愛知 水上戦闘機「南風」

「南風」前面図
「南風」側面図
「南風」側面図・水上

 昭和18年、期待された世界初の、根本から水上戦闘機として開発された「強風」の 思わぬ低性能が明らかになった時点で、搭載を予定していた次期防空巡洋艦「五ヶ瀬」 の配備が危機的状況に陥った。
 この状況を打開すべく、海軍は新たな水上戦闘機の製作を画策した。しかし、 時間的余裕がないため、一から設計するのでは間に合わない。そこで注目されたのが 試作中の十六試艦偵であった。
 この十六試艦偵は、いくつかのトラブルのため試作が滞っていたものの、その高性能は 初期の段階から関係者の認めるところであった。もちろん、トラブルを抱えた機体を 改造することに異論をはさむ者もあったが、切迫した状況がそれを押し流してしまった。
 改造は愛知自身の手で行われた。十六試艦偵の状況がなかなか好転しないことにイライラを つのらせていた愛知の設計陣は、同社初の戦闘機の設計ということも手伝って、多大なる 情熱と労力を本機に注ぎ、非常に凝った設計にもかかわらず、わずか4ヶ月という 短期間で1号機を完成させ、昭和19年1月には初飛行に漕ぎ着けることに成功した。

 機体の主な改造点は以下の通りであった。
 1.単座となったため後席を撤去し、金属外版で覆って整形。
 2.後席がなくなったため、機体の基本デザインは十六試艦偵の第一次改造型を使用。
 3.機首の武装を20mm×2に強化。
 4.フロートを3つとも引き込み式とした。

 また、フロートの形式にも新しい思想を持ち込んでいた。
 単フロート形式では、実際は中央の主フロートだけで機体を浮かせることが可能で、 左右の補助フロートはある意味でデッドウェイトとなる。かといって、双フロート形式に すると、空気抵抗と重量的に不利である。そこで考えられたのが「三フロート形式」で あった。
 これは、単フロート形式に似ているものの、中央の主フロートだけでは機体を浮かせる ことができず、左右の補助フロートまで使用する事が必要な形式で、補助フロートは 大型化するものの、主フロートをかなり小型にでき、全体的な重量を減らすことを 可能にした。

 飛行試験を開始した機体は、相変わらずプロペラ駆動用の延長軸の震動に問題を 抱えてはいたものの、第一次改造型を使用したため、強度を増すことでなんとか 実用可能なレベルまで到達し、昭和19年、制式採用され、水上戦闘機「南風」と 命名された。


諸元
全長・・・10.34m
全幅・・・12.22m

武装:前方固定 九九式20mm機関銃×2
    爆弾   250s×2、または60s×4

エンジン:火星25型 空冷複列星形14気筒 1850馬力

最大速度:512Km/h(6,000m)
航続距離:標準1020q 最大1700q



作者からのコメント

 どうも,胃袋3分の1日です。
 「五ヶ瀬」を生かすも殺すもこの「南風」次第!という企画ものでございます(笑)。
 この機体を考えるのに一番苦労したのは、実はその名前でした。
 日本海軍の戦闘機なんだから、当然、「風」でなければなりません。しかし、 いざ考えてみるとロクなものがない。
 最初に浮かんできたのが「台風」、次が「突風」。さらにそれが「微風」「そよ風」 と、似つかわしくない方に進み始め、次には「貿易風」と「偏西風」。ここまで来ると、 私、本来のおふざけ大好きの気性が災いして「和風」「洋風」に行き着きます。そうなると 当然、「北京風」「広東風」「四川風」と出てくるわけで、さらには私の大好きな麻雀が 浮かんできて「東風」「南風」ときて、最後に「オタ風」まで行きました。
 ま、しかし、結局は「南風」が採用されてしまうわけで、世の中、何が幸い(?)するか わかりませんね!(笑)