中島飛行機 艦上戦闘機「突風」
昭和14年に作成された海軍機試作4ヵ年計画に基づき、海軍は昭和15年末に三菱に対し十六試艦上戦闘機の試作を内示した。しかし三菱は十四試局地戦闘機の開発及び「零戦」の改良で余裕が無いことや適当な大出力発動機が無いことを理由に着手を先送りしていた。(ここまでは史実・・・)
この機を逃さず中島飛行機は「九〇艦戦」、「九五艦戦」に続く艦上戦闘機受注を目指し、独自の試作案を海軍に提示した。この試作案は発動機を「栄」性能向上型とし、機体設計による空力特性向上で要求性能を達成すると言うもので、機体形式を前翼式として機体を小型化し、前翼揚力を考慮して主翼面積を減らすなど、限られた出力から最大限の性能を引き出す構想であった。
当初、海軍は三菱への内示を理由に難色を示したが、急激な国際情勢の悪化を考慮し自社責任での試作を黙認した。
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中島飛行機 十六試艦上戦闘機「試製突風」(A7N1)
主翼は全通2桁構造の層流翼で、フラップは空戦時の運用も考慮したファウラー式、前縁部には防弾ゴムタンクを装備していた。前翼は全動式でフラップや昇降舵の操作に迎え角が自動的に連動する方式で、トリムホイールによる手動操作も可能であった。
駆動方式は主翼桁間に設置された発動機からは延長軸で機首減速機に動力を伝えプロペラを廻す牽引式でプロペラ効率向上と共に、前翼式の欠点となる縦方向の安定性不足を軽減する効果が見込まれていた。
冷却方式は機体側面吸気孔から導入した冷気を機体最後部から排気する方式で、推進後流による背圧の低下を利用した強制排気が試みられていた。
十六試艦戦は昭和16年4月に設計着手、昭和17年10月に「試製突風」(A7N1)として試作1号機が完成した。試作1号機は「栄21型」を延長軸付に改造した発動機(後の「栄21型甲」)を装備し、20mm軸内銃1門と7.7mm胴体銃2門を搭載した機体で、前翼式の飛行特性や延長軸から機首減速機までの駆動力伝達などが検証された。
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「試製突風」(A7N1)透視図
試験結果は良好で「零戦22型」(A6M3a)に対する明らかな優位性が認められたことから、完成が遅れている「栄」性能向上型への換装を待たず、昭和18年8月に艦上戦闘機「突風11型」(A7N2)として制式採用された。
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「突風11型」(A7N2)透視図
「試製突風」からの主な改修点としては、集合排気管から推力式単排気管への変更、冷却気吸気孔の再設計、気化器吸気孔位置を境界層分離や機体からの影響を考慮して冷却気吸気孔外側に変更、発動機前面の環状オイルクーラーを発動機後方に移すなどが実施された。またプロペラ後流が左右前翼で吹き上げ/吹き降ろしとなり昇降舵に悪影響を及ぼすことから、両前翼下面に新設したピトー管で計測した大気速度が釣合うように左右前翼のオフセット角を調整する機構が追加された。
兵装は30mm軸内銃と13.2mm胴体銃となり火力は大幅に強化された。当初、軸内銃には九九式二号二〇粍固定機銃四型を予定していたが、米重爆撃機には20mm機銃でも威力不足との戦訓から、急遽二式三〇粍固定機銃一型を量産化して装備することに変更された。
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昭和19年4月「突風11型」(A7N2) 空母瑞鳳
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艦上戦闘機「突風11型」製作記号 A7N2 コードネーム Goose -
寸度 全幅 9.180m -
全長 7.250m -
全高 3.520m -
面積 前翼 2.360㎡ -
主翼 18.640㎡ -
重量 自重 1,720㎏ -
正規 2,550㎏ -
過荷 2,840㎏ -
発動機 中島「栄21型甲」 空冷星型複列 14気筒×1 -
燃料供給 燃料気化器 -
離昇馬力 1,130hp -
公称馬力1速 1,100hp/2,400m -
公称馬力2速 980hp/6,000m -
過給機 遠心2速度歯車駆動式 -
翼車直径 305mm -
増速比 第1速 6.37 -
第2速 8.44 -
プロペラ VDM式 定速 3枚羽根 -
直径 3.100m -
燃料 機内 540ℓ(210ℓ×2+120ℓ) -
増槽 320ℓ -
潤滑油 55ℓ -
性能 最大速度 307kt(569km/h)/6,000m -
巡航速度 180kt(333km/h)/4,000m -
着陸速度 69kt(128km/h) -
上昇時間 6分42秒/6,000m -
上昇限度 11,700m -
航続距離 -
正規 1,086nm(2,011km) -
過荷 1,697nm(3,142km) -
兵装 二式三〇粍固定機銃一型×1(装弾数 42) -
三式十三粍固定機銃一型×2(装弾数 各270) -
爆装 三番三号×4 もしくは 六番各種×2 -
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「零戦22型」と比較すると基本性能では格闘性能と航続性能がやや劣り、速度、加速性能、急降下性能、上昇力では優れていた。兵装は20mm翼内銃2門+7.7mm胴体銃2門に対し、30mm軸内銃1門+13.2mm胴体銃2門で門数減を威力増で補う構成で、防御力は防弾ゴムタンクの採用により格段に優れていた。
