
ハ-40のクランクシャフトが製造できないため、V6の液冷発動機ハ-640が作成された。クランクシャフトが短いためエンジン自体は容易に製作できるようになった。これを串型に配置して二重反転プロペラで推進させるキ-60改を試作したところ、今度は前置エンジン用の中空のシャフトと、それを貫く後置エンジン用の延長シャフトの製作で躓いてしまった。さらに少ない生産設備で逆回転エンジンを用意するのも問題視された。
B-25による本土空襲やソロモン諸島におけるB-17の活動を受けて陸軍は二式戦では不足している火力を補うために高速で大口径の機関砲を機首に搭載した迎撃機の開発を立川飛行機に指示した。海軍では、同時期に、同様の発想で、推進式の閃電の開発が川西によって着手されている。
様々な設計案を検討しながら立川は東京帝大航空研究所との共同研究を行っていたダクテッドファン試験機「航三戦」を応用したキ94を纏めあげた。「航三戦」は直列発動機を使っていたので前面面積が小さかったが、実用機となると星型発動機はダクトを塞いでしまうので都合が悪く、発動機の選定に難渋していたところ、川崎のハ-640の存在が航研の「研三」グループからの情報として伝わり打開できた。
小口径の5翔と7翔のプロペラを挿んで向かい合った2基のエンジンで推進する。トルクの少ないV6エンジンが対向して逆回転するので大馬力機共通のプロペラトルクによる偏向の問題が解消した。
小口径のプロペラを用いる事でエンジンの回転数を増やす事が可能となりトルクの細い6気筒のハ-640から必要以上の馬力を絞り出す事が可能となり、スーパーチャージャーの効きも向上しキ94に求められていた高々度性能も確保する事が可能となった。
推進式共通の問題の冷却の件は、研三で検討したプレストン表面冷却器と滑油用表面冷却器を推進ダクトの内外に貼付ける事で、良好な成績を納める事が出来た。ドイツから伝えられた後退翼を用い、翼面積を切り詰めた分、スポイラーによる操舵と着陸速度を緩和するための電動式二重間隙フラップを採用した。
しかし、胴体に火器4挺と発動機2基とプロペラ2枚を備え、インテグラルタンクも翼面積に応じて限られており、航続距離は700kmに満たず、成増を起点として甲府上空への進出と銚子沖からの帰還を考えると15分戦うのがやっとであった。そのため19年2月に初飛行してからも正式化が遅れていたがサイパン陥落を受けて急遽四式複戦として正式化されようとした。
だが、ちょうどハ-640が陸軍期待の五式中戦車の主機として必要とされた事と、20年正月の川崎明石工場の空襲による破壊を受けて、増加試作機が工場を離れた時点で生産中止となった。
全長9.8m, 全幅8.7m, 自量3050kg, 翼面積14.9m2,
速度625km/時(5500m), 上昇速度5500m/4分40秒,
上昇限度11000m, 航続時間450km/hx50分+600km/hx15分
武装:ホ-5x2, ホ-103x2 乗員1名
発動機:ハ-640 全長1100mm, 全幅721mm,全高995mm, 重量378kg,
高度5500mにおいて公称930馬力,3500回転,ブースト圧300mmHg
プロペラ:[前]5翔固定ピッチ直径1.84m,[後] 7翔固定ピッチ1.62m
# 予算を通す都合上、「こうさん=降参」とならない様に
#「こうさんせん」とか「けんさん」とか語呂には苦労しました
# by 航研総務掛担当者