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昭和12年〜14年にかけて、日本海軍では防空を主任務とする巡洋艦 建造(現存の艦からの改装を含む)の基本計画の立案が行われた。 もっとも有力な案は、8,500t級(公試排水量)の船体に長10cm連装 高角砲を12基装備する大型巡洋艦であったが、他の新造艦案として、 昭和14年度計画で建造が決定されることになる「乙巡」(後の「阿賀 野」級)と船体設計を共用する案も存在した。 この改「阿賀野」級防空巡案では、船体設計の共有化での量産効果、 それによる建造費の削減が主眼に置かれている。 当初計画されたのは、「阿賀野」級から水偵設備、水雷設備を全廃 し、高角砲搭載スペースに充て、また同時に主砲を高角砲に換装して、 搭載砲を統一するものである。 この案は基本的に8,500t級防空巡と大差ない発想であるが、船体が 若干小型で、兵装が少ない分建造費が安く済む。(代わりに戦闘力は 劣る。) 搭載砲として長10cm連装高角砲8基を予定している。 一方で、長10cm高角砲が高価であることから、この搭載数を減らし、 代わりをより小型で、比較的安価な長8cm高角砲で補う提案が成され た。これを前述のT案に対し、U案と呼称する。 長8cm連装高角砲は「阿賀野」級同様、前檣楼両脇、そして煙突両 脇からそのまま艦尾へと並べることで各舷4基、両舷計8基とする案 である。 長8cm連装高角砲は、長10cm連装高角砲と比べて搭載のために必要 な甲板スペースが狭くて済むため、両舷にずらりと並べることが可能 であった。 だが結局、防空巡は優先度が低いとされて建造されず、水雷嚮導巡 である「阿賀野」級と潜水艦隊旗艦である「大淀」級が建造された。 後の太平洋戦争で、必要性がより高かったのが結果的には防空艦で あったことは皮肉である。 だが、防空巡U案のほうは、そのまま消え去った訳では無い。 戦局の変化により、「阿賀野」級4番艦「酒匂」は建造中に防空軽 巡へと転用された。これにより、「酒匂」の水偵設備、雷装は全廃さ れ、代わりに長8cm連装高角砲が各舷5基、両舷計10基まで増設された。 しかしながら、「酒匂」の竣工は昭和19年11月末日。すでに、連合 艦隊は戦力としてのまとまりを失っており、また訓練航海を行なう余 裕など残ってはいなかった。結局「酒匂」は実戦に参加すること無く 舞鶴へと回航され、終戦を迎えた。 戦後、「酒匂」は武装を撤去して復員船として使用されたが、この 際に「水偵デッキが残っていれば、多少は風雨を防ぐ足しになっただ ろうに」と復員関係者が嘆くという、皮肉な結末を迎えている。 諸元 改「阿賀野」級防空巡 T案 基準排水量 : 6,500t 公試排水量 : 7,500t 全長 : 174.5m 最大幅 : 15.2m 吃水 : 5.6m 機関出力 : 100,000馬力 速力 : 35kt 航続力 : 6,000浬/18kt 兵装 : 10cm65口径連装高角砲×8 (前部2、舷側各2、後部2) 改「阿賀野」級防空巡 U案 基準排水量 : 6,500t 公試排水量 : 7,500t 全長 : 174.5m 最大幅 : 15.2m 吃水 : 5.6m 機関出力 : 100,000馬力 速力 : 35kt 航続力 : 6,000浬/18kt 兵装 : 10cm65口径連装高角砲×4 (前部2、後部2) 8cm60口径連装高角砲×8 (舷側各4) 軽巡洋艦「酒匂」 防空巡型 基準排水量 : 6,500t 公試排水量 : 7,500t 全長 : 174.5m 最大幅 : 15.2m 吃水 : 5.6m 機関出力 : 100,000馬力 速力 : 35kt 航続力 : 6,000浬/18kt 兵装 : 15.2cm50口径連装砲×3 (前部2、後部1) 8cm60口径連装高角砲×10 (舷側各5) |