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零戦22型(A6M3a) との比較
「突風11型」は昭和18年末より配備が開始されたが、各戦線では米軍の圧倒的な物量と新鋭機の登場により、既に空の優位は失われていた。
米軍の新鋭機は2,000馬力級発動機を装備し12.7mm機銃6門という強力な火力を備えた、艦攻と見紛うばかりの大型機で、1,000馬力級発動機から最大限の性能を引き出すことを目指した「突風」とは全く逆の思想による機体であった。
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F6F-3との比較
「突風」は延長軸を保持するロンジロンと全通主翼桁との組合せにより高い剛性を持ち、米新鋭機のロールやダイブにも難無く追従し、強力な30mm軸内銃により重防御を誇る米新鋭機をも一撃で撃破することが可能であった。
しかしながら30mm機銃は威力が大きい反面、発射速度が低く装弾数も少ないことから武装強化が求められ、昭和19年2月には軸内銃を弾装式からベルト給弾式に改めた二式三〇粍固定機銃二型(装弾数 60)に換装した「突風11型甲」が投入された。
また同年12月には新型爆撃機「B-29」による本土空襲の激化に対応するため、発動機を排気ガスタービン駆動式1段可変速の「栄26型」に換装し、翼幅を延長して高高度性能を向上させた「突風22型」(A7N3)が投入された。
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「突風22型」(A7N3)透視図
「栄26型」はクランクシャフトからの駆動力伝達機構及び変速機を撤去した過給機を排気ガスタービンによるターボコンパウンドで駆動し、燃料供給を低圧噴射式とした発動機で、機械式過給機が消費していた分の出力向上と過給圧の無段階設定が可能となった。
過給圧はブーストレバー操作と気圧変動で伸縮するベローズを利用した補正機能によりウェイストゲートバルブの開度で排気ガス導入量を加減することで設定され、高度変化に追従し各高度域で安定した出力特性を発揮した。
吸気温度上昇への対策としては排気ガスタービン後方への強制冷却ファンの追加とオイルクーラー大型化による油冷強化により、過給機本体及び補機類を冷却する方策がとられていた。
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昭和20年3月「突風22型」(A7N3) 第302海軍航空隊
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艦上戦闘機「突風22型」製作記号 A7N3 コードネーム Goose -
寸度 全幅 9.960m -
全長 7.250m -
全高 3.520m -
面積 前翼 2.360㎡ -
主翼 19.560㎡ -
重量 自重 1,840㎏ -
正規 2,680㎏ -
過荷 2,970㎏ -
発動機 中島「栄26型」 空冷星型複列 14気筒×1 -
燃料供給 低圧燃料噴射 -
離昇馬力 1,210hp -
1,150hp/2,700m -
1,060hp/6,000m -
1,020hp/7,400m -
過給機 遠心可変速度ターボコンパウンド式 -
翼車直径 320mm -
増速比 2.11 -
タービン 単段落衝撃式 -
気翼直径 276mm -
気翼長 43mm -
気翼枚数 80枚 -
プロペラ VDM式 定速 3枚羽根 -
直径 3.100m -
燃料 機内 540ℓ(210ℓ×2+120ℓ) -
増槽 320ℓ -
潤滑油 80ℓ -
性能 最大速度 319kt(591km/h)/7,400m -
巡航速度 180kt(333km/h)/4,000m -
着陸速度 69kt(128km/h) -
上昇時間 10分21秒/8,000m -
上昇限度 11,860m -
航続距離 -
正規 1,021nm(1,890km) -
過荷 1,595nm(2,953km) -
兵装 二式三〇粍固定機銃二型×1(装弾数 60) -
三式十三粍固定機銃一型×2(装弾数 各270) -
爆装 三番三号×4 もしくは 六番各種×2 -
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「突風22型」は揚抗比の高い機体特性による良好な高高度性能と大口径軸内銃による強力な破壊力により、米新型重爆撃機「B-29」に対しても有効な戦力として本土防空戦に活躍した。
~ 作者コメント ~
「零戦52型」のタイミングでより高性能な機体を投入すると言うテーマで、最初は「零戦32型」の操縦席後方に「火星」エンジンを搭載したテールヘビー極まりない機体からスタートしましたが、航続力を含めて要求事項を満たすエンジンは「栄」しかあり得ないとの結論に至り、大出力エンジン換装路線から軽量小型化空力向上路線へと転換しました。
「栄」エンジンから最大限の性能を引き出すためメーカーを三菱から中島とし、流用機を「零戦」から「隼」とするなど紆余曲折、七転八倒の末、「お絵かき掲示板」での皆様のご教授とご指導により、このような姿に成長しました。
尚、「二式三〇粍固定機銃二型」及び「栄26型」も史実には存在しません。
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