造船技官N:いくら24cm砲の射程が長くても、戦艦ほどじゃないよね? 造船技官Y:そりゃそうだが、射程外から測的できることに意味が無いわけじゃない。 あらかじめ測的を済ませておけば、射程内に入り次第砲戦開始が可能だしね。 造船技官N:射程限界で砲戦をしても、あまり命中を期待できないような気がするけど・・・・。 それに改装前は15.5cm砲だよね? いくらなんでも最大砲戦距離と観測可能距離の差がありすぎると思うよ。 造船技官Y:60口径15.5cm砲は結構優秀だよ。 射程で言うなら50口径20.3cm砲に近い。 それに米重巡だって、砲戦射程よりはるかに長大な観測距離を有してる。 造船技官N:ロンドン条約以前の、条約型重巡だね。 たしかに高い観測檣を持ってるよね。 造船技官Y:あれは艦隊の前衛・・・・偵察巡としての役目ゆえの装備らしいね。 その意味では、高い観測檣をもった二等巡洋艦――軽巡っていうのは、 米海軍は勝手にその用途を誤解してくれそうだな。 造船技官N:勝手に誤解って・・・・。なにか胡散臭いよ、それ。 造船技官Y:ああ。言っている自分でも胡散臭いと思ってる(をぃ 造船技官N:あ、でも最上型の次の利根型を考えれば、 手段は別としても――大型偵察巡洋艦って冗談じゃ済まないんだね(笑) 最上型の防御はその用途を考慮して、前級高雄型に相当する装甲を備えている。舷側の装甲厚こそ高雄型より減じているが、その装甲配置の工夫などで高雄型に勝るとも劣らない実効防御力を備えていると言ってよい。 造船技官N:えと、装甲はもっと厚くできないのかな? 造船技官Y:厚くしてどうするんだ? 10,000t級巡洋艦じゃ、いくら装甲を厚くしたってたかが知れてる。 造船技官N:何も戦艦に対抗しようってわけじゃないよ。 ただ、限定的なものじゃなくて、もっとちゃんとした20.3cm対応防御が できないかな、と思うの。 造船技官Y:それもやっぱり難しいな。 10,000tという限られたリソースの中で防御を強化しようとしたら、 どこか別の面に費やしてるリソースを削らなくちゃいけない。 造船技官N:そっか。 日本の重巡の用途を考えたら、武装や速力――機関を削るわけにはいかないものね。 造船技官Y:そういうこと。 もう削るところが無い。つまり、防御はこれでもう限界と言っていい。 しかし、限定的ではあるけれど、これでも20.3cmに対応できる防御は備えてる。 世界的レベルで見ても、重巡としては強靭な防御力を持っているほうなんだ。 あとは・・・・ 造船技官N:攻撃は最大の防御、だね。 造船技官Y:そう。 重巡以下の水上艦艇を相手にする限り、 24cm砲の攻撃力こそが、最上型にとって最大の防御力と言える。 造船技官N:じゃあ魚雷は下ろしても良いんじゃないの? そうすれば砲戦時の安全性も高くなって、防御面が改善されるし、 多少は他の面へ割り振れるリソースが生み出せると思うんだけど。 特に24cm砲塔を増やすとかできないかな。 造船技官Y:勘違いしちゃいけない。 確かに最上型は『重巡潰し』に主眼を置いた巡洋艦だけれど、 本来は重巡の代用艦なんだ。 造船技官N:そうだったね。 確かに『重巡潰し』は最重要任務かもしれないけれど、 敵主力に対する水雷戦闘も重要な役目だよね。 造船技官Y:24cm砲がいかに強力でも、戦艦の装甲を撃ち抜くためには それこそ至近距離まで接近しないといけない。 撃ち抜けたとしても、戦艦相手ではかなり打撃力不足だしね。 造船技官N:そこまで接近できるんだったら、 雷撃をしたほうが、より確実に戦艦相手にも打撃を与えられるものね。 造船技官Y:つまりだ。 重巡ができることは何でもできる。 だけれど確実に重巡を上回る戦闘力を有する。 それが24cm砲に換装後の最上型の目指したものだったんだ。 だからこそ、前級までの重巡に匹敵する防御、速力、雷装、 そして従来型を上回る砲火力を備えているんだ。 造船技官N:かつては古鷹が軽巡――乙巡を凌駕する『超乙巡』として建造されたんだよね。 じゃあ、最上型って、重巡――甲巡を凌駕する『超甲巡』なんだね(をぃ |
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諸元(新造時) 基準排水量 : 8,500t(公称) 9,500t(実質) 全長 : 190.6m 全幅 : 20.7m 吃水 : 6.1m 主機/軸数 : 艦本式オールギヤードタービン4基/4軸 主缶 : ロ号艦本式水管缶(重油専焼)10基 出力 : 152,000馬力 速力 : 35kt 航続力 : 8,000浬/14kt 兵装 : 15.5cm60口径4連装砲×3 12.7cm40口径連装高角砲×4 61cm魚雷発射管3連装×4 水偵×3 射出機×2 装甲 : 100mm(舷側/傾斜12度) 35mm(甲板) 60mm(甲板傾斜部) 150mm(砲塔) 乗員 : 850名 |
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諸元(改装後) 基準排水量 : 9,500t 全長 : 190.6m 全幅 : 20.7m 吃水 : 6.1m 主機/軸数 : 艦本式オールギヤードタービン4基/4軸 主缶 : ロ号艦本式水管缶(重油専焼)10基 出力 : 152,000馬力 速力 : 35kt 航続力 : 8,000浬/14kt 兵装 : 24cm60口径連装砲×3 12.7cm40口径連装高角砲×4 61cm魚雷発射管3連装×4 水偵×3 射出機×2 装甲 : 100mm(舷側/傾斜12度) 35mm(甲板) 60mm(甲板傾斜部) 150mm(砲塔) 乗員 : 850名 |